13羽目:ハンドル握ると性格変わる人
使い込まれた鎧を纏い、堂々と部屋へ入ってきたのは――ちょび髭がトレードマークの、ちょびさん!?
え? まさかの案内してくれた、あのちょびさん!?
「皆の者、待たせてすまなかった。オレが本日の講習を担当する騎士のガルヴァンだ。時折、新世界人の案内もしているので、すでに顔を合わせたことがある者もいるかもしれんな」
新世界人担当はシフト的なので変わったりするのね、それじゃあの時ガルさんに当たったのは、ラッキーだったのかもしれない。先生も知っている人だとより心強いよね、しかも面倒見のいい人だってわかってるし!
ちょびさん、改めガルさんは静かに周囲を見渡しながら、少し笑みを浮かべる。そして、力強く続けた。
「まずは、騎士団ギルドへの入団おめでとう! 手短に講習の流れを伝えるぞ。騎士団長からの挨拶を受けその後、ギルドの基本的な仕組みについて説明していく。それが終われば野外実習に移るので、心して聞いてくれ。わからないところがあれば、いつでも止めていいからな」
まぁ、NPCだからってのもあるけど……案内所の時も、今の会話を聞いても生身の人間っぽく感じちゃうね。
ガルさんは教卓の台座に、クリスタルのような物を差し込むと、淡い光を放ちながらホログラムが浮かび上がった。映し出されたのは、銀髪で額に切り傷のある渋い雰囲気を纏う男。この人が騎士団ギルドのトップであるブルムハルト騎士団長らしい。
団長からの祝辞を受けた後、ガルさんは騎士団システムについて、詳しく説明を始めた。
騎士団への貢献度はシンプルで、ギルド依頼や掲示されているクエストをこなすとカードのランクが上がっていく仕組みになっている。ランクに応じて素材の買い取りが高くなったり、買い物をするときに割引があるんだって。なんか、ポイントカードみたいなシステムだね。
「他の職業のギルド……例えば商人ギルドの依頼を受けても貢献度は入るが、騎士団のものよりも少なくなる。買い取りや割引はギルドによって価値が変動するから、ランクが高い騎士団よりも魔導士ギルドの方がいい値になったりすることもあるぞ。あっ、これ受付のお嬢たちには内緒にしててくれよな?」
小話を挟みながらも、わかりやすく説明してくれる。学生の時、こういう裏話してくれる先生好きだったなぁ。
そして、ここにいる全員はまず剣士としてスタートするが、Lv30になると上位職業への道が開かれるらしい。試験に合格すれば上位職への昇格が可能で、その道は騎士や聖騎士など、さまざまな選択肢があるけど、試験によっては条件をクリアしないと受けることすらできないようだ。
ちなみに、貢献度の高いクエストは、上位職にしか受けられないとのこと。つまり、ただレベルを上げて強くなるだけでなく、自身の職業の道を極めることで、より重要な任務にも挑めるようになるのね。
鳥系の依頼とかあるかな? あったら全ての依頼を全力でこなす自信はある。むしろ、誰にも渡さない。
「さて、ギルドシステムについて分からない事があれば、いつでも気軽にオレやギルド職員に尋ねてくれ。これより課外実習に移るので、全員裏庭に防具一式をつけた状態で集合してくれ」
ついに体を動かすチャーンス! 新世界人案内の時は、動かないカカシ相手だったからね、何をやるのか楽しみだー! バンビー君は、すでに防具を付け終えていたので、うちも急いでインベントリを操作して、装備欄にセットする。瞬時に、服装が鉄の胸当てがついた長袖と長スカートに変わった。背中には木の盾、腰ベルトには短剣とポーチが付いている。ワンタッチ式で着替えられるなんて便利だねぇ。皮のブーツも脛や足の部分が鉄になっているけど、重く感じないんだね。
盾ヨシ! 短剣ヨシ! 防具オールヨシ!
裏庭に全員が集まると、ガルさんの課外実習の説明が始まった。
「今回は盾のガード技術とヘイト管理を重点的に指導する。防具一式には木製のバックラーが支給されていると思うが、盾の構え方はどの種類でも共通だ」
利き腕とは逆の手に盾を装備し、剣は利き腕で握る。重心を低くし、体の中心あたりで盾を構えるようにするのが基本らしい。そういえば、セットするときに利き腕の設定したね。こういう細かい気遣いもあるのって、すごいなぁ。
「では、実戦形式で訓練するため、捕えてきたスライムを相手にしてもらう。スライム系は、低レベルのモンスターではあるが、物理攻撃を無効化する特性を持っていて、盾の扱いを学ぶには最適な相手だ。まずは手本を見せよう」
敵の注意を引きつけたい場合は、【挑発】スキルを使うことで、ターゲットを取れるんだって。
ガルさんが大声で相手の気を引き【挑発】スキルを発動すると、箱の中に収められていたスライムが、勢いよく飛び出してきた。
視界に映るスライムの名前には、闘牛マークが表示され、敵視されていることが一目でわかる。スライムは一直線に突進してくるが、ガルさんはそれをしっかりと盾で受け止め、少し前へ押し返して距離を確保すると、名前の横にあった闘牛マークが消えた。
「こんな感じで今日は練習していく。スライム系は視覚認識が乏しいので、十分な距離をとれば敵視はすぐに解除されるぞ」
その説明の直後、一人の生徒が手を挙げて質問する。
「物理が効かないスライムはどうやって倒すんですか?」
ガルさんは軽く頷き、説明を続ける。
「スライム系を倒すには、魔法攻撃で内部のコアごと破壊する必要がある。コアは薄く透けて見えるんだが――あの白いゼリー状の物体がそれだ。正面から近づくと、コアを隠すように移動させてしまい、それが破壊されるまではダメージも体内へと吸収されてしまう。だから今回は盾を使った防御の練習に集中するだけでいい」
そしてガルさんが周囲を見渡し、「では、順番にやってもらう。まずは――」と指を向ける。
指名されたのはバンビーくんだった。バンビーくんは無言で立ち上がり、前へと進む。……しかし、右足と右腕が同時に出てる。緊張で体が固まってぎこちないし、 大丈夫なのかな?
バンビーくんは静かに息を吸い込み、盾をしっかりと握りしめる。
――その瞬間、何かが切り替わった。
「オラァァァ!! かかってこいよゼリー野郎がよぉぉぉ! 【挑発】!」
さっきまでの気弱な雰囲気はどこへやら、まるで別人のように声を張り上げ、スライムへ罵倒という名の挑発を浴びせる。盾を握った途端、まるで本能が目覚めたかのように戦意を前面に押し出す。バンビーくんはハンドルじゃなくて、盾を握ると性格が変わるのかぁ。
うちも鳥がいると性格変わっちゃうし、みんな個性があって面白いね!
ルーイ:「すごい挑発だったね、他にもバリエーションあるの?」
バンビーくん:「ぷるぷる野郎が、恐怖でプルプル震えさせてやる!もありました」
ルーイ:「それは何かちょっとかわいい気がする」
バンビーくん:「か、わいい・・・?」




