第218話 歴史上繰り返されて来た事
眉根を寄せてバカ面晒してるけど、お前らブサイクな顔が更にブサイクさをま増してるぞ。話の流れを止めたく無いから、いちいち口には出さないけど。
「ちょっと待て。お前が俺らをおちょくる為にそんな与太話をしていない事は分かる。だがだからそこだ、革命? しかも複数だと? おい、俺だけでは無く、この場に居るモンだって、南方諸島が不味い状況だってのは分かっちゃいる。その内そんな事も、どっかの国であるだろうって思ってもいた。だが複数? 複数って事は、二つの国で革命が起きるってのか?」
「一つ言っておくが、複数って言っても二ヵ国どころか、五か、六ヵ国位で起きると思うぞ。あくまで俺の予想だし、信じる信じないはお前達次第だがな。嘘だと思うならそう思えば良いし、フカシてると思うならそう思えば良い」
「いや、そうは言っていない。だが……」
俺の発言だから信じられんとかでは無く、そんなに多くの国で? そう思ってるのかな、お前達は? それに加えて……。
「もっと言えばほぼ同時に起きるだろうな。恐らくそうなる。同時多発的に革命が起き、国が荒れる。だからさっきも言っただろ? 信じる信じないはお前達の勝手。そしてお前達はこうも思っているな? もし俺の話が本当で、実際革命が起きたとして、俺達に何の関係がある? そう思ってるだろ、お前達?」
分かるんだよ、お前らの顔を見てたらな。目が物語っている。革命? だから? 俺達には関係無い、ここに居る奴等のほとんどは、そう思っているんだろうなって。
バカ共が……。関係無い? そんな訳無いだろ? 仕方ない、説明してやるかこのアホな出来の悪い生徒達にな。
「おい、ここに居る皆も俺と同じ事を思っているだろうが、お前が何故そう思ったかの理由は?」
「だからそれは俺が魔法使いだからだよ。それとなお前、俺が情報源を明かすと思ってんのか? 俺が凄い魔法使いだって事にしておけ。一応言っておくが、情報の確度は高いぞ。確度って意味解るか? 確かな、そして信頼出来るって事だぞ」
これは嘘でも何でも無いし、もちろんハッタリでも無い。だって情報源もクソも何も俺自身が情報提供者であり、当然確度も高い。そりゃそうだ、一番確実かつ信頼の置ける情報提供者は俺なんだから。
そして南方諸島が荒れ、革命が起きる理由だが、真珠だ。
じいさんに頼んで、代理人になって貰ったアレ。そう、オークションに出品した真珠、そして真珠貝がその原因だ。
俺はあの真珠貝を得た時、そして貝を開け、中に入っていたあの魔性とも言える真珠、そして美しい真珠貝の内側を包む真珠層を見た時も、まさかこんな事になるとは思ってもいなかった。
南方諸島において真珠とは幸福、繁栄の象徴。そしてステータスシンボルの最も足る物でもある。
ましてやほぼ真円と言っても差し支えない程の美しき真円。
俺の握りこぶしより遥かに大きく、サッカーボールよりは一回りから二回り程小さいが、その大きさ自体が奇跡の様な大粒。それに加えて魔性の輝きを持つ。
じいさんは言った。南方諸島の奴なら、どんな手を使っても手に入れたいだろうと。
俺は金貨千枚か、上手く行って二千枚だろうと思っていたが、じいさんは最低でも金貨五千枚か六千枚になるだろうし、ヘタしなくてもそれ以上になるかも知れないと……。
あれからじいさんとは又話したが、金貨が万枚を超え、何十万枚で落札されてもおかしくないし、場の流れや空気感、それらを加味すれば大袈裟でもなんでも無く、そうなる可能性がある、そう言った。
真珠の出品は目玉になるだろうし、最後にお披露目をとそう思っていたが、むしろ最後では無く、真珠貝を最後にすべきだとオークションハウスの者に言われたそうだ。
理由としては、言い方は悪いが、真珠は黙っていてもかなりの高値が付く。そして真珠を落札出来なかった奴等は目玉商品でもあり、真珠を手に入れる事が出来ないなら、そうなら真珠貝を求めるだろうとそう言われたそうだ。
確かにあの真珠貝もかなりの物だ。貝の内側を美しい真珠層が彩り、そして輝きを放っている。
アレも南方諸島の奴等、特に王族の奴等は喉から手が出る程欲しがると、そう言われたらしい。
ただでさえそうなのに、王族の意地、そしてプライドから値が釣り上がる、そう言われじいさんも確かにそうだなと、思ったそうだ。
意地の張り合い、見栄、それらが入り交じった時、落札価格は青天井と言える程上がって行くとも、そう言っていた。
しかし落札する為にかなりの大金を持って来なければならず、幾らになるのかと、そんな話も色々したが。
じいさんいわく、南方諸島の王族達が参加する時、最低でも金貨十万枚は持って来る。購入資金としてだけでは無く、南方諸島の一部の国の政情不安定化により、真珠の購入資金だけと言うよりも、いざと言う時の為の亡命資金にする意味合いもある、と言うより強いと。
例え購入出来なくても政情不安な国では、いざと言う時の資産となるから。
バハラのオークションは基本的には現金のみであり、手形や証文の様な物での取引不可。
但しバハラの商人組合の発行する手形、及び証文のみは可。
バハラの商人組合は前世におけるスイス銀行と形態が一緒で、知らない奴はスイス銀行とはスイスにある一つの銀行だと思ってる奴も多い、だがそれは違うらしい。
スイス銀行とは、スイス中にある銀行が加盟している銀行組合だとか、連合の様な物だと俺はそう聞いた事がある。但しこれは前世で聞いた事であり、正しいか正しく無いかは今となっては確認が出来ないが。
だがこのバハラの商人組合、これもバハラを中心とした商人達が加盟している連合体であり、形態としては俺が前世で聞いたスイス銀行と同じか、似てはいると思う。
バハラの商人組合が発行した手形や証文は、基本的に他の物、これはバハラの商人組合以外の物では、それが例えこのサザビー帝国が認め、発行した証文や手形ですら受け付けないと言う徹底ぶりだ。
当然信用度は大陸一とも言われており、だからこそ、南方諸島の王族を始めとした富裕層は、最低でも金貨十万、二、三十万枚は持って来るとじいさんが言う。
『俺は南方諸島の奴等が金貨百万枚持って来ても驚かん』とそう言っていた。
理由として、王族がサザビー帝国に来る時、複数の武装船(軍船)を伴い来国するから。だからこそ大金を船に積み、持って来られる。
但し王族の来国自体が手続きや申請がある程度時間は掛かる。それは帝国側の歓迎の為の準備と警備の為の時間が必要な為だからだ。
商人も武装商船で来る事が出来るが、許可を得るのが凄く大変かつ手間暇が掛かり、当然帝国側の信頼を得ていななければならず、武装商船で帝国側まで来て、港に停泊させる事が出来るのはそれだけでその商会の信用度の裏付けとなり、そしてその許可されてる商会の武装商船使用許可証は、その商会で代々大事に受け継がれており、新規での許可を得るのはかなり難しい。
普通の船もある程度の武装はあるがあくまでもある程度でしか無く、武装商船とは比べ物にはならない。
一応バハラの西沖合いの、大体ではあるが百キロ程西にある島があり、そこで入国前にある程度の手続きは出来、武装商船の入港は簡単に出来る。と言ってもこれもあくまである程度簡単なだけだが。
理由は他にもある。
真珠のオークションには最低でも王族やそれに連なる者、もしくは国王自身が参加の為に来るので護衛も船も人も充実しており、航行の安全度はかなり高く、それにあやかろうと、その船団に後ろから付いて来る商会の船も多い。
そして船団もその商会の船が付いてくる事に関しては黙認している。何故なら、金貨十万枚以上があると言うのもあり、多ければ多い程船団の安全度が増すからだ。
最低でも金貨十万枚。そんな大金国王自身が自分で持って行かないと不安があり、普段はバハラにそんな大金を持って行く事は出来ない。そしてそれ以前の問題として、国王自身の個人資産、それこそ国庫にすらあるか怪しい。そう、普段ならだ。
そんな大金抱えているからこそ、だから商人達の船が金魚のフンの如く付いて来ても黙認はしている。但し当然ながらその船団に付いて行ける速度のある船のみで、船団の真後ろから付いて行けるのは、その国の王に許可を得た商会は船団の真後ろに付く。
それ以外の許可を得られなかった商会、主に小規模商会の船等はその許可を得た商会の船の更に後方から纏まって付いて行く。なので許可を与え様が与えまいが、なんやかんやで大船団になり安全は更に増す。
そして国によっては安全の為に二ヶ国、またはそれ以上の複数国が合同でバハラまで行く場合があり、そんなに一度に来られたら、帝国に許可を得るのに時間が掛かると思われる。
最初オークションへの出品は、もしかしてだが一年後では無く、一年半後、もしくは二年後なるかもとじいさんが話をしていた。
理由は諸々の許認可に時間が掛かる可能性が大きいから。と、バハラのオークションハウスでの会合で聞いたからだ。
そしてそのオークションの開催により、バハラの経済が好調になる可能性が大きく、それを知ればバハラの商人達も稼ぎ時だと気合いを入れるだろうと話していたのを思い出す。
じいさんとは最初、茶飲み話で無邪気に真珠が出品されるオークションでは、それ以外の品も熱気により高値になる可能性が大きい。
それによりオークションで落札出来なかった国は、手ぶらで帰らず、バハラで何らかの商品や物を購入するので活気づくと思われる。そんな話をしていた。
だがふと、最低でも金貨十万枚、百万枚持って来ても驚かん、そうじいさんは言ったが、金は天から降ってくる訳でも無いし、畑から突然生えて来る訳でも無い。そして南方諸島の国々の殆んどは貧しい、ならその金は? かなりの大金だ。ならどうする? ふと、そう思った。なら無いのなら我慢する? それも無い、何故ならあの真珠や真珠貝はどんな手を使っても欲しい。それこそ喉から手が出る程欲しい。であれば……。
「なら、その確かな情報ってのは、お前が魔法使いだって言った事は一旦置いておこう。俺らが納得出来る理由は言えないのか?」
「ある。来年南方諸島の多くの国では増税が行われる。それこそ大増税と言って言い程、民からむしり取る。今でも民の不平不満が日々高まり、綱渡りしてる様なもんだ、圧政と言ってもいい国家運営だ。そんな中、ケツの毛をむしり取る程の大増税が行われたらどうなる? 答えは簡単だ、民衆が蜂起し、革命が起きる。理由の裏付けも取れてる」
金が無いなら民から、平民共から、そう思うだろうな。無いなら民衆からむしり取る。歴史上では数えるのも馬鹿馬鹿しくなる位行われて来た事、只それだけの事だ。




