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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
九章 有言実行
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工事期間中の出来事

 工事が始まって2日目。

 今日の作業は、印をつけた辺りの開拓作業。要するに、ベースキャンプを作っている。流石に馬車で『果てしない渓谷』を横断しようという猛者は居ないと思うので、規模としてはそんなに大きいものでは無い。


 昨日切り開いていた場所は、切り株を残して最初のベースキャンプへと向かっている。

 切り株は、二陣、三陣の人間と協力して取り除いていくようだ。


 ・印を付ける人(俺)

 ・印一帯を切り開く人(魔法が使えない冒険者)

 ・印へと道を繋げる人(魔法使い)

 ・魔物の襲撃に備える人(騎士)


 今行っている作業としてはこのような感じ。

 印を付ける作業は殆んど終わっているので3つに分かれていると言っても過言ではない。


 昼の休憩に入れば、『金酉宮きんちょうきゅう』の飯屋は人で溢れかえる。

 とは言っても、全ての人が休憩時間までに『金酉宮きんちょうきゅう』に帰ってこれる場所に居るわけではない。

 そんな人達には弁当が支給される。俺の発案で従業員からの手渡しで配布していたのだが、いつの間にか渡してくれる人を指名するような輩も出てきた。アイドルの握手会じゃないんだぞ、と凄いツッコミたい。

 この一件から、俺は冒険者からは「男心が分かる王様」などと影で呼ばれているらしい。モルビドがやっている医療所も入れ食い状態の様だ。彼女のMPが少なくなってくるとシュテルが出て来るので、ローテーションを組んでモルビドの顔を拝みに来る計画もあるとかないとか。

 騎士たちは既婚者が多く、加わりたいのに手が出せないという苦行が続いていると聞いた。


 言い忘れていた娼館について少し説明させてもらう。

 一番の問題だった従業員は、アルト殿がノーマリー王国王都の老舗娼館から数人引っ張ってきたことで解決。場所は『巨木』の近くだ。シュテルもグルである。巻き込まれたという方が正しいのだが。

 従業員に対して冒険者の数が多いので、どうしても抱けない人間というのは出て来る。そこをカバーするのが、『金酉宮きんちょうきゅう』で働く、俺の守護者150人である。

 俺の守護者に関しては話しをするだけのお仕事なのだが、これが中々盛況なのだ。肉体的に疲れているのに、更に身体を動かそうだなんて思わない人間がそれなりに居るらしい。

 彼女たちのお陰で、何もしなくても情報が勝手に入って来るようになった。話すだけなら金を取らないというのが功を制したのか、3日目にして多くの顧客が出来た。

 王都から来てくれている人達に関しても、王族が着る様なドレスを貸しているので売り上げは右肩うなぎ上りだそうだ。これなら前金として渡してある金を全て回収できそうだとアルト殿が笑っていたのが印象的だ。早くも王都にある本店に人数の増加を頼んだという。


 □


 二陣がやって来たのはそれから2日後。

 一陣が来てから数えると、5日目に来たことになる。


 二陣が来たのはいいのだが、毎日のように癒されている冒険者たちの謎のパワーによって、作業は終盤に入っている。

 これには二陣の人員の総監督もビックリ。危険なダンジョンに決死の覚悟で来てみれば、皆が皆、笑っているのだ。一陣の人間が動く筈なので、彼等も直ぐに仲間入りを果たすだろう。

 このくらい常連さんに金を握らせれば簡単よ、ハハハ!


 残った作業は、切り株の撤去と所々に橋を渡すのみ。レクタングル側はこっち側ほど進行していないようだ。まぁ、計画通りには進んでいる。異常なのは俺達である。


 作業も十分に進んでいるので、本日は休み。そこらかしこで木でできたジョッキを打ち付けあう音が聞こえる。

 俺とアルト殿、その他の豪商は『金酉宮きんちょうきゅう』の公園で酒盛りだ。

 アマンダ殿の事を聞かれれば、フロウを捕まえて空を飛びに行った。と言っておけば大概が信用してくれる。従者になった今となっては城で大人しくしているがな。

 お陰で俺はフリー。こうやって昼間から酒を飲めるわけだ。


 二陣でやって来た商人は、一陣で来ていた商人に話しを聞いて肩を落としていた。『金酉宮きんちょうきゅう』のスペースは限られているからな。今頃来ても遅い。店を出し始めた商人については、うちの住人達の特性は説明している。なので、必然的に冒険者や騎士が対象となってくる。

 外にあるものが入って来るので俺は助かるし、シュヴァルツヴァルトのものを外に出す事で商人は儲けている。どうやら、誰が何を何処にダンジョン産のモノを出すのかは決めているようだ。『金酉宮きんちょうきゅう』に足りないものを商人が集まって考え、それぞれが被らないように商品を出す。

 若手はこの話しに入れてもらえず苦労していると聞くが、あえて穴を開けることで後進の育成もしていると教えてもらった。


 □


 三陣が来る頃にはシュヴァルツヴァルト、ノーマリーの作業は終わっている。

 既にグラキエス側の作業をコチラがしている状況だ。三陣以降はもう来ないようなので、丁度いいと言えば丁度いい。

 一陣の人間には特別報酬を出す予定なので、暴動も起きないだろう。


 治安に関してだが、何故か一陣と二陣の有志で警備網が出来上がっていた事もあり、何かが返り血を浴びることも無かった。

 これは娼館の皆様が吹き込んでくれたものと思われる。金銭面ではだいぶ儲けたお礼だとアルト殿から聞いた。

 聞いた、というのは、レイが居るから独特の空気が漂う娼館に入れないのである。男には無臭でも女はそうではないという場面は飽きるほど読んでいるので回避させてもらっている。お陰で入れない訳だが。

 俺にはレイが居るし?ギフトの髪はサラサラだし?シディの尻尾だとか最高だし?

 ・・・後半二つはなんか違うか。



 なんやかんやで一週間と3日で工事は無事に終わり、約束通り、記念碑が建てらる事になった。

 冒険者や騎士の名前は勿論の事、商人や娼館の従業員まで。文字通りの意味で、シュヴァルツヴァルトに来た全ての人間の名前が彫られた。


 『果てしない渓谷』に出来た迂回路のお陰で普段は出回らない様な食材や薬も見かけられるようになり、レクタングル、シュヴァルツヴァルト、ノーマリーの三国に更なる繁栄をもたらした。

 今後、短期間でここまでの工事をした国は現れる事は無いだろう。

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