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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
九章 有言実行
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風になれ、雲になれ、空の青になれ

 シュテルに任せようとしている建物、それは巨木だ。

 建物じゃない?それは言わない約束だろう?

 で、その巨木の役割だが、主な目的はリジェネ草のダミーである。『鑑定』持ちのアマンダ殿や、他に眼を持っている人の注意を別の所に留める為だ。

 もちろん、他にも意味がある。アサルトやフロウの止まり木や、ダミー以外の薬草を育てるのにも使える。幹に部屋を作れば人も住めるし、外観も悪くない。


 何処に巨木を創るかだが、防壁内の西側の森に創ろうかと思っている。

 東側は今日通ったために使えないので、消去法で西側に創る事になった。しかし、西側を通らなかったとはいえ、あまりにも大きいものを創ってしまうと不自然だ。なので、ある程度の大きさで成長を一旦止め、あとは少しずつ伸ばしていくしかない。

 まあ、ある程度の大きさでも十分に高いんだがな。


 巨木をシュテルに任せるのに言ったが、それは森の賢者をイメージしたからだ。それだけ。

 技能構成もそれっぽいしいいんじゃないだろうか。




 さて、場所は変わって『金酉宮(きんちょうきゅう)』の公園。

 そこでは、迂回路作成メンバー第1陣の歓迎会の準備が行われていた。

 既に机や椅子が運び込まれ、進展度は8割と言ったところ。今やっているの作業は、何らかのステージを組んでいる様だ。作業監督はレイが自ら行っている。


 「・・・レイ」

 「あぁ、旦那様いらしたんですね。お話しはどうでしたか」


 彼女の名前を呼べば、直ぐに俺へと向き直り話しをふる。

 アマンダ殿の件を報告しないといけないと思ってはいるが、口が上手く動いてくれない。


 「そうだな・・・あとで場所を変えて話す。それで?コレは何のステージなんだ」


 ただ単に、俺がレイにこの話しをするのが嫌だったのか、それとも周囲に人の目があることを嫌ったのか、アマンダ殿の話しは後回しになった。

 少し気まずくなったのを挽回しようとすれば、レイはステージに向き直った。


 「舞踏用ですね。私と数人の守護者で舞います」

 「それは楽しみだな。何時頃やるんだ?」

 「予定では最後です。正確な時刻までは分かりませんけど、誰かに呼びに行かせましょうか?」

 「よろしく頼むよ」


 そうだな・・・。俺は懐中時計を持っているが、他はそうでもないのか。

 時計台を作れば正確な時刻が分かるし邪魔にならないところに建てるか。ていうかこの星の識字率ってどうなんだ?

 お偉いさんとしか交流は無いからな。冒険者ギルドにも立ち寄っていないし。流石に数字ぐらいは読めると思うが。

 様子見で設置してみるか。時計の読み方が分からなければ守護者の誰かに聞くだろうし、さして問題は起こらないと思う。

 『金酉宮(きんちょうきゅう)』の方にも設置を頼んでおこうか。


 (マスター、アマンダ様がお呼びです)

 (すぐに向かう)


 彼女は浮島にでも行くつもりだろうか。スカートは動きにくいから着替えてもらいたいんだがな。


 「悪い、急用ができた。話しはまた今度だ」

 「そうですか・・・、もう少し話していたかったんですけど仕方ないですね。行ってらっしゃい」

 「行ってくる。あぁ、そうだ。アマンダ殿は『鑑定』持ちだから気をつけといてくれ」


 ここの所、互いに忙しいからな。話しをする機会も少なくなった。多少無理やりにでも今夜は時間を作るか。




 『城』に戻ってみると、如何にも準備万端と言った装いのアマンダ殿が俺を待っていた。

 スカートがズボンに変わっているのを見れば、麒麟(きりん)に乗った時のことを学習したんだろうな。


 「お待たせしました」

 「いえ、私の方こそ無茶を言っているのは承知していますから」


 適当な所に飛んでからアマンダ殿を迎えに来たので、時間が掛かってしまったんだが、彼女は気にしていないようだ。


 「それで、どちらまで案内を?」

 「まずは浮いている島に行きたいのですけど」

 「分かりました。では一旦外にでましょうか」


 浮島か。フロウの試運転も兼ねれるしいいんじゃないかな。

 空から『鑑定』を掛けられたら色々と覗かれるものの、地上部に怪しい施設はない。

 巨木にする予定の木も、今はまだ他より大きいぐらいでしかないから、見られても大丈夫だ。


 庭園に出ると、指示したようにフロウが待っていた。

 2人用の(くら)を付けているし、『風魔法』のサポートもある。アサルトは見られたくないからアサルトが居る浮島よりは下の島に行くつもりだ。飛行テストにはもってこいだな。


 「じゃ、行きましょうか」

 「言っといてなんですけど、安全、ですよね?」


 空を飛ぶのはやっぱり緊張するか。

 大丈夫じゃないか?大人しくしてれば落ちないさ。


 「捕まっててく下さいね」


 返事もソコソコに、フロウに飛ぶように伝える。空に上がってしまえばこっちのもんだ。


 アサルトの様に人が乗っていても問題なく飛べる大きさではないので、『風魔法』を使っての離陸となった。

 前から悲鳴が聞こえるけど気の所為だろう。


 アマンダ殿は飛んでから静かになり、ゆっくりと感嘆の声を上げた。


 「わぁ、風が気持ちいいですね!・・・、それに、とっても高いです!」


 フロウの速さが遅いので『風魔法』によるガードも少なくなっており、風を感じることが出来る。アサルトならフロウの逆で、離陸は自力で、ガードは強力になっている。


 俺としは見慣れた景色。それでも、自分で創った国を見るのは最高の気分だ。

 一斉に俺にひざまずいた守護者達を見ているような、一種の征服感、自分が支配しているという実感を感じた。


 浮島から地上へと落ちていっている水の柱の周りを1周、2周、3周。そのままの勢いで浮島の下をスレスレで通過して急上昇。宙がえりをして、しばらくの後に浮島へと着陸した。

 ふぅ、少し飛ばし過ぎただろうか。俺がジェットコースターが苦手だから遅めに飛んでもらったんだが。


 「お疲れさまでした。・・・どうでしたか?」

 「凄いですね!緊張感があって楽しかったです!!」

 「それはよかったです」


 フロウから降りるのを手伝い、様子を聞いてみる。

 少しの屈伸の後に返って来たのは、楽しいという感想。

 俺の心配はどうやら杞憂に終わったようだな。楽しんでもらえたようで何よりだ。


 アマンダ殿は浮島にある池に走り寄ると、手で水をすくって顔を洗った。

 化粧とか大丈夫なんだろうか。ドロドロの顔なんか見たくないぞ。


 「覗き込みすぎると落ち込みますから程々にしてくださいね」

 「はーい。わかってます!!」


 振り返らずに元気な返事が返ってくる。

 この辺りは年相応なんだな。振り返らずに立場が上の人間に話すなんて普通はしないぞ。

 俺がなめられているのか、吐いているのがバレないようにしているのか。これは考え過ぎだな。


 アマンダ殿も休んでいるようだし俺も休ませてもらおうかな。

 浮島の縁に立ち、シュヴァルツヴァルトの街並みを見る。ジワジワと先ほど感じた征服感が込みあがり、自然と身体が暖かくなってくる。


 俺の背後で浮島に生えている芝が揺れる音が鳴り、アマンダ殿が近づいてくるのが分かった。


 この感覚は何処かで感じたことがある。なんだっけな・・・。あぁ、そうだ。冒険者たちを返り討ちにしたときに感じた、戦った時に感じた暖かさに似ている。

 暖かさは次第に熱さへと変わり、身体を支配していく。


 (御主人!!流石にこれは・・・)

 (分かってる。これでいいんだ。好きにやらせればいい)


 ディアからだけでなく、ダンジョンから危険を知らせる感情が送られてきた。だが、そんなことは俺だって分かっている。

 危険が近づいて来ているのを知りながらも、俺は自らの熱に身を任せる。


 そして、その直ぐあと。

 腹部に衝撃が走り、俺は浮島から落ちた。


 「・・・・・・」


 首だけで後ろを振り返れば、無表情でナイフを持ったアマンダ殿の姿が。

 それを見ながら、冷たい空気を肌で感じながら、俺は笑って言葉を吐く。


 「ありがとうございます。これで貴方に手が出せる」


 はたして、俺の言葉は彼女に届いただろうか。

 ああー、勝手に手駒が増えるのは楽でいいな。クローフィのお眼鏡にもかなっているだろうし、よく働いてくれるだろう。


 近づく地面を眺めながらそんな事を考える。

 フロウにも、アサルトにも手を出さないように伝えてあるし、俺はこのまま地面にぶつかるだろう。


 この星に来た時に、俺に『人宮一体』の技能が無かったらな。


 ダンジョンに憑依させようとして作った人形に俺の服を着させて転移。

 俺は空中に掻き消え、ゆっくりと玉座へと腰を掛ける。


 貴重なスカイダイビングの経験をありがとう。

 ギフトによれば、俺は慢心する癖があるらしいからな。あれ以来、こういうことだって考えて生活してる。

 ましてや国外から誰かが来た、その初日なんかはな。


 さて、暗殺を指示したのは誰だろうか。

 彼女の口から聞かせてもらおうじゃあないか。


 「クロウ、彼女を丁重にお連れしろ。クローフィ、メラニーは『謁見の間』に来るように。城内に居る守護者は『謁見の間』周辺に人が来ないように人払いを」


 俺の言葉はダンジョンを通して一文字も違える事なく守護者に通達された。


 それと時を同じくして、『金酉宮きんちょうきゅう』では歓迎会が始まりを迎えたのだ。

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