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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
七章 呉越同舟
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レクタングルからの使者

夜。シュヴァルツヴァルトにやって来た王国兵を『大聖堂』に押し込め、それでも入りきらない分は新しく家を建てて対処した。砦に向かう途中でココに立ち寄った時は野宿だったから随分マシになっただろう。

『大聖堂』から市街地を眺めていると、見知った人物と出会ったので声を掛ける。


「クレイドル殿」

「おぉ、エバノ様ではないですか。どうかなさいましたか」


帝国の戦争が不発に終わった事により、砦に置いていた予備戦力は王都に引いていた。王子からの嫌がらせか、シュヴァルツヴァルトを経由地として挟んでのルートだ。


「いや、戦闘が起こらなかったとは言え、兵も疲弊してると思ってな。今回は食事を用意させてもらった」

「ありがとうございます。では、その様に伝えさせて頂きます。王子が御迷惑をお掛けして申し訳ありません」

「その件は王国から使者が来て話しは着いている。・・・あぁ、別に王国に不利な形で決着はついてないぞ」


どうせ帰りも来るだろうと思っていたので、予め食事の用意はさせて貰っている。1週間でMPもだいぶ余裕があるし、振る舞うぐらい構わないだろう。

王国から使者が来ていた事には少し驚いた様な表情をしていた。王国の中での俺の立ち位置に驚いているのかどうか、などと考えてはみるものの、結局分かりはしなかった。


現在のMP35,821


部隊のお偉いさん方で飲むように日本酒を贈り、クローフィ、アクル、ガブリエナを連れて市街地の見回りに出る。爵位によって階層に縛られていないこの3人は、何かと一緒に行動することが多い。フランメもそうなのだが、今回は『大聖堂』から『一階層』行きのエレベーター前で警備をしている。


『大聖堂』ではフロントガード25体が王国兵の監視を行い、残りの75体で市街地を見回らせているようだ。これは、何百人と兵が居ても、フロントガード25体で制圧出来るという証。

実際に戦えばフロントガードに負ける要素は微塵もアリはしない。王国兵は良い気分ではないだろう。


「殿、どうしたでござるか」

「なに、見回りだ。気にするな」


スキアーを絡みを軽く流して『大聖堂』を出た。あのまま居ると余計に護衛を付けられそうだったしな。


外の様子は至って普通。人が多くて賑わっているが、いざこざは起きていないようだ。

マインも市街地に守護者を何体か回している様で、ルーンフェンサーを何度か見かける。うちの砦は規模が大きい割に守護者が少ないのは前々から分かっている。警備強化の意味も兼ねて、ルーンフェンサーの数を増やしておこう。


・ジャンル選択[死]

・造形『鎧』

・細部設定 技能『剣術』『火魔法』『水魔法』『風魔法』『土魔法』『MP回収』『MP増加』

 消費MP102


・名称『ルーンフェンサー』


・創造しますか?

《はい》《いいえ》


ルーンフェンサー総数 30(+170)→200体

MP35,821(-17,340)→18,481


これだけいれば安心できるか?ジャンルが[死]なのでフロントガードとも上手く連携が取れると思う。


市街地を一周した辺りで地下に戻り、レイと共に寝た。



翌朝、王国兵はその全てが王都目指して出発した。

先頭が歩き始めてから最後尾が動き出すまでに2時間近く掛かっている。大軍ならではの欠点だな。


あの密集隊形に魔法を撃ち込まれたらどうやって対処するのか見てみたいものだ。列の合間合間に魔法使いを置いて、それで迎撃でもするのか?

ダンジョンの守護者は魔法も付けられるから、その点の心配は少ない。最悪の場合はレイが魔法を撃てば終わるしな。俺はどうにもMPが勿体なく思えてチマチマと攻撃してしまう。うーん、コレがゲーム脳ってヤツだろうか。


兵の行列が見えなくなると王国兵が泊まっていた家屋は全て潰し、『大聖堂』も清掃した。

他に何かやる事はないかと考えてみても、特に思い当たる事も無い。


ふぅ。戦争が終わったので、本格的に暇になってしまったな・・・。

ルーチェが周辺国家に働き掛けて居るようだし、何か動きがあるまでは大人しくしていることにしよう。



アサルトに乗せられてに空を飛んだり、麒麟に跨って森の中でレースを開催したりと、それなりに楽しく過ごすこと3日。

リアスやルーチェを送る時に立ち寄った、教国と『果てしない渓谷』の中間地点。ソコから、侵入者を報せるブザーが鳴った。


「何か、この音を聞くのもさしぶりだな」


そう思いつつも、ダンジョンから映し出された映像を確認する。


「・・・リアス?」


頭にターバンを巻いているので顔が確認しにくいが、鑑定で本人確認行い、アサルトに迎えに行かせる。


ハハハ、目の前にいきなり竜が現れたら驚くだろうな。黒い(えみ)浮かべながら映像を見ていたが、アサルトが攻撃されては堪らないので、遅ればせながらも背中に跳んだ。

出現と同時に風圧で飛ばされそうになるものの、ディアが素早く足元を固定し危機を回避する。


「・・・あっぶねぇ」


失敗した。予め念話を入れておけば良かったな。

アサルトも『風魔法』で防護を作り、謝ってきた。いや、今回は普通に俺が悪い。お前が謝る必要は無いさ。

甲殻を撫でながら意思を伝えると、嬉しそうにコチラに首を向けた。結構、可動域が大きいんだな。


目的地が見えたようで、徐々に高度が落ちてくる。俺からはリアスの姿を確認できた。

更に距離が近くなると、リアスも流石に何か近づいてきているというのは分かったようで警戒態勢をしている。本来、『擬態変色』は時間を掛けて大表の色を変える技能だ。違和感を覚えるのも当たり前だろう。


リアスに攻撃される前にアサルトの背中から飛び降り、『火魔法』で地面に向かって炎を放出。ディアのサポートも受けつつ、衝撃を抑えて着地。


「待たせたなッ!」

「・・・おっ、おう。せやな」


ポカン、と大きな口を開けているリアスに声を掛ける。

まぁ、普通は驚くよな。


「で、何の用だ?」

「あ、ああ。コレを渡そうと思ってな」


そう言って素早く立ち直り、リアスが懐から取り出したのは、ロウで封がされた手紙。手に取って詳しく見てみれば、ロウには毛の1本1本が丁寧に掘られたハリネズミの姿があった。


「どこからの手紙だ」

「レクタングル。俺がお世話になってる国だ。ハリネズミはレクタングルの印だから覚えとけよ」

「ああ、分かった。・・・移動するか?」

「そうしてくれ」


一瞬、その場で封を開封をしようと思いはしたものの、この時期の手紙など十中八九、重要な物で間違いない。1度ダンジョンに持ち帰るべきだろう。

アサルトに乗るのを恐がっているリアスを、種族的な身体能力で捕まえ、無理矢理背中に放り投げる。間髪入れずに俺も飛び乗り、甲殻を撫でてアサルトに出発の合図を出せば、翼を豪快に展開し一息に空へと飛び上がる。


「うぉぉぉぉーーー・・・ぉ?」

「フッ、だっさ」


リアスは大きな揺れが来るかと身構えていたようだが、『風魔法』のお陰でタダの間抜けになっている。


「は?テメェ、ぶっ飛ばすぞ」

「うぉぉぉぉーーー・・・ぉ?」

「・・・ぶっころっしゃーーーー!」


ぉ? の所でリアスの方に(わざ)とらしく顔を向ければ、リピードリーを下段に構えて擦り寄ってくる姿があった。

アサルトが迷惑そうに声を漏らした所で俺達の不毛な鬼ごっこは終わりを告げた。


『謁見の間』で手紙の開封を行い、内容の確認を行う。


「・・・要約すると、現在同盟を組んでいる国のトップが教国に集まって話しをしようってことか」

「俺は内容を知らないから答えられないぞ」

「あれ?そうなのか」


リアスの実力なら護衛なり何なりで呼ばれてそうだけどな。冒険者と騎士団とでは中が悪いとか言う定番のアレか。


・・・親族は3人、護衛は10人まで連れてこれる。

1ヶ月後の開催で、会場はグラキエス教国の首都。予定では3泊4日あるみたいだ。


1日目

夕 : 立食パーティー


2日目

午前 : 騎士同士の親善試合

午後 : 同盟についての話し合い


3日目

午前 : 魔法使い同士の親善試合

午後 : 同盟についての話し合い


4日目

午前 : 同盟について最終決定


簡単に纏めるとこんな感じになる。

話し合いが多すぎると思うが、同盟内容については既に出来上がっている筈なので、本来ならばもっと時間が掛かるだろう。


親善試合は・・・まぁ、圧勝出来るんじゃないかな?


結構細かく書かれてるが、会ったことすらない相手にココまで丁寧に日程を教えてくれるものか?新人イビリは経験するかと思ってたんだが。


「実はこの手紙って教国からのものとかじゃないよな?丁寧すぎて逆に怖いんだが」

「俺がレクタングルの王と知り合いだからな。少しだけだが融通してもらえるように頼んで来たんだ」

「なんでまたそんな繋がり持ってるんだ」

「ちょっと大会で優勝してそこからだな」


リアスなら簡単に優勝出来ると思うが、そんなんでココまでして貰えるのか?


「何か対価とか要求されないよな」

「特に言われてないけど、酒でも贈ればいいんじゃないか」

「・・・そうさせてもらうよ」


1ヶ月もあればコチラも色々と準備できる。

お礼に酒類を山ほど用意させてもらおう。もちろん運ぶのはリアス1人だ。

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