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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
六章 隔岸観火
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守護者会議

作物の成長速度を様子見の二倍にした。次は農地の確保だ。

新しい農地用に階層を創っても良かったのだが、折角スペースがあるので森の中に作る事にする。

砦内の南には『大聖堂』と市街地があるので、必然的に北の方面に畑を作らなければならない。


上空から俯瞰しながら場所を決め、木を消して大まかな形を決める。それを間隔をあけながら何度か繰り返した。切り開かれた空間は 1辺25m の正方形で、それが全部で80個ある。上空から見れば、ルービックキューブの様に綺麗に並んでいるように見えるだろう。


さて、何を育てるかはまだ決めていないのでなんとも言えないが、水回りを整えなければいけない。

井戸かスプリンクラーが頭に頭に浮かんだのだが、外観重視で浮島を幾つか創る事にした。

島の中心に無限水源を作り、滝のように水を地面に垂れ流しにする。水の着地点周辺を貯水池にして、ココから水路を引いていく。


実際はダンジョンが管理しているので水を必要としないのだが、ロマンに突き動かされた俺には勝てない。

当初は農地にだけあった浮島はいつの間にか『大聖堂』にも姿を見せている。『大聖堂』の周囲には4つの浮島があり、それぞれの浮島には水道橋が掛かっている。水道橋と言っても規模はそんなに大きくはない。『大聖堂』を取り囲む様に作られているソレ等は、水飛沫が立たないように段階を踏まえて地上の水路と繋げてある。

そうして細部の調整を終える頃には陽が沈もうとしていた。


ルーチェ、フェーデ、リアスの3人からは『大聖堂』の変わり具合についてとやかく言われたが、創った身からすると嬉しいものだ。


翌朝、リェース監修の元で住人達が畑に種を植えているのを横目に見ながら『果てしない渓谷』へと向かっていく。

お客の3人とその従者を国に帰すためだ。


「じゃあ、行きますよ?」


出発の了承を尋ねると、ルーチェが無言で頷いたので移動を開始する。

一旦、領域の端で止まり、領域を増やしては移動する。これを繰り返していると、直ぐに街が見えてくる。


「本当に一瞬でしたね」

「次は領域の更新をしなくてもいいので、もっと早くなると思いますよ」

「便利な技能ですね」


俺もそう思うよ。

教国が見えたしそろそろお別れだ。


「戦争、無事に切り抜けてくださいね」

「それは分かりかねます。帝国が本気で攻めてくれば負けてしまうかもしれません」

「それほどですか」


俺も何か手伝えたらいいんだが・・・。どっかの王子の誘いは断ったが、教国の為に動くのなら悪くない。


「何か出来ることがあればいいのですが」

「エバノ様の申し出はありがたいのですが、同盟は戦争のせいで周辺国家の返事が遅れていますし今は大人しくしておいた方がいいかもしれません。今回だけでも帝国に目を付けられないはずです」


気遣いありがたいが、シュヴァルツヴァルトには既にスパイが入り込んでるからなぁ。

兵糧を渡してないから何とも言えないが、声を掛けられるかもしれないな。

バレないように影で何か出来ればやってみるのもいいかもしれない。顔を隠せば色々と動けると思う。


「エバノ。心配し過ぎだぞ」

「そりゃあ心配の一つでもするさ。戦争なんて初めてだからな」

「ここでは珍しいものじゃないから諦めろ」


戦争の話しは聞いても実際に体験するのは初めてだ。

心配するのは当たり前だろう。


「では、そろそろ」

「分かりました。では、お元気で」

「ええ、また会いましょう」


ルーチェの馬車の準備が出来たようだ。

離れていく彼等に手を振り、ダンジョンへと戻った。


農地では(くわ)を片手に農作業をしている男手の姿を見ることが出来た。身長的な関係で見えなかったが、リェースが指揮を執っているようだ。

やはり彼女1人で産業を回すのは厳しいだろうか。新しく守護者を創るか?


「あ、ご主人・・・」

「あぁ、すまんな。邪魔したか?」

「・・・そんなことない、丁度よかった。1人じゃ、追いつかない」


どうやらリェースも1人での作業は限界を感じていた様だ。

現在のMPは9,348。魔法を使った時に適当にMPを込めていたから数字のキリが悪い。


・ジャンル選択[陸]

・造形『人型』

・細部設定 技能『指導』『身体能力強化』『農業(ブースト+100)』『水魔法』『土魔法』

消費MP199


・名称『ソイル』


・創造しますか?

《はい》《いいえ》


MP9,348→9,149

ソイルももちろん女性だが、その身体はどこか筋肉質だ。戦闘を本職とするマインには負けると思うが、それなりの体つきをしている。顔もシュッとしているというか、陸上部に居そうな顔をしている。

創造してから全裸で現れる事を思い出して冷や汗をかいていたのだが、ダンジョンが頑張ってくれたので一瞬で何時もの服装に変化した。


「主君、お姉様のお手伝いですか?」

「・・・お姉様?ま、まぁ、リェースの手伝いだな」


お姉様とはリェースの事だろう。お嬢様学校から来たのかな?

冗談はさておき、地下に戻ることにしよう。


『謁見の間』に戻ってきたはいいが、する事がない。玉座に腰掛けて今後の方針を考え始める。


「ノーマリーとの仲は微妙・・・コレは相手が悪いから放っておくとして、戦争をどうするかだよな」


帝国にバレずに嫌がらせをするにはどうすればいいか。

そもそもどんな嫌がらせをするべきだろうか。

隠密行動による兵糧攻め。帝国領をダンジョンに組み込んで地形を動かす。

考えてみれば色々と出来ることはある。

守護者達と相談してみようか。



大広間の一つを改造して、軍議用に場所を整える。円卓を出しても良かったが、生憎、階級が違うので縦に長い大理石の机を造る事になった。


「地図があれば一番いいんだけどな」


無い物ねだりしても仕方ない。各場所の代表を呼んで話し合いを始めるの事にしよう。


「シュヴァルツヴァルト、第一回軍議を始める」


マイン、スキアー、ブリッツ、ギフト、リェースが席に着くのを確認し、号令をかけた。

5人の守護者だけでなく、俺の背後にはガブリエナとクローフィが控えているが、護衛と宮廷魔法使いとして呼んでおいたのだ。


「誰にもバレずに帝国に嫌がらせをするにはどうすればいいだろうか」

「やはりミストーカー=デスを使っての暗殺ではないですか?」

「それでも証拠が残らないとは言え犯人探しはするはずですわ。それでしたら行軍進路に妨害工作をした方がマシです」


早速ブリッツが案を出してくれるが、マインに斬られてしまった。

俺が「嫌がらせ」と言っているので、マインの考えの方が俺の求めている答えに近い。ブリッツにもそれが分かったのだろう。一言謝ると話しを進めるように促した。


「進路の妨害が賢明でしょうね。問題はどうやってやるかですけど」

「・・・雨、倒木が妥当」

「安全に仕掛けるのであれば雨でござるな」

「『水魔法』を使えるのはリェース、アクル、パイクアーマー、ルーンフェンサー。『氷魔法』はチルアーマー、ガブリエナですね」

「(少数の方が行動しやすいので数を絞る必要がありますね)」


何もしなくても話しが進んで行くのは楽でいいな。これこそダンジョンマスターって感じがする。

もっと前から相談しておけば良かったな。

クローフィがソイルの名前を挙げなかったのは、単純に彼女の存在を知らなかったのだろう。彼女には彼女の仕事があるので呼ばれても困るのだが。


「マスター。守護者移送用の守護者を創って下さい」

「搭乗数は?」

「マスターを除いて3体です」


3体か。それなら結構デカくしないといけないのか。

レイが使っていた樹の龍がカッコよかったから俺も創りたいと思ってたんだよな。使う場面が無いから遠慮していたんだが、お許しを得たので創っていこう。


・ジャンル選択[空]

・造形『竜』

・細部設定 技能『身体能力強化(ブースト+100)』『水魔法(ブースト+100)』『風魔法(ブースト+100)』『氷魔法(ブースト+100)』『金属体』『擬態変色』

消費MP638


・創造しますか?

《はい》《いいえ》


・名称『アサルト』


MP9,149→8,511

今回は前回の失敗を活かして地上での創造だ。

ブーストは全てにかけてあるけどガブリエナの例があるので少し心配だ。

『金属体』は、名前の通りに身体が金属になる技能で、アサルトの場合は甲殻の一枚一枚が金属になっている。レイの亀もこの技能を持ってたはずだ。

『擬態変色』は『光学迷彩』と似たような技能だ。スライム(キャモ)が『光学迷彩』は納得出来るが、竜が『光学迷彩』は何か違和感を覚えたのでダンジョンさんに変更をお願いした次第。


アサルトの甲殻の色は空色に設定しているので、『金属体』と相まって空を映している様だ。これなら『擬態変色』も上手く機能するだろう。

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