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ダンジョンと共に往く  作者: 畔木 鴎
五章 力戦奮闘
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五星が1つ熒惑

本日は四話同時投稿です。

 「えと、やり過ぎました?」

 「ん?そんな事ないぞ」


 サイセイから降り立ったレイの一言目がコレだ。

 流石にあの威力には彼女自身驚いていたのだろう。


 「よくやってくれた、ありがとうな」

 「旦那様!?みんなが見ています・・・」


 ションボリしたまま進むのもどうかと思いレイを抱きしめたのだが、逆効果だったのかな?まあ、俺が楽しいからいいか。


 「どんくらいMP込めたんだ?」

 「2千ぐらいでしょうか?」

 「お前の嫁どうなってんだ・・・。そりゃ、あんな威力出るわ・・・」


 リアスがたまらず声を挟むが、俺も同じ気分だよ。


 「「主よ・・・」」


 ガブリエナとブリッツの声が被って聞こえたそうか、コイツらも呼び方が被ってるのか。


 「(ブリッツ様、私が先です)」

 「すまんな。私が先だ」

 「何やってんだ」


 手を組みあってどちらが先に報告するのかを争っているようだが、話さなくても守護者の心がだいたい分かる俺の前で見苦しい真似はしないでほしい。


 「次の階層を見つけたんだろ。さっさと行くぞ」


 緊張感が無さすぎるぞ。お、ブーメランが落ちてる。


 二階層への入り口は地面と垂直と起立した、両開きの大きな扉だった。

 扉の枠は地面から生えている木の根の様なものに縫い止められている。


 「さっきと同じ作戦で行くぞ」

 「分かりました。ご武運を」


 キャモを先頭に扉をくぐる。

 しかし最初の様に上手くはいかなかった様で、キャモからの念話は攻撃を知らせるものだった。


 (魔法攻撃!)

 「下がってろ!!」


 キャモが居るであろう場所に手を伸ばし、掴んだ感触と共に後ろへと放り投げる。その勢いを利用して前進。フランメの上からディアが覆いかぶさり、魔法を反射する。

 反射的に目を閉じているので、ディアの感覚を頼りに前進する。


 「『熱き魂(バーニング・ソウル)』!」


 魔法を唱え終わると同時にフランメが形状を変え、巨大な無骨な大剣となる。

 『熱き魂(バーニング・ソウル)』の熱を受け、一刀溶断の剣となったフランメを左脚を起点に回りながら振り回す。

 その途中で目を開け、周囲を確認。結構離れてるな。剣にカスリもしない。


 「フランメ行くぞ!」


 手を離し、フランメを投げ飛ばす。逃げ遅れた敵の腹部に当たったフランメ。

 武器を投げ飛ばすとは阿呆め!そんな声が聞こえたが、フランメはタダの武器じゃないぞ。


 ヴァアアァ!!


 未だ熱量を持ったフランメは、潰れたスライムのように形状を変え、足元から敵を襲う。


 混乱続く集団へと走り、すれ違いざまにアイリードで切り裂いていく。

 阿鼻叫喚が響く現場に後続の守護者が現れた。出てくるのはシールドアーマーだとばかり思っていた俺の予想を裏切り、現れたのはレイの守護者だった。


名前 : ケイワク

ジャンル[陸]

造形『牛』

HP609

MP609


・技能

 相互成長[熟練度10.00]☆

 発熱体[熟練度10.00]☆

 火魔法[熟練度10.00]☆

 方陣魔法[熟練度10.00]☆

 炎吸収

 水無効


 ソレはガラスの角を持つ雄牛だった。

 低く空気が震えるような声で鳴くと、ガラスの角が白く染め上がり、口から熱線が放出される。

 咄嗟にフランメの元へと移動し、ディアの『魔法反射』を信じてフランメの上に乗って身を伏せる。


 「何やってんだ!殺す気か!!」


 俺の叫びも虚しく、敵を薙ぎ払い終わるまで熱線は続いた。

 地面に爪を立て、熱線に耐える。

 クソがッ!ふざけるなよ!!

 地面が焦げる音に臭い。それを感じながら立ち上がった俺は服についた土を払うと、牛野郎の元へと向かった。


 「おい、今誰に向かって撃ったよ・・・」


 意識せずとも言葉が出てくる。

 今のはディアでも危なかった。もし、俺が地面から剥がされていれば俺は死んでいたし、ディアだって今の攻撃で損傷した。『魔法反射』だって無敵じゃ無いんだ。

 それにも関わらずコイツは熱線を撃った。

 レイやルーチェが二階層に姿を見せるが、構わずに牛に詰め寄る。


 「俺達はアバビムを倒すのが目的だ。何もかも破壊するために来たんじゃないぞ。そこんとこ分かってんのか?」

 「エバノ様、その位に・・・」

 「黙ってろよ。座天使だろうとぶっ殺すぞ」


 見かねたルーチェが止めに入るが、コレは俺の問題だ入ってくんな。

 レイ、お前も聞いてろよ。視線を向けて言外にそう告げる。


 フランメを大剣状に変化させ、牛の眼前へと切っ先を向けた。


 「お前の主はレイだろ?そのレイと俺は同等の関係の筈だ。何故尊重しない?何故敬わない?下等生物如きが歯向かうなよ」


 思わず後ずさりする牛の首筋に刀が当てられた。

 刀の持ち主は、ブリッツ。彼は氷の様に冷たい無表情で口を開いた。


 「レイ様に無礼を承知で言わせて頂きますが、守護者の(しつけ)が出来ていない様ですね。熟練度がマックスだからとそれを過信し、力に飲まれるから容易に広範囲攻撃に移るのです。主は私に城主として必要なモノを下さった。ソレは客観的な視点。鍛錬に励む他の守護者の姿を見れば、自分が如何に怠慢で怠惰な存在か分かるはずです」


 牛に語りかける姿は滑稽そのものだが、正しい事を言っている。城主として創った時の俺の感情がブリッツに客観的な視点を与えたのだろう。

 ブリッツの言葉はガブリエナにも当てはまる。俺はガブリエナが鍛錬している姿を見た事が無い。熟練度が貯まらなくたって、経験は力になる。ライトアーマーは実際にソレを証明してみせている。


 「旦那様、申し訳ありませんでした。私の方から言っておきます」

 「・・・ダンジョンに呑まれるなよ。次は無い」


 レイの表情はブリッツの言葉を受け止め、反映させようとする決意に満ちていた。

 そもそもが、ダンジョンマスターの命令を無視して行動するなどあってはいけないのだ。最初に創っていたゴーレムは違ったが、守護者に舐められている事に気付けばレイは成長出来る出来るだろうに。


 焼け野原になった二階層を歩いていると、城壁都市が見えてきた。重厚な門は何故か開いており、1頭の馬がコチラに向かって走ってきた。

 レイの守護者が動こうとするのを視線で抑え、馬を見据える。馬はどうやら騎手を乗せているようだ。だが、その騎手は手ぶらだった。戦闘の意思が無いのは明らかだ。


 「そこで止まれ!何用か述べろ!!」

 「次の階層へ続く場所を教える代わりに住民には手を出さないでもらいたい!」

 「了解した!」


 ルーチェに視線を向けると静かに頷いたので俺の対応で問題無い。

警戒する事があるとすれば、アバビムが守護者を操り自爆させる事だが。それもアバビム自身が手出ししないと取れるような発言をしているのだから心配しなくても良いだろう。


 城門を過ぎれば、普通に街が広がっていた。街の住人は俺達を見てはコソコソと身を隠す。

 俺とブリッツ、シールドアーマー、ルーンフェンサーは返り血が付いている。彼等には俺達が悪魔か何かに見えているに違いない。

 三階層へ行くには城壁都市の中心部にある湖に入らなければならないらしく、水を掻き分けながら進んでいく。クローフィはどうしても水を反射してしまうので、フランメに全身を覆ってもらい、半ば沈むように進む。

 素直に二階層を突破し、三階層へと到着した。水の中に入ったはずなのに扉と繋がっていたのは謎だ。念のため二階層への入口を魔法で塞ぐ事で挟撃を防ぐ。


 三階層は住宅街だった。二階層の建物もそれなりのものだったが、三階層のソレは見る限り高級物件しかないようだ。

 二階層の様に視線は感じるものの、特に襲っては来ない。


 「皆一様に肌が白いですね」

 「光源はあるみたいだが紫外線は無いんじゃないか?それともそういう風に創られているかだな」

 「主も守護者は基本的に白いですよね」

 「趣味だ黙ってろ」


 ブリッツと話しながらも警戒は解かない。未知の土地なのだからそれも当然だろう。


 交差点の少し手前を歩いていると、場違いな子供の楽しそうな声が聞こえてきた。その声はだんだんと近付いてきて、鳴りやんだ。

 声の主が俺達を発見したからだ。顔を恐怖に彩られ、禄に動けもしない。


 俺、ブリッツ、ルーチェ、フェーデが先頭を歩いているので、後方に位置するリアスにレイの守護者の監視を視線で任せ、何事も無かったかのように進み出す。

 リアスが剣の柄に手を掛けて見張っていたお陰か、レイの守護者達も興味が無いかのように通り過ぎていった。

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