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市民Aの冒険  作者: 半田付け職人
変わる世界
39/86

次の目的地

「…………というような話を聞いてくると思うよ」


 15階層でワビスケたちを見送った後、エスクロさんから16階層で管理者が話すであろう内容を聞いた。

 それは、あんまり面白い話じゃなかった。

 このダンジョンの探索はここで終わりってことらしいから。


「あんまり嬉しくない話なんですね」


「仕方ないよ。

 実際、君たちの攻略ペースはちょっと異常だからね」


「そうなんですか?

 でも、ボス以外にそれほど強い敵はいませんでしたよ」


「君たちからすればね。

 普通はそうじゃない。

 サンドウォームだって本当はなかなかの敵のはずなんだよ。

 そもそも、1階層のダイヤゴーレムだって弱くない」


 そういえば、マイコさんもダイヤゴーレムは強いって言ってた。


「そうらしいですね。

 でも、せっかく面白くなりそうだったのに」


「まあ、この先はまだ実装されていないから、どちらにしても今はここで終わりだけどね。

 ダンジョンが面白そうだと思ったのなら探索できるのはここだけじゃないから、他の所に行ってもいいかもね。

 ゴミ屋敷でアイテム探しを続けるのは、それはそれで面白いかもしれないけど戦闘や探索みたいな楽しみはないからね」


「そうなんですよね。

 ビン拾いなんかも僕としては楽しいんですけど。

 基本的に単調なんですよね。

 アイテムが見つかるかどうかも運任せな感じで」


 僕も贅沢になったものだと思った。

 ビン拾いを始めたのはそんなに前のことじゃないのに。

 ……他の所、か。


「ていうか、むしろダンジョンとしては他の方が面白いかもしれないね。

 ここは色々と問題があるし。

 ただ、ここ以外だとワビスケが行ったことがないところなんてないかもしれないね。

 だから、あんまり初見の楽しみってのはないだろうね。

 まあ、その辺はワビスケたちと相談するといいよ。

 もう少ししたら戻ってくるだろうし」


「そうですね。

 そうします」


 それからは、このダンジョンで起きたことを話した。

 僕の話をエスクロさんはすごく楽しそうに聞いていた。

 僕自身はそれほど面白いことを話しているとは思わなかったけど、楽しそうに聞いてもらえるというのは嬉しかった。

 エスクロさんは僕の行動をある程度見ていたらしいけど、見るのと体験した本人から聞くのでは全然違うって言っていた。



 しばらくして、ワビスケたちが戻ってきた。


「おう、待たせたな」


 ワビスケはちょっと不機嫌そうな顔をしていた。

 気持ちはよく分かる。


「エスクロの言ったとおり、下には管理者がいたよ。

 二人組みだった。

 ソイツらから聞いた話については帰りがてら説明するよ。

 もうすぐこのダンジョンは立ち入り禁止になるからな」


 すぐにダンジョンから出ることにした。

 その道中、ワビスケが管理者の話を説明してくれた。

 エスクロさんから聞いた内容とほぼ同じだった。



「じゃあ、僕の用事は済んだから行くよ」


 ダンジョンから出てすぐ、エスクロさんが言い出した。


「え?

 もう少し一緒にいてくれればいいのに」


「いや、それは遠慮しておくよ。

 僕は僕でやらないといけないこともあるしね。

 また必要があったら会いに来るよ。

 君たちには期待してるからがんばってね。

 あ、管理者はこれから君たちのことを多少気にしてくるだろうから、あんまり派手に動きすぎるのは控えた方がいいかもね」


「分かってるよ。

 しばらくは大人しくしとくさ」


 ワビスケが答えた。


「うん。

 ワビスケがいるから安心だね。

 じゃあね」


 エスクロさんはそのままどこかへ行ってしまった。


「まったく、偉そうなヤツだぜ」


 ワビスケはブツブツ文句を言ってたけど、最初みたいに警戒はしてないっぽい。


「で、これからなんだけどな」


 ワビスケが切り出した。


「このままゴミ屋敷で今までと同じようにアイテム探しなんかをしてもいいんだが、せっかく上限が解放されたんだから今までとは違うことをしたほうが面白いんじゃないかと思うんだよ。

 ただ、俺はエイシがやりたいことに付き合うって決めてる。

 だからエイシの希望を聞きたいんだが、どうだ?」


「え?

 僕?」


「ああ。

 どうしたい?

 具体的なことは言えないだろうから、今何をしたいと思ってるのかを教えてくれたらいいぜ」


「何をしたい、か。

 うーん。

 ……ダンジョン探索は楽しかったよ。

 怖いことも多かったけど、みんなで力を合わせて強いモンスターを倒したりするのは面白かったよ。

 だから、そういうことができたらいいかな」


「そうか。

 じゃあ、ダンジョン探索、もしくはそれに近い行動を希望ってことか。

 今のところ、今回のアップデートで他に新しいダンジョンってのは公表されてない。

 だが、ダンジョンじゃないが実はいくつか気になってる場所がある」


「気になってる場所?」


「ああ。

 新モンスターが実装された場所だ。

 ここから一番近いところだと、大森林だな。

 ゴミ屋敷から馬で1時間くらいだ。

 そこにはかなり強力なモンスターが現われるようになったらしい。

 細かい情報までは手に入れてないが、レベル100相当のプレイヤー数人が返り討ちに遭ってるって話だ。

 今の上限レベルは255だから、そのモンスターも最強クラスとは言えないかもしれないが、今の俺たちにはちょうどいい相手だと思うんだよ。

 どうだ?」


 ワビスケの目がキラキラしてる気がする。

 基本的に新しいもの好きなんだろうな。


「興味はあるんだけど、そんなに強いならちょっと怖いかもしれない。

 大丈夫なの?」


「大丈夫かどうか分からないくらいが面白いんじゃないか。

 まあ、そうは言っても問題はないと思うけどな。

 少なくとも俺が聞いた限りじゃ、無謀ってほどの強さじゃないのは確かだと思うぞ」


「じゃあ、行ってみたいかも」


「よし、決まりだ。

 次の目的地は大森林だ。

 熊、マイコ、お前たちはどうする?

 ここで別れてもいいし、一緒に来てくれてもいい」


 そういえば、元々ラプトルのイベントのために協力することになったんだよね。

 ダンジョン攻略もそのままの流れで一緒にしたけど、確かにこの後もついてきてもらわないといけないわけじゃない。

 個人的には来てほしいけど。


「そんなん、ついて行くに決まってるやん。

 こんなおもろい状況、ほっとく手はないで」

「当然だな。

 がっはっはっはっは」


 よかった。

 というか、ワビスケに言われるまで当然一緒に行くものだと勝手に思い込んでたよ。

 急に別行動って言われたら心細くて仕方ないと思う。

 ずっと一緒に行動してくれたらいいんだけど。


「今日は随分長いこと探索したからな。

 もう休もう。

 森の探索は明日からだ。

 また明日の朝、工房に行くよ」


「分かった。

 ほなまた明日」


 そこで別れて、僕とワビスケはホームに戻った。

 今日はなんだかすごく長い一日だった気がした。

 ダンジョンは楽しかった。

 ちょっとしたトラウマもできたけど、あんまり思い出さないことにする。

 それにしても、明日からも楽しくなりそうだ。

 期待に胸を膨らませながら眠りについた。





 次の日、すっきりと目が覚めた。

 なんだか体が軽い。

 とても調子がいい気がする。

 今日からの新しい冒険にすごく期待しているから、そう感じるのかもしれない。


「お、起きたのか?」


「おはよう。

 もう起きてたの?」


「おう。

 ちょっと大森林について調べてたんだよ。

 じゃあ、早速行くか」


 ワビスケのこういうところはすごいと思う。

 真面目だ。


「うん」


 僕たちは熊の工房に向かった。


 工房で全員で今日の行動を話し合う。


「今日行くところの新しいモンスターってどんなやつなの?」


「ゴリラだ」


「ゴリラ?」


「ああ。

 デカくて腕が6本あるゴリラだ。

 攻撃力がやたら高くて迂闊に近づくとやばいらしい」


「それって近接戦闘は危ないってことだよね?」


「そうだな。

 めちゃくちゃスリルがあると思うぜ」


「いや、スリルっていうかただ怖いんだけど」


「あれ?

 エイシ君ビビッてんの?

 大丈夫やって。

 ウチらがメインで相手するから。

 エイシ君は援護でええと思うよ」


「そうだぞ。

 ワシらがなんとかしてやるから、小僧は安心してスリルを楽しむといい」


「うーん」


 それって、危ないことを人に任せて自分は楽しむって意味だよね。

 そういうのは嫌なんだけどな。

 かと言って僕が前に出ても邪魔なだけなんだよなあ。

 この人たちと一緒にいるならもっと強くならないとな。

 そう、決意を新たにした。


「そんじゃ、行くか」


 僕たちは馬に乗って、ゴミ屋敷を出発した。






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