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市民Aの冒険  作者: 半田付け職人
冒険の始まり
27/86

報酬と今後の予定

「エイシ、報酬の連絡が来たぞ!」


 ワビスケが興奮している。

 今はホームを出たところだ。

 寝部屋で一眠りしようとして、気づいたら夜になっていた。

 僕もワビスケもぐっすり寝てたみたいで、予定より少し寝過ごしてしまった。

 別に何時に起きるとか決めてたわけじゃないから別にいいんだけどね。

 

 起きてすぐ熊の工房に行くことにした。

 ワビスケが連絡したら熊とマイコさんも起きたところみたいだった。

 みんな疲れてたってことだと思う。

 そりゃそうだよね。


 で、工房に向かう途中、ワビスケに報酬の通知が来たらしい。

 最初は機嫌よく読んでたんだけど、だんだん微妙な表情になった。


「なんだったの?

 やっぱりアメノムラクモ、だっけ?

 その剣だったの?」


「それもある。

 討伐内容によって変わるんだ。

 まず、クワドラプトルの討伐でもらえるのはレベルアップ、筋力アップ、敏捷アップの3点セットだ。

 クワドラプトルの討伐数に応じて数は変わる。

 俺たちもそれなりに倒してるから何個かはもらえそうだ。

 もうすぐレベル上限が開放されることを考えると、今までよりも有効なアイテムってことになるから悪くないと思うぜ。

 まあ、そんなに大量にもらえるわけじゃないから、大きな効果はないけどな。

 次に、ヤマタノオロチを討伐したプレイヤーにはアメノムラクモがもらえる。

 いつものイベントに合わせた形だな。

 もちろんいいアイテムだ。

 そして、複数のヤマタノオロチの討伐者には副賞としておまけのものがつくらしい。

 いや、ものっつーかなんつーか」


 なんだかワビスケがはっきりしない。


「僕たちはそれももらえるんだよね?

 なんなの?」


「ああ。

 なんかな、新しく実装されるダンジョンを一般公開前に探索できる権利らしい」


「何それ?」


「いや、内容的にはそのままなんだけどな。

 一定期間ダンジョンを独占できるんだろう」


「それってどういう意味があるの?

 っていうか意味あるの?」


「意味はある。

 特に俺にとってはな。

 情報屋として、そんなに簡単に自分だけ先に情報を手に入れられるってのは非常にありがたい」


「ワビスケ以外の人にとっては?」


「それがなんとも言えないとこなんだよな。

 いや、もちろんプレイヤーなんてみんな面白いもんを望んでるんだから、ダンジョンは大好物ってヤツが当然多い。

 でも、一部には慎重なヤツもいて、ある程度情報が出てこないとダンジョン探索はしないってタイプもいるんだ。

 そういう意味では今回の報酬はもらっても嬉しくないヤツも少なくないんだよ。

 普通イベントの報酬は誰にでもウケるようなのが多いんだけどな。

 確かに今回のイベントは戦闘がメインだったから、それで活躍するようなヤツはダンジョンにも積極的なのが多いとは思う。

 だから、そこまでおかしいとは言えない。

 言えないんだけど、ただ、なんか気になるんだよなあ。

 こんなの今までなかったしな。

 なーんか作為的というか、うーん」


「ふうん。

 よく分かんないけど、普通はアイテムがもらえるんだよね?」


「そうだな。

 武器だったり薬系だったり色々あるが、アイテムだ。

 今回のは、言ってみれば未公開ダンジョンのテスター権みたいなもんだよな。

 なんでそんなのが報酬になったんだろうな。

 今回その報酬をもらうのは多分俺たちだけだろうから別にいいんだけどさ。

 ま、とにかく工房で熊とマイコと今後の相談だな」


「そうだね」





「なんなんこれ?」


 工房に着くなり、マイコさんがワビスケに聞いてきた。

 これ、というのは報酬のことだ。


「いや、よく分かんねーんだって」


「あんた、情報屋の癖に最近分からんばっかりやん。

 サボってんちゃうの?」


「最近、なんかイレギュラーなことが多いんだよ」


「そういう時こそ情報屋が活躍せなあかんのやろうに」


「分かってるよ。

 ちゃんと色々調べてるって。

 なんか分かったら説明するって」


 ワビスケが完全に押されてる。


「まあ、ワビスケをいじめるんはこんくらいにしとこか」


 マイコさんはすごく満足そうな顔だ。


「で、これからどうするん?」


「俺はこの未公開ダンジョンに入るつもりだ。

 一緒に来てくれるなら心強いが、来ないなら来ないで良い。

 どうする?

 熊、マイコ」


「え、そんなん行くに決まってるやん。

 な、熊?」


「がっはっは、無論だ。

 小僧はどうするんだ?」


「僕ですか?

 僕もついて行きたいんですけど、足手まといじゃないですか?」


 僕の言葉に、三人とも黙った。

 やっぱり邪魔なのかな。

 工房に静寂が満ちる。

 ち、沈黙が怖い。

 えーと……。




「いやいやいやいや。

 この期に及んでそれかよ!」

「ほんま、どう考えたらそうなんねん!」

「がっはっはっは、そこまでだと控えめとは言えんな。

 もはやバカだバカ。

 がっはっはっはっは」


「いや、なんかひどくないですか?」


 思ってた反応と違うぞ。


「ひどいのはお前の認識の方だ。

 ちゃんとイベントでも役に立ってただろうが。

 なんで今さら足手まといって発想になるんだよ?」


「いや、三人ともすごいから僕なんかじゃついて行けないかなと思って」


「むしろ、お前が行かないなら俺のやる気は半減だよ。

 いや、半減以下だよ。

 言っただろ。

 俺はお前の行動に興味があるって。

 未公開ダンジョンにエイシを連れてくなんて面白いに決まってんだろうが。

 そんなの嫌がっても連れて行くって」


「じゃあ、なんでわざわざ行くかどうか聞いたのさ」


「いや、俺はお前には聞いてねえよ。

 熊とマイコに聞いたんだ。

 俺は最初からお前は連れてくつもりだった」


「え、そうなの?」


「そうだよ。

 大体、最初から遠慮しないさせないって言ってんだろうが。

 俺は遠慮せずにお前を連れてくつもりだったよ。

 だからお前もそんなくだらない気を使うなって」


「そうだね。

 ごめん。

 僕も行くよ」


「おう、それでいいんだ。

 大体、今はお前のナイフが一番攻撃力が高いのに足手まといも何もないことくらい分かりそうなもんだ」


「うーん、攻撃力が高いからって役に立つってわけでもないと思うけど。

 どう使うかが問題なわけで」


 ナイフが強くても使いこなせなかったら意味ないもんな。


「お、いいこと言うじゃねえか。

 それが分からないヤツが多いんだよな」


「ほんまやね。

 エイシって意外としっかりしてるんやね」


「がっはっはっは。

 さすがワシが見込んだ小僧だ」


 褒められてるんだよね。

 嬉しいかもしれない。


「で、そのダンジョンなんだけどな、アップデートと同時に実装されるらしい。

 実装後、しばらく今回の報酬をもらったヤツしか入れないようになってんだってさ」


「そんなん、他のプレイヤーから文句言われそうやけどな」


「だから、まだ公式で情報公開はしてないんだと。

 報酬に関しても俺たちだけへの通知のはずだ。

 あんまり周りに話したりしたら折角の独占をなかったことにされるかもしれないからな。

 くれぐれも他言は無用だぜ」


「そうなんか。

 気をつけなあかんな。

 そのダンジョンってどこにできるん?」


「一応、ゴミ屋敷の近くってことらしいんだけど、詳細は後日連絡ってことらしい。

 とりあえず、準備だけはしといた方がいいだろうな。

 レベル上限開放後に実装されるダンジョンなんだから、高レベルのモンスターが出てくるって思ったほうがいいだろ」


「けど準備って言ってもレベル上げなんてできひんし、やることなんてそんなないんちゃう?」


「いや、今回のことで確認できたが、ゴミ屋敷には未知のアイテムがいっぱいあるはずだ。

 エイシのポテンシャルナイフなんかがいい例だ。

 アップデートが一週間後だから、それまでにできるだけゴミ屋敷でお宝を見つける。

 俺たちにはエイシと熊のアイテムサーチャーがあるから不可能じゃないはずだ」


「お、ほな改めてどっちがアイテム見つけられるか勝負や」


「望むところだぜ。

 お前だけアイテムサーチャー使うってのはなしだぞ」


「当たり前や。

 同じ条件で勝ってこそ意味があるんや。

 アイテムサーチャーは熊が使ったらいいんやし」


「おっしゃ。

 じゃあ、明日から一週間は宝探しだ。

 エイシと熊もそれでいいか?」


「おう。

 素材探しもできるからちょうどいい」


「僕も良いよ。

 あ、話は戻るんだけど報酬ってどうやってもらえるの?」


「ん?

 もうもらってるぞ」


「え?

 いつのまに?」


「さっきだよ。

 通知が来た後に。

 ああ、エイシには分からないよな。

 後で見せてやるよ。

 金も分けるからな」


「分けるのはいつでもいいけどね。

 便利だね」


 ちょっと羨ましかった。


「まあ、その辺の分配なんかはホームに戻ってからやるか。

 さっき来たとこだけど、今日のとこはもう戻ろう。

 じゃあ、また明日な」


 それから僕たちはホームに戻って報酬を分けたり、明日以降のことを打ち合わせたりした。

 こうして、僕の初イベント挑戦は終わった。





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