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市民Aの冒険  作者: 半田付け職人
変わる世界
28/86

アップデート

 次の日から予定通りアイテム探しを始めていた。


 まあ、予想はしてたんだけどワビスケとマイコさんは全くアイテムを見つけることができなかった。

 二人は見つける気満々だったみたいだけど、そんなに簡単なことじゃないと思うんだよね。

 僕が言うと嫌味になりそうだから言葉にはしてないけど。

 あまりに見つからなくて三日目くらいからは目が怖くなったから触れないことにした。


 僕と熊はそれなりにアイテムを見つけることができた。

 最初はそこまで見つけられなかったんだけど、段々慣れて探す精度が上がったおかげだ。

 大半は回復薬だった。

 レアじゃないけど便利なものだから、いくつ見つけても邪魔になるということはなかった。

 かさばるのは事実なんだけど、大半はワビスケの大きなかばんに吸い込まれていったから、僕は見つけるだけでよかった。

 レベルアップなんかのレアアイテムもいくつか見つけた。

 上限解放したらワビスケたちが使うことになっている。

 そういうアイテムはあんまり好きじゃないらしいけど、これから未知のダンジョンに行くんだから出来ることは全部やっておいた方がいいと判断したかららしい。

 僕にはあまり関係ないから、そのあたりは三人に任せることにした。


 いくつか装備品も見つけた。

 見つけたのはそれなりに強いらしい剣と杖が一つずつと使い方が分からないものがいくつか。

 僕のかばんに入らないものはワビスケに渡した。

 ワビスケのかばんは本当によく入る。

 そういう性能のかばんらしい。


 他にもガラクタのようなのはたくさん見つけた。

 柄だけしかない剣とか錆びた斧とか半分に割れた兜とか持つところがなくなった盾とか。

 そういうのは大体は無視した。

 大体、というのは柄だけになった剣は拾ったからだ。

 なんかデザインがかっこよかったんだ。

 ワビスケには笑われたけど、別にいいんだ。

 元々ダメ元での宝探しなんだし、面白そうなものが見つかったらそれでいいんだから。

 僕はそれを見つけてからずっと握って振り回している。

 マイコさんが剣の使い方を教えてくれて、ちょっとした特訓みたいになっているんだ。

 もうすぐダンジョンに入るつもりだからちょうどいいと思う。


「ちゃうちゃう。

 そんなんじゃ切れるもんも切れへんて。

 こうや、こう」


「こうですか?」


「ちゃうって。

 こうやってこうや。

 こうじゃなくて、こう」


 ちょうどいいのは確かだし本当にありがたいんだけど、残念ながら全然分からない。

 マイコさんは感覚で戦うタイプなんだと思う。

 全く説明になってない。


「うーん」


「マイコ、お前の説明じゃ分からねえよ。

 お前は教えんの下手糞なんだって。

 っていうか、お前本当に剣の使い方なんて分かんのかよ」


「そんなん分かるわ。

 ウチ、一時期はずっと剣使ってたんやから」


「それにしては教え方がアバウトなんだよな。

 よし、俺が教えてやるよ」

「あかん。

 ウチが教えるって」


 多分、二人ともあまりにもアイテムが見つからなくて、飽きてきてるんだと思う。

 僕で暇潰し、というかストレス発散をしてるっぽい。

 僕は目で熊に助けを求めたけど、視線を逸らされた。

 ひどい。

 見捨てられた。

 確かにこの状態のワビスケとマイコさんに絡みたくない気持ちは分かるんだけど。


 そんな風にワイワイ騒ぎながら僕たちは宝探し?を続けた。



 そうして一週間。

 アップデートの日を迎えた。


「ついに来たな。

 待ちくたびれたぜ」

「そやな、準備は万端や」


 二人は結局アイテムを見つけられなかった。

 というか、途中からはほとんど探しもしてなかった。

 特訓の名目で僕をしごきまくってただけだ。

 しごかれた僕も最後の方はアイテムは見つけられなかった。

 全然集中できなかったんだよね。


「準備万端じゃないよ。

 全然アイテム探しできなかったよ」


 非難の目を向けながら抗議する。


「いいだろ。

 そんな大したアイテムすぐには見つからねえって。

 それよりエイシの特訓ができた方がでかいからいいんだよ」

「そやそや。

 高レベルダンジョンやねんからエイシ君の特訓は必須や。

 アイテムは熊がずっと探してたし、エイシ君かて特訓前にめっちゃ見つけたやん。

 ゴミ屋敷で一週間であんなに見つけられたら上出来やって」


 二人の態度が白々しい。

 当初の予定とズレた行動をしていた自覚はあるんだろうな。

 まあ、僕も特訓できてありがたかったから文句はないんだけどね。

 冗談のやり取りをしてるだけだ。

 僕にもそういうのが少し分かるようになってきた。


「ま、とにかくもうすぐだ。

 アップデートが実施されたら、その通知と一緒に詳細が送られてくる。

 それを確認したら行動開始だ」


「楽しみやわ。

 大規模アップデートなんて久しぶりやからな」


「上限が解放されるだけじゃないの?」


「ああ、メインはそれだろうが、色々変更はあるはずだ。

 それも含めて楽しみなんだよな。

 ダンジョンでその辺も試したいんだよ」


「へえ。

 面白そうだね」


「って言ってたら来た来た。

 えーと、ちょっと待てよ……。

 ……レベル上限解放、各種ステータス上限解放、固有スキル実装?

 なんだこりゃ。

 新モンスター、新アイテムの実装。

 後日、新ダンジョンの実装。

 めぼしいのはこんなもんか」


「大体は分かってんけど、固有スキルってなんや?」


「えーと、各プレイヤーのステータスに合わせてスキルを一つ身につけられるようになります?

 …………。

 って説明こんだけかよ!

 相変わらずいい加減だな。

 自分で調べろってことかよ。

 いつものことだけどさ。

 まあ、面白そうなシステムだよな。

 よくあるっちゃよくあるんだけど」


「他のゲームには大抵あるしな。

 とりあえず使えるようにならんとどんなんか分からんから、今はどうしようもないな」


「そうだな。

 いつになるか分かんねえけど楽しみだぜ。

 お、もう一通通知が来たぞ。

 これは俺たち専用、というかこの間の報酬分だな。

 新ダンジョンに関して、か。

 場所はゴミ屋敷の地下。

 ってことは街の下にダンジョンがあるんだな。

 街外れに入り口があって、そこから入れるらしい。

 しばらくは俺たちだけが通れるようになってんだと。

 すぐ行けるのは便利で良いな」


「そやな。

 っていうか本当はもっと色々細かいこと調べた方がいいのかもしれへんけど、ダンジョンがめっちゃ気になるわ。

 とりあえず、今日はダンジョン行ってみいひん?」


「おう、俺もだ。

 正直、気になってしょうがない」


 二人ともめちゃくちゃソワソワしてる。


「行く前にレベルアップを使うんでしょ?」


「ああ、そうだな。

 でも本当にいいのか?

 イベントの報酬分はいいとして、他のはエイシが見つけたやつだぞ。

 効くかどうかはさておき、エイシが使ってみてもいいと思うんだけど」


「いいよ。

 僕、多分レベルとか関係ないし。

 早く使ってダンジョン行こうよ。

 僕も早く行ってみたいし」


「そうだな。

 早速使うか」


 レベルアップは全部で9個ある。

 だからみんな三つずつ使える。


 ワビスケたちがレベルアップの液体を飲んだ。

 見た目に変化はない。


「どう?

 上がった?」


「おう。

 上がった上がった。

 レベル103だ。

 本当に上限は解放されてるんだな。

 感動の瞬間だぜ」


 あんまり感動しているようには見えないけどね。

 喜んではいるみたいだ。

 なによりだ。


「ほな行こか」

「おう」


 レベルが上がったことを確認してから、僕たちはすぐに新しいダンジョンに向かった。



 その入り口は本当に街外れにあった。

 ゴミ山の脇に地下への入り口ができている。


「こんなのあったっけ?」


「どうだろうな。

 多分、今回作ったんだと思うが」


 入り口にはイベントの時と同じように透明の幕があった。


「あ、またこの幕だ」


「なんだ、エイシは知ってるのか?」


「うん。

 この間のイベントが終わった時もあったよ。

 立ち入り禁止エリアだよね」


「ああ。

 今回は俺たちだけは通れるようになっているんだろうけどな」


「ていうか、これってプレイヤーじゃなかったら通れるんだよね?

 だから僕は通れるわけだし」


「そうだな。

 その辺の事情もあるから今回のダンジョンはゴミ屋敷に作られたのかもしれないな。

 ゴミ屋敷なら間違ってプレイヤー以外のキャラが入ることはないだろうしな。

 なんせ、プレイヤー以外のキャラなんて数えるほどしかいないからな」


「ふうん。

 製作者の人も色々考えてるんだね」


「そりゃ何も考えてなかったら世界なんて作れねえよ。

 まあ、色々突っ込みどころはあるんだけどさ」


「もうええから、はよ入ろうや!

 こんなとこでしゃべらんかっていいやん。

 中入ってもしゃべるくらいできるって!」


 マイコさんは待ちきれないみたいだ。


「そうだな、入るか。

 確かにここで話してても面白くないもんな」

「だね」


 僕たちはダンジョンに入った。




 入り口からすぐのところは斜め下方向へ下る洞窟みたいな感じになっている。

 なんか雰囲気がある。

 ダンジョンっぽい。

 僕の初ダンジョン攻略だ。

 ちょっとドキドキしている。


「僕は始めてダンジョンに入るんだけどさ」


「おう」


「具体的に攻略って何するの?」


「そうだなあ。

 お宝を探したり、トラップつぶしたり、うろついたり、ボスを倒したりだな」


「へえ、ボスとかいるんだ」


「そやで。

 ダンジョンのボスって言ったらな、かなり強いヤツが多いんや。

 それをみんなで協力して倒すってのがダンジョン攻略の醍醐味や」


「そうなんだ」


「いや、それも面白さの一つではあるが、本当の醍醐味は他にある」


 ここまで静かだった熊が話しに入ってきた。


「え?

 何なの?」


「ダンジョンってのはな、外に比べて特殊な素材が手に入ることが多いんだ。

 だから、ダンジョンに入る一番の目的は素材採取だ」

「いーや、ボス討伐や」

「素材採取だ」


 珍しい。

 熊がマイコさん相手に譲らない。

 よっぽど譲れないことなのかな。


「まあ、色々楽しみはあるってことなんだね」


「そういうことだ。

 エイシはエイシで楽しめばいいってことだぜ」


「そうだね。

 そうするよ」


「っと、来たで」


 マイコさんが前の方を見ながら言った。


「モンスター?」


「そや。

 これがどんなモンスターかによって、このダンジョンがどういうとこかちょっと分かるはずや。

 さて、どんなやつが来るんやろな」


 そして、角の先からソイツが姿を現した。


「岩?」


 岩でできた巨人みたいだった。

 大きさは3mくらい。

 かなり大きい。

 ピカピカ光っている。


「ゴーレムだな。

 しかもダイヤゴーレムじゃないか。

 やはりダンジョンは素材採取に最適な場所だ。

 がっはっは」


 熊はそのモンスターを見て上機嫌になっている。


「いーや、やっぱり討伐や。

 こいつかって普通のダンジョンやったらボスになりうるやつやで。

 このダンジョンのモンスターのレベルが高いのは確定やな」


 マイコさんは譲れないらしい。


「そんなに強いの?」


「強いで。

 いや、強いって言うか、めっちゃ硬いねん。

 生半可な攻撃やったらダメージが全然通らへんからな」


「そんなのどうやって倒すの?」


「方法は色々あるんやけどな。

 今のウチらのメンバーで向いてるんは……」


「向いてるのは?」


「ゴリ押しや!」


 マイコさんがゴーレムに突っ込んで行った。





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