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第3話
第2部
第3話
風が通る。
遅れて。
崩れた構造体の中層。
ギアが歩く。
一人だ。
静かだった空間が揺れる。
敵が現れる。
二体。
速い。
ギアは止まらない。
踏み込む。
一体目へ入る。
浅い。
すぐ引く。
以前なら。
ここで。
横から刃が入っていた。
ギアの動きが、わずかに止まる。
空いた空間を見る。
誰もいない。
敵が来る。
反応が遅れる。
ギアが弾く。
舌打ち。
「……違う」
低く言う。
距離を取る。
呼吸を整える。
敵が左右に開く。
ギアが動く。
半歩、遅らせる。
無意識だった。
自分でも気づかないまま。
ズレが生まれる。
敵の軌道が外れる。
ギアが入る。
斬る。
一体、崩れる。
その瞬間。
身体が“次”を待つ。
来るはずの動き。
重なるはずの刃。
だが。
来ない。
沈黙。
空白だけが残る。
敵が踏み込む。
ギアの反応が遅れる。
肩を掠める。
血が落ちる。
ギアが止まる。
視線だけが横へ向く。
誰もいない。
当然だ。
「……やめろ」
小さく言う。
返事はない。
風だけが通る。
遅れて。
敵が来る。
ギアは今度は待たない。
踏み込む。
強引に斬る。
崩れる。
静止。
呼吸だけが残る。
ギアは動かない。
しばらく。
何も言わない。
そして。
わずかに目を閉じる。
思い出す。
揃わなかった動き。
遅れて重なる刃。
沈黙。
ギアが目を開く。
「……残りすぎだ」
短く言う。
風が通る。
遅れて。
今度は。
ほんの少しだけ。
隣に気配があった。




