第8話 一旦中断! これってルート入ってない?
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「な、なるほど……」
俺はまず、聖女様とのコミュニケーションの一部を勇者様にお話しした。どのようにコミュニケーションをとったかをもとに、二人で今の状態に陥った原因を明らかにしようとしていたからだ。
勇者様はどうやら困惑というか、悩んでいるというか、何とも言えない顔をしていて、独り言を話していた。
「これはセーフなのかな…? いや、アウトな気がするなぁ…。距離感近すぎない? だって、序盤からそんなに胸の内を明かすなんて、もうルートに入ってるんじゃないの? 気付かなかった僕もダメだけど……」
「るーと? なんでしょうか、それは?」
「い、いや、聞かなかったことにして! きーくん……。きーくんはさ、別に、せーちゃんが可愛くて、近づきたいからそんな風に言ったんじゃないんだよね? なんというか…、自然に出ちゃったんだよね?」
「はい。その認識で合ってます。下心があれば聖女様に気づかれます。それを一番恐れているのが聖女様です。その時、その心があってはならない」
「そっかぁ……。自然に出ちゃったんだからしょうがないかぁ……。きーくん、優しいもんね」
「優しいかどうかはわかりませんが…。あの方を守りたいという気持ちがあったのは事実です。」
「そうかぁ……。僕にも言ってほしかったなぁ。守るって、理想の騎士になるって」
「え、何か言いました?」
「……今のは、いつもの冗談?」
「すみません、冗談です。聞こえてました。……もしかして、言う空気ではありませんでした?」
「うん、そうだね。空気を読もうね、きーくん。ちょっと僕キレちゃいそうだよ」
ニコニコとしていらっしゃるが、明らかに怒りのオーラが勇者様の周りに出ていた。……中々、その空気を読むという行為はどうも苦手だ。少し落ち込んでいらっしゃるように見えたため、どうにか励まそうと冗句を言ったつもりだが、どうやら失敗したようだ。
「勇者様は、俺などより戦闘力があり、勇敢な方です。俺程度に守られるなど有り得ないと思い、そのような発言をしてしまいました。気に障ったようでしたら申し訳ありません……」
「そうだけど、そうだけどさぁ……」
勇者様の力は強大だ。
『勇者様』の名を冠する方は、パーティメンバーすべての能力を凌駕する。俺の力も、防御も、この方に勝てるとは思えないほどに。俺だけではない。聖女様の力さえ凌駕するのだ。
以前、パーティメンバー同士の力を確かめ合うために、安全を確保上で、お互い技をかけあった。
聖女様の神聖魔法の一つである『拘束』だが、本気を出せば俺は抜け出すことができたが、勇者様はいとも簡単に技を解除なさった。
それほどまでに勇者様の力は絶大なのだ。
この方だけで完結するほど完全無欠な存在。だから、冗談だと思ったのだ。このパーティの柱である勇者様が俺程度を気にかけてくださるなど。
聖女様は、神聖魔法の力に特化しているが、戦闘力があまりないので俺が守る必要があるが…、まさか勇者様が……。
しかし、勇者様も落ち込んでいる。俺のせいだ。
……そうだな。
「ですが……、勇者様もお守りしたいというのは本心です。」
「え?」
「『騎士』として、パーティメンバーを守る義務があります。だが、それ以前にこれまでお世話になっている勇者様をお守りしたいという気持ちが強い。烏滸がましいですが、それでも……。聖女様だけではない、勇者様の盾は、私です。恩人のあなたに、あの時拾っていただいた恩、そしてこれまでの恩、そのすべてをお返しさせていただくまで、お守りさせていただきたい。それが一生かかっても、あなたに報いたい。どうかこれからもお傍にいることをお許しください。寛大なる勇者様」
「……うん。はい。不束者ですが、今後とも末永くお願いいたします」
本当に男性かこの方は? この恥ずかしがっている表情など、女性にしか見えないぞ? 勇者様は俺の胸に飛び込んでくる。 甘い香りがした。何か雰囲気がおかしくないか? 昔街中で見た、逢引中の男女のような雰囲気だぞ?
おかしな雰囲気に気づいたのか、俺の胸で何やら何度も息をお吸いになっていた勇者様は、即座に俺から離れた。
「ご、ごめんね! 今はそういう雰囲気じゃないよね? そういう話じゃないよね? 結婚もまだだよね? 式場も決まってないし、日取りも決まっていないし、その前に魔王倒さないとだし。それに子供も何人がいいか話し合ってないし。どっちの家のお墓に二人は入ろうかも話してないしっ」
「あの、何のお話をなされているのでしょうか?」
「な、なんでもないよ! きーくんの鈍感! あほ!」
「はい。申し訳ありません。俺がすべて悪いです。」
「い、いや、聞き分けがよすぎるよ……?」
「尊敬する勇者様に間違いなどあろうはずが。間違いがあるとしたら俺です。」
「……うぅ。そのまなざしが心苦しいぃ…。……ん? いやいやいや、話がそれていたよっ! 元の話に戻ろう! その前に、きーくんはもっと僕に優しくすること! いい? 僕、結構寂しがり屋だから、かまってくれないと寂しくて死んじゃうよ? さっきの話のせーちゃんばっかり優遇すると、拗ねちゃうよ?」
「はい」
はい、というしかなかった空気なのは俺でもわかった。俺の肩に手を勇者様はかけているが、鎧がミシミシいっているのは気のせいだろうか?
「うん。ありがとう♪ じゃあ話を戻すけど……。まだ、そのきーくんの話が根本的な原因じゃないって思うんだ。まだ始まりだけで、そこまでせーちゃんはきーくんのこと好きになっていないと思うし。恋愛的な意味でだよ? 人間的には好きになったかもしれないけど」
「俺などに好意を抱いていただく……分不相応でありますし、そのように期待するなど、烏滸がましいと」
「きーくん? 自分を卑下するのはやめようね。悪い癖だよ? ……話を戻すね。だから、そのあとの行動に、何か原因があると思うんだ。もうちょっと話してもらっていいかな?」
「はい。……では、その後の話を」
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