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第11話 はい、私も大好きです!

………

……



目を覚ますと、そこはあの伯爵の屋敷の中の客室だった。天井を見るとわかった。ベッドで寝かされていたことのだ。

体に痛みが出るのを我慢して、周りを見る。聖女様が横の椅子で座っていて、俺を見ながら、そして涙を流していた。


「騎士様! なぜ、何故、こんな無茶をしたのですか!」


「……よかった。ご病気もよくなられたのですね」


「私などの状態なんてどうでもいいのです! それより、一人でドラゴンに立ち向かうなど……」


「あの後、どうなりました……?」


「……勇者様が退けました。勇者様は、騎士様がドラゴンに傷を与え、そして弱らせたおかげだとおっしゃってました。だから、ドラゴンをこの街から退かせることができたと……。それのおかげで、お医者様も……。」


「そうですか。それはよかった。しかし、……情けないですね俺は。ご迷惑ばかりをおかけして申し訳ありません……」


「違います! あなたは……、あなたは! あなたは何故、何故ドラゴンに一人でっ」


聖女様は泣きながら俺に問いをかけた。

なぜだろう、なぜ俺などに涙を流してくださるのだろう。

そして、なぜだろう? 聖女様は、忘れていらっしゃるのだろうか?

だから、言おう。この言葉を。


「……俺は騎士です。」


「え……?」


「恥ずかしながら、一瞬だけ逃げようと思いましたが……騎士ともあろうものが。……ですが、この剣で思い出すことができた。あなたに誓いを立てた剣……。……俺は守りたかった。力なきものを、そして……あなたを。」


「……っ」


「戦っているときも、あなたのお顔が頭に浮かびました。あなたの泣いている顔、そして笑顔が。そんなあなたに背を向け、逃げることなどできようもはずがない。だから、立ち向かいました。あなたを、守りたかった。その、あなたの笑顔をもう一度見たかった。元気で、誰よりも優しく、そして美しい、あなたの微笑みが……。お礼を言わせてください、聖女様。あなたのおかげで、俺は少しでも『騎士』に近づけたと思うのです」


「……うぅ」


聖女様の瞳に涙が溜まる。俺は泣いてほしくなくて、頭の中をフル回転させた。そして、一つ思い出した。


「聖女様、俺の鎧のしたに着用していた服のポケットをみていただけますか?」


「は、はい……。……これは?」


つぶれた華が一輪。


「ああ、申し訳ありません。ドラゴンに挑む前に薬草をあたりで探していた時がありました。結局見つからなかったのですが、……ですが、病にふせているあなたを元気づけたいと思い、この華を見つけ、つんできました……。申し訳ありません、この華を守ることができなかった。……ですが、この華があったからこそ、あなたを戦闘中に思うことができたのかもしれません。あなたがこの華の代わりに守ってくれたのかもしれません。……よかったら受け取ってくださいますか? 不格好にはなりましたが、あなたに似合う美しい華だと思いましたから」


聖女様が涙が決壊する。


「ああ、だから、泣かないでください。あなたに涙など似合わない。……ああ、そうだ。一つ褒美をください」


「……はい、はいっ。ぐすっ。なんでしょうか?」


「笑顔を見せてください。あなたの、綺麗な笑顔を。俺は、そのために戦った。俺は、その笑顔が、好きなのです。この華はつぶれてはしまいましたが、あなたは、このつぶれる前の華のように、可憐な笑みを浮かべていらっしゃった。だから、それをもう一度……」


聖女様は、驚かれた様子を見せた。だが、そのあと、俺の手を握りしめ、そして満面の笑みを俺に向けてくれた。


「……はいっ! 私も、大好きです! 私の大切な騎士様っ!」


聖女様が俺に抱き着いてきて、痛みに苦笑いしていたのがその時に記憶だった。



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