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「惰性だと思う」

「何言っての?」


生まれ変わっても結婚しようね。

とは幼い頃の無邪気な約束である。

原っぱに座り込んで、白詰草の花で冠と指輪を用意して、子供ながらの可愛らしい口約束で、ゆびきりげんまんをした。

幼馴染の男の子に「結婚しよう」と言われて「うん」と答えて、「生まれ変わっても絶対結婚しようね」と言われて「うん」と答えた。

なるほど、可愛い可愛い思い出じゃないか。

このまま二人は小中高大学と同じ場所へ行き、男の猛烈なアピールに結局折れた形で付き合ったと思えばスピード婚に持ち込まれ、気が付けばずっとずっと隣にいた。

彼が居ない人生は考えられないくらい、当たり前に傍に居た。

勿論折れた形になったとは言えちゃんと好きだったし愛していると胸を張って言えた。

男も、言葉も態度も何もかも惜しまずに、歳を取ろうが自由に動けなくなろうがそれこそ死ぬ間際までずっとずっと誠実に愛してくれた。

ちょっとこちらが先に死に掛けて心中と変わらないような事をされたがまぁ良い。常々「お前が死んだら俺もすぐ死ぬ、無理、てか一緒に死んで、いやでも俺が知らないお前が居るのも嫌だしちゃんと看取りたいから看取ってすぐ死ぬ」と言っていたので諦めの境地であったから良い。


がしかし。


「流石に飽きてきた」

「だから何が」


早朝寝起きからくす玉を引いてベッドで飛び跳ねている男に視線をやる。垂れ幕には筆で『祝・結婚三百年記念!』と書かれていた。

因みに結婚が三百年なので結婚以外の様々を含めると二人の付き合いはもっと長い。


無事往生した筈の私達は、記憶を持ったまま生まれ変わっていた。最初こそ混乱していたが、考えても仕方がないのでそのまま第二の人生を歩む事にしてしばらく。近所に越してきたのは、若い夫婦と同い年の少年だった。

見た目も声も違うけれど、目があった瞬間に『彼だ』と分かったのだから、相手だって即座に気付いたのだろう。初対面で抱きついてきていきなり「結婚しよう!」とプロポーズしてきたので、母親達は吃驚していた(その後すぐ若いわねぇなんて微笑んでいたが)。

紆余曲折あり、宣言通り生まれ変わってもまた結婚しようと言う約束を貫いた彼に深い愛を感じちょっとじんわり幸せに思ったのはここだけの話。


二度あることは三度ある、とまたまた生まれ変わった三回目。流石に他の人とももう少しばかり関わってみたいと思うのはおかしい事ではない筈だ。

今までの人生のほぼほぼ全て、彼しか居ない。

別に嫌だと思いはしないが、彼が居ない時にお喋りできるような相手が欲しい。

がしかし、運の悪い事に生まれ変わった世界は前世から見ると異世界ファンタジーと区分していい不思議な世界で、閉鎖的な貴族の階級に婚約者となった男が彼で「あ、これ人付き合いとか無理だな」と何となく察してしまった。結局ほぼ屋敷に軟禁状態で暮らしたが、不自由らしい不自由はなかった。


それからも様々な世界に生まれ変わっては、彼と出逢い、一緒になる。

身分差があったり血縁関係であったりと婚姻が出来ない世界もあったが、それはそれ、婚姻せずに当たり前のようにずっと一緒に居たので現状は変わりない。


がしかし。


そろそろ、そろそろ他人と関わってみたい。

何回生まれ変わったか分からないが、その内何人と友達関係を結べたか。恐らく両手の指で足りる、もしかしたら片手で済むかも知れないどころか、当時はともかく現に今名前すら思い出せないので居ないと言っても過言ではない。

何も沢山友達を作ってどんちゃん騒ぎしたいわけではなく、一人二人親友と呼べるような存在と出会って、恋人とは出来ない、友達同士でしか味わえない、色んな体験をしたいのだ。膨大な時間の中呆れるほどに読んだ漫画や小説で見る友情なり青春なりを、一回自分でも体験してみたい。

ダブルベッドの上で正座をすると、それを見た彼も向き合って正座をする。


「きぃくん、ちゃんと聞いてください」

「や、やだやだ。なんか嫌な流れだから聞きたくない!」

「聞いてくれないと夕食は一人で食べます」

「ちゃんと聞きます」


ぴし、と背筋を伸ばした彼の事を愛しいと思うし、ちゃんと好きだ。

でもその分、彼が居ない時間を上手に生きられない自分に飽きがきた。


「いい加減、倦怠期だと思います」

「倦怠期」

「流石に同じ事の繰り返しは飽きてこないでしょうか」

「ないです」

「私は若干飽きました」

「しぃちゃん!? 俺の事嫌いになった!? 今日記念日だからレストランもホテルも予約してあんのに!?」

「きぃくんは好きだし一緒に居たいけど流石に飽きてきた」

「どういう事!? 全然分からない……、俺は好きだからずっと一緒に居たい…………」


頭を抱えて真剣に悩み出す彼を無視して起き上がり、朝食を作りにキッチンへと向かう。

目玉焼きにベーコン、付け合わせに作り置きの人参のグラッセ、そしてトースト。簡単な朝食を用意しおえると、漸く彼が部屋から出て来た。

無言のまま向かい合わせに座り、手を合わせていただきます。

普段は「美味しい世界一美味いしぃちゃんの手料理を食べられる俺は一番幸せ」とはしゃぎながら食べる彼は、本日はずっと無言である。

流石に無神経だっただろうか、でもいつもこんなトーンで喋っているしな、と様子を伺っていると、突然ガタン! とテーブルを叩いて立ち上がった。


「分からないけど分かった」

「きぃくん?」

「今日も世界一美味いしぃちゃんの手料理が食べられたのに俺は全然幸せじゃないけど!」

「う、うん。なんかごめん……」

「このままじゃしぃちゃんは倦怠期で俺と一緒に居てくれないんだろ!? でも俺達は神に誓い合った夫婦なんだから今世は夫婦でいいと思います!」

「? それは、そうだね、手続きも面倒臭いし」

「クール過ぎるしぃちゃんも超可愛いね……」


何の話だろう、と首を傾げていると彼は落ち込んで椅子に座ってから、もう一度ダン! とテーブルを叩いた。


「なので、来世から縁を切ろうと思います」


そう言い切った彼の目は、暗く澱んでいた。





あの日、澱んでいた彼の瞳は一瞬で元に戻った。

そしてまるで何事もなかったかのように、「今日はレストランにホテル、ケーキも頼んでいるから早く準備!」といつも通りに私を引っ張って予約していたレストランへと向かった。

それ以降全くあの日の話題は上がらず、こちらとしても気まずくなるので幸いにとそのままにして、結局百歳までお互いに変わらず過ごした。

共に入院した病院のベッドでも離れたくないと駄々をこねたきぃくんの為に看護師さん達が、手を繋いで眠れるようにしてくれたのは恥ずかしい思い出である。私が死ぬ直前、彼が急に起き上がって瞳孔を開いたままただ無言でこちらを見下ろしていたのは普通に怖かった。


そうして再び私は生まれ変わった。

名前は津々寺沈花(つつじしずか)、何の因果か、初めての生と同じ名前であった。


現在十六歳、華の高校二年生。

高校生活に一々胸を高鳴らせる程の若さはないけれど、この年まで隣に彼が居ないのは初めての出来事だ。

一年生の時は、中学校が同じだった子とそれなりに話したし、同じ委員会の子とお喋り出来るようになった。これがアオハルかぁ、と彼の居ない青春をじっくり味わう。

楽しいとは感じるけれど、ふとした拍子に彼が居たらと考えてしまうのは仕方がない事だ。

だって好きなわけだし。


今日は夏休み明けの二学期初日。

文化祭に体育祭、音楽祭に修学旅行とイベントが目白押し。ラブラブカップルや初々しい両片思いの二人の為に周りがそれとなく御膳立てしてくれるイベント事では基本的に彼と二人きりだったので、そうでないのも新鮮である。


「おはよう依ちゃん」

「おはよー沈花ちゃん」


教室に入ると、一番仲良しの千種依(ちぐさより)ちゃんがこちらに手を振って挨拶してくれた。

後ろの席に座ると、彼女はこちらを見て背もたれから身を乗り出してくる。


「ねぇ聞いた? 隣のクラスに転校生くるらしいよ」

「そうなの?」

「イケメンが職員室に居て、話聞くに転校生らしい! って騒いでた」

「へぇ、転入早々修学旅行は可哀想だね」


出会って二ヶ月の人達と旅行か、自分なら無理だな。と思いながら準備をする。

依ちゃんもあんまり興味はなさそうで、恐らく今日あるであろう席替えの話に移った。

それから始業式と課題の提出、席替えで今日は終わり。帰ろうと廊下に出たら、何やら隣のクラス前に人集りが出来ていた。

噂の転校生かな、と横目で人混みを見て、思わず足を止めてしまう。


人の中心に居た男と目が合った。


彼だ。


久々に見付けた彼に呆然としていると、すっと目が逸された。

周りを沢山の人に囲まれて女の子に黄色い声を上げられている彼は、間違いなく幼馴染で、数百年も一緒であった彼の筈なのに、全く知らない人に見えた。

「藍館くん」と呼ばれた彼から漸く視線を離して下駄箱へと向かう。


幼少期からずっとずっと、私を見付ければ笑顔を見せて飛び付いてきた彼に無視をされるというのはかなり堪えた。

来世から縁を切る、と彼はそう言っていた。


「……きぃくん」


なるほど、私は相当に彼を怒らせたらしい。

と今漸く気が付いた。



藍館桔梗(あいだてききょう)

隣のクラスの転校生は、二ヶ月でそれはそれはすぐクラスに馴染んだようだ。周りには必ず誰か居て、皆と一緒に笑って、すっかりクラスの人気者らしい。

今までの彼は私以外には無表情だし、私と以外基本喋らないし、それでも見目は良いから遠目からこそこそ噂されて煩わしそうに舌打ちするような人だった。


あの日目が合ったきり、彼とは一切顔を合わせていない。廊下ですれ違う事はあっても彼は誰かと一緒に居るし、こちらを見る事もない。

完全に興味の無い態度に、もしかしたら記憶が無いのかもしれないとすら勘繰ってしまうレベルで見た事のない姿だ。彼に無視されるのなんて本当に数百年で初めてで、まだ私にも初めての出来事があったのかと、最初は堪えたものの今は感動すら覚える。

あまりにも新鮮なきぃくんをジロジロと凝視してしまい、彼を狙う女の子達から牽制されたのは面白かった。


「沈花ちゃん帰るんじゃないの?」

「今日委員会変わったの。依ちゃんはデート?」

「そうそう。急で大変だね……、頑張って!」

「じゃあね」


最近年上の彼氏が出来た依ちゃんを見送り教室を出る。

今日は早めに帰ろうと思ったのだが、同じ委員の男の子が何やら部活の方の呼び出しを食らったらしく、困っていたので変わった。図書委員のする事なんて殆どないので、図書準備室で本を整理しながら時間を潰す。どうせ基本的に人も来ないし、受付で本でも読もうと思っていると、扉の開く音がした。

貸出だろうか、と顔を出そうとして足を止める。


「藍館くん、図書室なんかで何するの〜?」

「図書室なら人居ないかと思って」

「やだえっち〜」


彼と女の子の声。

入り口から奥の方へと向かう音がするから、何となく外に出られなくなってしまった。間違いなく本を読みにきたわけでも、勉強をしにきたわけでもなさそうな雰囲気だし。

準備室の扉にもたれて座り込み、何となく彼との思い出を振り返る。


沢山の生の中、二人一緒に色んな事をした。大抵の初めての経験は全て彼とのものだし、基本彼以外との思い出はない。本当にずっと最初から長い間彼と共に居たのだな、と改めて思う。


別に嫌いなわけじゃない、ちゃんと好きな相手だ。

ただちょっと友達を作りたかっただけなのに、今までの縁を切るだなんてちょっと薄情過ぎやしないか。

あんなに愛していると告げてきた彼は、私の無神経な一言が悪いとは言えあっさり私を手放せるらしい。


あ、なんだかムカついてきた。


何故私だけモヤモヤしなくてはならないのか。

苛立ちからどうでもよくなり扉を開ける。

丁度奥から俯く女の子の手を引く彼が出て来て目が合ったので無視して受付に座った。


「え、あ、あの、」


なんだか彼が吃っているみたいだが知らん。

顔を上げずに広げた本に視線をやる。


「ここ図書室なので、痴話喧嘩なら外でお願いします」

「えっ、痴話喧嘩、いや違、あ、」

「そろそろ締めるので退出お願いします」

「あ、まっ、」


女の子を廊下に出して戻ってこようとした彼の目の前で扉を閉めて鍵を掛けてやった。

ドンドンドン! とノックの音がしたが無視するとなんだかスッキリした。

今まで全くこちらを見なかったくせに今こんなに焦っている理由は分からないが、やはり彼にも記憶はあるらしい。ないなら八つ当たりも良いところだがあるなら心配要らない、こちらも自業自得だがあちらも自業自得なのである。


暫く激しいノックが聞こえてきたが無視をして受付周りを整理整頓していれば音が消えた。

少し早いけれどどうせ誰も来ない、と片付けを終えて図書室を出た。誰も居ない廊下は夕焼けで真っ赤に染まっている。

しっかり施錠をしたのを確認して帰ろう、と振り返った瞬間影が差した。


目の前には一切の感情を削ぎ落とした能面のような顔の男。


「沈花」


低く暗い声で名を呼ばれる。

腕が伸びてきて肩を掴まれ、そのまま施錠した扉へと押さえつけられる。肩を押さえ込んだ手はギリギリと食い込むくらいに力が強く、思わず眉を顰めた。


「沈花、沈花沈花沈花。やっと触れた、沈花、はは、相変わらずちっさいね、可愛い、好き、しぃちゃん。沈花。柔らかいからすぐ潰れちゃいそ、可愛い、食べちゃいたい、齧り付いていい? 沢山沢山噛んで味わってあげる、しぃちゃん」


淡々と紡がれる言葉に、肩を掴んでいた彼の腕を掴んだ。

いつも通り、前世までと変わらない彼の姿だ。

それなのに他の人間を侍らせていたのはやっぱりムカつく。


「桔梗」

「なぁに」

「さっき痴話喧嘩してた人に触られたくない」


ふい、と不機嫌をアピールすると、彼は目に見えて青褪めて慌てふためきはじめた。肩から手を離して宥めるように頭を撫でようとして、触れないと腕を引っ込め、抱きしめようと腕を伸ばして、触らせてもらえないと腕を引っ込める。


「違う、違う違う! 違うんだよしぃちゃん、あの女とは何もない、牽制してただけだよ、そもそもしぃちゃんが仕事の日ならあんな場所でやらない、てかしぃちゃん今日委員会なかったでしょ? なんで今日居たの。今日は沈花のクラスの男でしょ、なんで変わったの、沈花脅されてる? 脅されてるの? 大丈夫だよ、俺が助けてあげるから!」


なんて視線はまっすぐに私を見て言いながらも腕はずっとうろうろしている。

何故委員会日を把握されているのかは今更なので兎も角、誤解を解かなければクラスメイトが危険なので彷徨わせている手を掴んでおろした。


「今日は困ってたから私から変わったの。脅されてないから」

「そっか、良かった。沈花、ね、ね、触っていい? ぎゅってしていい? 良い?」


ぎゅうう、と掴んだ手を握り締められる。

意地でも離さない、という意思を感じて呆れてしまった。でも素直に許すのも嫌だし自分から折れるのも嫌だなと思っていると、彼はとうとう暗い瞳からぼろぼろ涙を零し始めた。


「しぃちゃんしぃちゃんごめんなさい縁切るなんて言ってごめん飽きたって言われてムカついて俺が居なけりゃ生きていけないって思いしればいいと思ってたのに俺のが我慢出来なかったし前に居るのに見られないのも触れないのも喋れないのも全部嫌俺はお前のものだけどお前も俺のものだろしぃちゃんねぇぎゅってさせてくれなきゃへし折るよ」


高い位置から無表情で生気のない瞳から涙を滝のように流して一息で捲し立てて脅されるのはなかなか怖い。

へし折られたくはないので仕方なく腕を広げると、ぱっと表情を明るくして抱きついてきた。ぎぅぎぅと力一杯に締め付けられて本当に折られそうである。

肩口に顔を埋めて思い切り息を吸い込む男の背中をぽんぽんと叩いてやりながら、窓から差し込む夕焼けを眺めた。


「桔梗」

「ん」

「私、別に桔梗と一緒に居る事に飽きた訳じゃないからね」

「は?」


ばっ、と身体が離れた。

再び肩を掴まれてじっと見下ろされる。


「一緒に居るのが当たり前だったじゃん。他人の入る余地なかったし」

「うん」

「でも桔梗と出会うまでの時間とか、桔梗が仕事で居ない一人の時間、色んな事試したけどつまんなくて時間潰すのに飽きたから他の人と関わってみたかったの」

「え、なに。つまり、あの時の飽きたって、俺と一緒に居るのに飽きたわけじゃなくて、俺と居る事で出来る一人の時間が嫌だったってわけ?」

「うん」


目をまん丸に見開いた彼は、何度か口の中で「倦怠期、きぃくんは好きだけど飽きた、飽きてきた、倦怠期……」とぶつぶつ唱え、やがて顔を覆ってへなへなと蹲み込んだ。

頭を抱えて蹲る彼と目線を合わせる為にしゃがみ込むと、恨みがましそうな目で見詰められた。


「しぃちゃん……、言葉が足りないクールなしぃちゃん超可愛いけど、俺あん時心臓止まるかと思ったんだからな…………」

「なんかごめん」

「何、じゃあ交友関係の自由を与えればこの生でも側に居て良かったって事……? え、ずっと監視してただけなの勿体なさすぎない?? え、もう絶対離さないから覚悟しろよ四六時中着いて回るからな離れようとしたら閉じ込める」

「でも桔梗もそれなりに楽しんでたじゃん、女の子侍らせてたし」

「違う! 沈花が俺に飽きたと勘違いしてんなら分からせてやろうと思って愛想振り撒いてたのに全然嫉妬してくれないし! お前途中から俺の態度面白がって観察してただろ! きぃくんて悲しげに呼んでくれたらすぐにでも抱き締めたのに!」

「なんかごめん」


でも嫉妬はしてたよ、と囁けば彼は顔を赤くした。その姿が可愛くて、よしよしと頭を撫でてやる。


「さっきの女。俺がしぃちゃんを見てる事に気付いたっぽくて、しぃちゃんになんかしそうだからちゃんと言っておいたよ。痴話喧嘩じゃないよ。俺には沈花しかいないから、沈花だけだから、分かってくれる?」

「うん、有難うきぃくん。私もきぃくんが好きだよ」


そう告げると、彼は立ち上がって私を抱き上げた。

近くなった顔に、容赦なくキスの雨を降らせてくるので大人しく受け止める。

暫く好き勝手キスされたり吸われたり舐められたりして若干べとついた顔を見て、彼はとても幸せそうに微笑んだ。


「しぃちゃん結婚しよ」

「うん」


そのまま私を姫抱き状態で雄叫びをあげながら学校を飛び出した桔梗の姿を目撃した生徒達は呆然とし、桔梗の家の近所の方々にはひそひそと小声で噂されたが、もうこれが彼のデフォルトなので勘弁してやってほしい。


本当は生まれ変わってもまた結婚にいい加減飽きたって彼女にお前には俺しかいないんだよって分からせる話でしたが振り回されている方が似合ったのでこうなりました。

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