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転生公爵令嬢は悲劇の運命しかない推しを守りたい!  作者: Karamimi
本編

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22/63

第22話:今度こそ手に入れた大切な人~ソフィー視点~

マシュー様に別れを告げられてから数日が過ぎた。マシュー様を失った私は、また1人ぼっちだ。相変わらず家では私の居場所はない。もちろん、学院内でも同じだ。


私は一体、何のためにこの世にいるのだろう…

いっその事…

そんな事さえ考えてしまう。


今日は絵を描く授業だ。皆楽しそうにグループになって絵を描いている。マシュー様はと言うと、令嬢たちに囲まれて楽しそうだ。もうマシュー様にとって私はきっと、過去の人なのだろう。いいえ、過去の人すらないのかもしれないわ。そう思ったら、胸が締め付けられる様な苦しさを覚えた。


その時だった。


「ソフィー様、よろしければ私たちと一緒に描きませんか?」


そう声を掛けて来たのは、ミレニア様だ。そう、私が2年もの間、傷つけ続けていた令嬢だ。一体どういうつもりだろう?


戸惑いつつも、迷惑になるからと断ったのだが、なぜか強引に輪の中に入れられた。私を隣に座らせると、絵を描き始めたミレニア様。私も描かないと!ここにいてもいいのか分からないまま、とにかく絵を描く事に集中した。


その時、ミレニア様がクラウド殿下の絵を褒め始めた。確かにクラウド殿下の絵は物凄く上手だ。クラウド殿下も、ミレニア様の絵を褒めようとしたのだが…


あまりにも個性的な絵だった為、笑いが起きてしまった。笑ってはいけない、私には笑う資格なんて無いのよ。そう思っていても、ミレニア様の絵を見たら笑わずにはいられず、つい笑ってしまった。


その時、ミレニア様と目が合った。しまった、怒られる!そう思ったのだが、なんと私の絵を褒めてくれたのだ。それにつられ、他の令嬢や令息たちにも褒められた。


こんな風に心から誰かに褒められたのは、きっと初めてだろう。なんだか胸の奥が熱くなった。


その日の夜、布団に入るとふとミレニア様が頭に浮かんだ。あんなに酷い事をした私を、どうして気にかけて下さるのかしら?まるで婚約を解消してから人が変わったみたいにお優しくなられたミレニア様。


彼女ともっと仲良くなれたら…って、なに図々しい事を考えているのかしら!彼女は公爵令嬢で私は男爵令嬢。それも私はミレニア様にあれほど酷い仕打ちをしたのよ!


そうよ、私はミレニア様に近づいてはいけないのよ!そう自分に言い聞かせた。



ついミレニア様を目で追ってしまう自分を、必死に戒めながら日々を送る。そんな私を気に食わない令嬢たちが、毎日私の悪口を言っている。以前までならマシュー様が止めてくれたが、そのマシュー様はもういない。とにかく、耐えるしかないのだ。


そんなある日、トイレに入った途端、令嬢たちが大きな声で私の悪口を言い出した。あの令嬢たち、いつも私の悪口を言っている令嬢たちだ。きっと私が反応しないから、わざわざトイレまで付いて来て悪口を言っているのね。


でも、どうしよう…このままではトイレから出られない。

その時だった。


「何がそんなにおかしいのかしら?」


この声は、ミレニア様だわ。どうやらミレニア様が、悪口を言っている令嬢に文句を言っている様だ。そして、令嬢たちを追い払ってくれた。


とにかくお礼を言わないと!そう思ってトイレから出たが、もうミレニア様の姿はなかった。


でも私の悪口を止めていたせいで、ミレニア様はトイレに行く時間が無くなってしまったのだろう。あろう事か、授業中トイレに行く事になってしまった。休み時間、余程恥ずかしかったのか、机に顔を伏せているミレニア様。


私のせいで、ミレニア様が…

そう思ったら居ても経ってもいられなくて、ミレニア様にお礼と共に、他の人たちにも聞こえる様に経緯を説明した。そんな私を見てミレニア様は、にっこり笑って逆にお礼を言い返してくれたのだ。


その姿を見たら、なんだか心が温かくなった。こんな風に人にお礼を言われたのは、マシュー様以来だ。やっぱりお礼を言われるのは、嬉しいものね。


そしてお昼休み、いつもの様に1人で食堂へと向かう。すると、トイレで私の悪口を言っていた令嬢が私を待っていた。


「ちょっといいかしら?」


令嬢たちに連れてこられたのは、校舎裏だ。


「ねえ、どうしてあんたがミレニア様に庇われる訳?一体どうやって取り入ったの?」


どうやら、トイレで私がミレニア様に庇われたのが気に食わない様だ。こういう時は、黙って相手が満足するのを待つしかない。そう思っていたのだが…


「何とか言いなさいよ!私たちをバカにしているの!」


パシーン

私が黙っていたのが気に入らなかったのか、私の頬を思いっきり叩いた令嬢。その拍子に、お弁当が地面に落ちてグチャグチャになってしまった。


「いい気味ね!これに懲りて、あまり調子に乗りすぎない事ね」


そう言って、令嬢達は去って行った。


分かっている。私が全て悪い事なんて。そもそも、この国の王太子のマシュー様に手を出した事。そして、ミレニア様を傷つけた事。そんなミレニア様に優しくされて、嬉しいと思ってしまった事。全部私が悪いのは分かっている。


でも…

どうして彼女たちに、責められないといけないの?そう思ったら、悔しくて涙が止まらない。それに、打たれた頬も痛い。どれくらい泣いただろう。そろそろ教室に戻らないと。でも…戻りたくない…


「ソフィー様、こんなところでどうしたのですか?」


ふいに誰かに声を掛けられた。この声は、ミレニア様だわ。ゆっくり顔をあげると、心配そうな顔のミレニア様が!私の頬が腫れているのを見たミレニア様が、すぐに水で濡らしたハンカチで冷やしてくれた。


そんなミレニア様に、改めて謝罪した。謝っても許される事ではないけれど、どうしても伝えたかったのだ。ただ、途中からいい訳みたいになってしまったが、これでもマシュー様の事は本気で愛していたのだ。その気持ちだけは、嘘を付くことが出来なかった。


そんな私に向かって、逆に感謝していると言ってくれたミレニア様。さらに、手まで握ってくれた。初めて触れるミレニア様の手は、マシュー様の手とは違い、柔らかくて温かい…


いけないわ、私の手は水仕事のせいでガサガサなのだった。肌の弱い私は、すぐに荒れてひび割れしてしまうのだ。でも、ミレニア様はそんな私の手を、“働き者の手”だと言ってくれた。


働き者の手…

その言葉が胸に突き刺さる。さらに保湿クリームまで塗ってくれた。久しぶりに感じる人の優しさに触れ、今まで抑えていた感情が一気に溢れ出した。泣きじゃくる私を、優しく背中をさすってくれるミレニア様!


その手の温もりが、温かくて気持ちいい。


結局私のせいでミレニア様まで授業を休ませることになってしまった。それなのに、門まで送ってくれたミレニア様。さらに、私と友達になってくれるとの事。こんなに嬉しい事があっていいのかしら?


物凄く嬉しい反面、またマシュー様みたいに離れて行くのではないか…

そんな不安に襲われる。


そして迎えた翌日

再びあの令嬢たちに呼び出された。

昨日と同じく、酷い事を言われた。とにかく大人しくしていれば収まるわ。そう思い黙っていたのだが、1人の令嬢にお弁当を叩き落とされた。


急いで拾おうとした手を踏まれ、別の令嬢が私を打ため、大きく手を振りかざした。


打たれる!

そう思ったのだが


「止めなさい!!!!あなた達!!!!!」


がに股でやって来たミレニア様が、令嬢たちを怒鳴りつけた。まさか、私を心配してきてくださったのかしら?そう思ったら、嬉しくてたまらない。


そんな中、令嬢たちに“イジメなんかしていないわよね”と聞かれたが、怖くて答える事が出来なかった。そのせいで、今度はミレニア様が令嬢たちに責められている。


私がはっきりと言わないからだ!意を決して、イジメられていたと言おうとした時だった。


ニヤリと笑ったミレニア様が何を思ったのか、今朝くれたブローチを私の胸から外した。なんと、このブローチは映像型撮影機で、今回の映像が証拠として残っているらしい。


凄いわ、ミレニア様!まさか、最初から私を守る為に、これを私に渡したのね!それだけでも尊敬の眼差しなのに、あろう事か、マシュー様に怒鳴りつけたのだ。


私をどれほど苦しめたと思っているんだ!少しは悪いと思えって。その言葉を聞いたマシュー様が、私に謝罪してくれたのだ。正直身分もわきまえず、マシュー様の優しさに甘えた私が悪いのだ。それなのに、謝罪の言葉を頂けるなんて…


そして何より、ミレニア様の慈悲深さ!こんな私を必死に守ってくれたミレニア様に、完全に心を奪われてしまった私。もうミレニア様の為なら、この命を差し出しても構わないと思う程、ミレニア様の虜になってしまった。


そうだわ、卒業したら、ミレニア様の専属メイドに立候補しよう。そうすれば、ずっと一緒にいられる!そう思い、ミレニア様に伝えた。


そんな私から、ミレニア様を奪ったのはマシュー様だ。さらに、クラウド殿下まで加わる。ギューッとミレニア様を抱きしめたクラウド様を見たら、なぜか無性にイライラする。そもそも、ミレニア様は皆のミレニア様よ!どうしてあなたが1人占めするの?


そんな理不尽な感情さえ芽生えたのだ。


その後はマシュー様の提案で、皆でお昼ご飯を食べた。もちろん、ミレニア様の横をキープした。優しいミレニア様は、私にお弁当を半分分けてくれた。それを見た他の令嬢たちも、皆お弁当を分けてくれる。皆で笑い、同じご飯を一緒に食べる。それが、こんなにも幸せなものだったなんて!


今回の事がきっかけで、令嬢たちとも少しずつではあるが、仲良くなれた。それもこれも、全てミレニア様のおかげだ!こんな私だけれど、時間が許す限りミレニア様と一緒にいたい。


その時間が、永遠に続くことを願わずにはいられない。ミレニア様、再び私に心のよりどころを与えてくれて、ありがとうございます。これおからも、ずっと一緒にいてくださいね!ミレニア様!

~ソフィー問題解決後の夜、マルティーノ男爵邸にて~

いつも通り、厨房で食事の後片付けをしているソフィーを呼び出す義父。


今度は何をされるのかしら?怯えながら向かうソフィー


「ソフィー、お前はいつの間にマーケッヒ公爵家のミレニア嬢と仲良くなったんだ!さっき公爵家から使者がやって来てね。ミレニア嬢直筆で“ソフィー様は私の大切な友達です。くれぐれもぞんざいに扱わない様にして欲しい!”と書いてあったんだ!さらに、今度遊びに行くとも書いてあった!とにかく、お前は元の部屋に戻りなさい!今至急整えさせているから!それにしても、お前はどうやら高貴な身分の人に気に入られやすい様だ!」


ご機嫌の義父によって、そのまま部屋へと案内されたソフィー。


家の事まで気にかけてくれたミレニアを、さらに崇拝するようになるソフィーであった。

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