第21話:孤独だった私に初めて温もりを与えてくれた人~ソフィー視点~
私、ソフィー・マルティーノはなぜか物心ついた頃から、両親に無視されていた。3つ下の妹は、何でも好きな物を買い与えられ、ちょっとした事でも褒められる。妹に向けられる愛情を、少しでも私に向けて欲しくて、勉強もマナーも必死に学んだ。
でも…どんなに頑張っても、私はいつもいないものとして扱われる。そんな私を、いつもバカにして来る妹。ある日、あまりにも私をバカにして来る妹に腹が立ち、言い返したことがあった。
すると妹は物凄い勢いで泣き叫び、両親に私からイジメを受けていて辛いと訴えたのだ。激怒した両親は、私を怒鳴りつけた。
「どこの馬の骨だか分からないお前をここまで育ててやったのに、まさか私たちの可愛い娘をイジメるなんて!どれだけ性格がひん曲がっているんだ!」
そう言うと、私の頬を打った。その時初めて、自分はこの家の子供ではない事を知った。それと同時に、なぜ両親が私を愛してくれないのかも理解した。その日から私は、屋根裏部屋で生活をする事になった。
朝早くから使用人と一緒になって家事をこなし、夜遅くまで働く。ただ私の場合、使用人の様にお給料をもらう事が出来ない。食事は何とかなるが、洋服などは買う事が出来ないのだ。
もちろん、義両親が私の為に服や日用品を買ってくれる訳もない…可哀そうに思った使用人が、お古の服や使わなくなった日用品を与えてくれた。それで何とかやり過ごす日々が続いたのだ。
そして月日は流れ、14歳を迎えた。周りの目を気にする義父によって、無事貴族学院に入学する事が出来た。ただ、制服は従兄妹のお古ではあるが、それでも学べる事は嬉しかった。
もしかしたら、貴族学院で私の事を認めてくれる人が現れるかもしれない。でも、現実は厳しかった。貴族学院と言うだけあり、生徒全員が貴族なのだ。男爵令嬢でもある私を相手にしてくれる人なんていない。
結局私は何処に行っても1人ぼっちなのだ。そう思っていたのだが…
「君、いつも1人なんだね。確か男爵令嬢のソフィー・マルティーノ嬢だよね」
そう声を掛けてくれたのは、なんとこの国の王太子でもあるマシュー殿下だ。一瞬にして体が強張る。
そんな私を見て、マシュー様は優しく話しかけてくれた。その次の日も、また次の日も、マシュー様は私の元に来て、一緒にお昼ご飯を食べる。嬉しそうに色々な話をしてくれるマシュー様。こんな風に誰かに笑顔を向けられるのは初めてだ。胸の奥がジーンと熱くなる。
私が家族から冷遇されていると知ると、私の為に洋服などを買い与えてくれたりもした。さらに、私を家まで送ってくれるマシュー様。私がこれ以上冷遇されない様に、わざわざ義両親に話をしてくれたりもした。
そのおかげで、義両親の私に対する扱いが劇的に変化した。
「まさかお前が王太子殿下に気に入られるなんてな!正妻は無理でも、側室くらいならなれるかもしれないぞ!そうなれば、我が家の地位もグンと上がる」
そう言って喜んでいた。もちろん、私は屋根裏部屋から以前使っていた部屋へと移り替わり、まさに順風満帆な生活を送っていた。
ただ、そんな私たちを面白く思わない人物もいた。それは、マシュー様の婚約者のミレニア様だ。ことある事に私に文句を言って来る。
でも彼女は、なぜか大勢の前で私を罵るのだ。どうしてこの人は、わざわざ人が居るところで、私に嫌がらせをするのかしら?人が見ていないところでイジメれば、もっと効率的に私を傷つけられるのに…
そもそも、婚約者のいるマシュー様と付き合うなんて、人として最低よね。ミレニア様の事を考えれば、きっと別れるべきだろう。でも…
初めて知った人の温もり…それに、義両親も私の事を見てくれるようになった。この幸せを、壊したくはない…
結局ズルズルとマシュー様との関係を続けて2年が経った。
その間、何度も公爵家から我が男爵家にクレームが入ったが
「こっちにはマシュー殿下が付いているんだ。気にすることはない!このままお前はマシュー殿下と仲良くしていればいいんだ」
そう義父が言う為、気にはなっていたがそのままの関係をズルズルと続けた。マシュー様とお付き合いをする様になってから、義両親が私に笑顔を向けてくれるようになった事が嬉しかった。
そんなある日、いつもの様にミレニア様に絡まれた。
「あなたいい加減にしなさいよ!マシュー様は私の婚約者なのよ!いい加減マシュー様から離れなさいよ!」
そう言って掴みかかって来たミレニア様。すぐ横は階段だ。このままだと転がり落ちてしまう。
「あんたなんか、さっさと階段から落ちてしまいなさい!」
そう言って私を階段から落とそうとするミレニア様。その時だった!
「ミレニア、止めろ!ソフィーから離れるんだ!」
いつもの様にマシュー様が私に駆け寄り、ミレニア様を私から離した。その瞬間、バランスを崩したミレニア様が、階段から転げ落ちてしまったのだ。
「おい、ミレニア!大丈夫か?」
急いでマシュー様が駆け寄るが、全く動かない。恐怖で体が震え、必死にマシュー様にしがみついた。その後は近くにいた生徒によって先生に連絡が入り、そのまま運ばれていった。
どうしよう…
ミレニア様にもしもの事があったら、私…
恐怖で体が震えた!私がいけなかったのだわ!いくらマシュー様がお優しい人だからって、婚約者のいる人を好きになるなんて。だから罰が当たったのね。
その日は恐怖で、眠れなかった。
翌日
ミレニア様が目を覚ましたとの連絡を受け安堵した。
「ソフィー、今回の件でミレニアが何を言って来るか分からないが、必ず君を守るから安心して欲しい」
そう言ってギューッと抱きしめてくれるマシュー様。やっぱりこの温もりを失いたくない。いけない事をしているのは分かっているけれど、初めて知った温もりを失ったら、今度こそ私は生きていけないわ!大丈夫よ、きっと大丈夫!マシュー様が何とかしてくれるわ。
そして、ソフィー様が目覚めた翌日
「ソフィー、朗報だ!ミレニア嬢とマシュー殿下の婚約が正式に解消されたんだ!さっき発表があった。これでお前が王妃になる可能性もグンと高くなったぞ!」
物凄い笑顔の義父。
私が王妃…
もし、王妃になればマシュー様とずっと一緒にいられる。でも、そんな淡い期待は脆くも崩れ落ちた。
なぜか婚約を解消してから、マシュー様はミレニア様が気になって仕方が無いようだ。私といても、いつも目でミレニア様を追っている。次第に私といる時間は極端に減っていき、他の令嬢と一緒にいる事も多くなった。
さらに男爵家には、王妃様から正式な抗議文が届いたのだ!かなり王妃様はお怒りの様で、これ以上マシュー様に近づくなら、不敬罪で男爵家を取り潰すとも言って来たのだ。王妃様の手紙では、私が色仕掛けでマシュー様をそそのかしたと書いてあった。私、そんなことしていないのに…
さすがにマズいと思った義両親。
「お前が調子に乗ってマシュー殿下に近づくからこんな事になるんだ!もし男爵家が取り潰しになったら、お前を一生恨むからな!」
義両親の怒りをかってしまった私は、また元の生活に逆戻りだ。特に義妹からの嫌がらせは酷く、今までマシュー様に買ってもらった洋服等も全て取り上げられてしまった。
そんなある日、マシュー様に呼び出された。もう私にはマシュー様しかいない!きっと今まで私の元に来てくれなかったのは、王妃様の目があったからだろう。この期に及んで、そんな馬鹿な事を考えていたのだ。
でも、マシュー様は
「ソフィー、もう君の側にはいられないよ!そもそも、俺たちは付き合っていた訳ではない。ただ、君が寂しそうにしていたから一緒にいただけだ。悪いがもう二度と話しかけないで欲しい。それじゃあ」
そう言って去っていくマシュー様。
私、何を期待していたのかしら?王太子のマシュー様が全てを捨てて、私を選んでくれる訳が無いのに…心のどこかで“ソフィー、2人でどこか遠くに行こう。誰も知らない場所で2人で暮らそう。君がいれば俺は何も要らない”そう言ってくれる事を期待していた。
でも、現実は…
瞳からとめどなく涙が溢れる。私はその場を動くことが出来ず、1人静かに泣いた。
ソフィーはずっと孤独で、ずっと人の温もりに飢えていました。そんな中、初めて知った人の温もり。ソフィーは原作同様、心からマシューを愛していました。
そんなソフィーをあっさり裏切ったマシュー。ただマシューもミレニアが前世の記憶を取り戻さなければ、きっと原作通り、ソフィーを愛し続けたはずです!
もう1話、ソフィー視点です。
よろしくお願いしますm(__)m




