【084】マルーイでお買い物
……というわけで、俺はカード総合商会マルーイにやって来ていた。
マルーイはカードも沢山売っているけど、それ以外にも色々な商品を取り扱っている。
例えば日用雑貨。シンプルなデザインでロゴなんかは一切入っていない無印な商品。
シンプルだからこそ高級感があり、値段も普通の雑貨よりもお高い。うん、なんかそれ知ってるわ。
そして、色鮮やかな色合いの衣類を扱うお店。有名なデザイナーがデザインした奇抜な服を多く取り扱っている。やっぱりお値段はお高い。
食品売り場もある。
鮮度の高い魚類や、珍しい加工品を多く取り揃えていて、ここでしか手に入らない物も多いそうだ。だから、結局お高い。
まあ、カードを求める一般客も多いけど、そういったお店には街の富裕層が集まる。最近ではなんだかんだで俺も良くマルーイで買い物をしているのだけど。
今着ているシックな服装もここで揃えた物である。
品の良い俺の服装を見て、ところかしこでヒソヒソと囁く声が聞こえてくる。
まあ、こんなパリッとした服を着て美少女二人を従えた男が目に留まったら、噂話の一つでもしたくなるだろう。
「ねぇ、あの人って」
「あー、エディナ様の金魚のウンチの」
「しっ! 聞こえるわよ!」
もう聴こえてますけどねー!
俺がチラリとご婦人たちに視線を向けると、目を逸らしてサササッと居なくなってしまった。
なんで逃げんのよ! 俺が悪い奴みたいじゃない!
俺が内心でご婦人たちに悪態を吐いていると、袖をチョイチョイと引かれる。
「買い物したい」
「あ、私もー」
ツクヨミとセンがおねだりしてくる。マルーイに来ると二人はいつも買い物をしたがるのだ。と言っても買う物は大体決まっている。
ツクヨミは普通より一回り大きなビッグポーセージ。センはウーメンに入ってる狐揚げでご飯を包んだもの……まあ、お稲荷さんなんだけど、それを買いたがるのだ。
二人は言う事を聞かない時も多いけど、仕事はしっかりとやってくれるから俺の懐はあたたかい。だから、強請られたら普通に買ってあげる事にしている。
俺は財布から金貨を取り出し、三枚ずつ二人に渡す。渡し過ぎかもしれないけど、ビッグポーセージもお稲荷さんもどきも、どこにも売ってないから意外と高いのだ。二人が満足する量を買って別の物を物色するには丁度良い金額なのである。
俺から金貨を奪い取ると、二人は子供のように食品売り場へと駆けて行ってしまった。
さて、俺も自分の用事を済ませなくてはいけない。
ここへはエディナに渡すプレゼントを探しに来たのだ。
とはいえ、色々とあって悩んでしまう。
周囲を見渡すと服屋のブースが目に止まる。
エディナに似合う服を買ってもいいな。けど、センスがあんまり良くないから俺がコーディネートするのは難しい。
反対側の花屋に視線を移してみる。
花でもいいな。あー、でも定住してるわけじゃないから荷物になっちゃうかな? 宿屋に枯れるまで置いておくことになっちゃうし。最近は寝に帰る感じになってるしなぁ。
そうなると……。
俺はブランドショップへ目を向けた。
女性に大人気のブランド、シャーネロの専門ブースである。俺の知ってるブランドは、Cが交差するようなロゴだったと思ったけど、シャーネロはなんかおっぱいみたいにCが横向きに並べられたロゴであった。
俺が店を遠巻きに眺めて悩んでいると、一人の男が近付いて来て声をかけて来た。
「ブル様ではありませか! いつも当店をご利用くださいまして、ありがとうございます」
少し腹の出た健康そうなこのおっさんは、マルーイ、キャロット支店の支店長らしい。
度々買いをする俺とエディナを見つけては、ちょいちょい声を掛けて来るのだ。
しかし、店の全容を把握しているだけあって、支店長は店のことならなんでも教えてくれる。
「こんにちは。支店長、女性にうけるプレゼントを探してるんだけど?」
俺がそう言うと、支店長はニコリと笑みを浮かべ、自信満々に声を上げた。
「ご紹介致します」
お読みくださり、ありがとうございます。
今週は忙しくて、真面目な方を書かなきゃいけないので、ちょこちょこ休むかもです。
報告しなくてもちょこちょこ休んでるけどね!




