【044】Yo! 登録しちゃいなYo!
「なんか……その、すみません」
委員会事務所で何故かエディナが謝っていた。
カウンター越しに座っているのは、口の悪いお姉さんじゃなくて、ヒゲ紳士ことマルマンである。
ヒゲ紳士は、大きな溜め息を吐いた。
「お二方、ブモーン討伐はBランク以上の闘士でないと、クエストは受けられないんですよ」
「いえ、別に倒すつもりではなかったというか、なんというか」
ヒゲ紳士は再び溜め息を吐いた。
「ヒゲし、マルマンさん。倒したら何かまずいんですか?」
「いえね。倒すこと自体は問題ないのですよ。ですが報酬をどうやって支払ったらいいのかわからなくて困っているのです」
「素材だけ買い取ってくれて、ウォウルベア討伐の報酬を頂ければ問題ないと思いますけど?」
「そういうわけにもいきません。闘士には働きに見合った報酬を支払うのが我々の義務です」
「なら、その報酬を支払ってくれればいいじゃないですか?」
「GランクとHランクの二人が、ブモーンを倒したと報告して上が納得するわけがないんですよ。それにあんな状態で獲物を運ばれてきましても困ってしまいます」
俺たちのクエストはブモーンを倒すことにより解決した。ウォウルベアの縄張りにやって来たブモーンの所為で、狩が出来なくなったウォウルベアが街までやって来て畑を荒らしていたらしい。
元凶となったブモーンを倒した後は、農地にウォウルベアの被害が出ることはなくなったのだ。
俺たちはクエスト達成とみて、真っ二つにされたブモーンをそのままツクヨミに運んで貰ったわけだが……。
「真っ二つのブモーンなんて、買い取りするにしても説明が出来ませんよ」
どうやら俺たちのことを報告する内容で、先程からヒゲ紳士は頭を抱えているらしい。
なんだっていいから早く処理して欲しいものである。ホントに委員会は毎回いちゃもんつけてくるな。
というか今回の件はヒゲ紳士が真面目過ぎるのが悪い。以上!
「じゃあ、まあ僕たちは帰るんで、処理の方法が決まったら教えてください」
「ちょちょちょ、待ってくださいブル君」
あーもう、早くツクヨミにご飯を与えないと機嫌が悪くなっちゃうんだよ。こっちの事情も察してくれよな。紳士なんだからさ。
「長くなります?」
「まあ、ほどほどには」
今度は俺が溜め息を吐いた。
仕方ない。
俺はお財布から金貨を三枚出して、ツクヨミに渡す。
「長くなりそうだから、好きなものを買い食いして来ていいよ。予算はオーバーしないようにね」
ツクヨミはコクコクと頷くと金貨を握り締めてトテトテ走り去って行った。
これでよしっ!
「で? これ以上何を話すっていうんですか?」
「君たちの隠しているカードについてです」
「それが何か?」
「どのような物を所持しているのか、もしくはそのカードを正式に登録してくだされば、わたくし共の言い訳もたつのですよ」
「……魔王ってさ。手持ちのカードは全部登録してるんですか?」
「全てかどうかは存じ上げませんが、登録の無いカードでは公式戦を行えませんので、少なくとも登録済みのカードのみを使用して得られた称号です」
「ふーん。じゃあさ、エディナのカードは登録しちゃったら?」
「え?」
「だって魔王になるんでしょ?」
「そ、そのつもりだけど……」
なら隠さなくていいじゃん。とエディナを説得すると、エディナは躊躇いがちにカードを出した。
「これは!」
エディナの出した【ピクシー】のカードと【偶然】のカード。それをみてヒゲ紳士が驚きの声を上げた。
それはそうだ。どちらも世界で一つしかないオリジナルカードなのだから。
「そっちの【偶然】を使うと、言葉の通り偶然が重なって何かが起きるんです。例えば、沢山ガラットが集まってる場所を見つけるとか、たまたま強力なカマイタチが起きてモンスターを真っ二つにしたりとか」
当然、嘘なわけだけど、ヒゲ紳士はなるほどと納得していた。まあ、実際使っても同じような事が起きそうだけどね。
唸りながらもなんとか納得してもらい、カードの登録と獲物の買い取りを済ませてから、俺たちはようやく解放されたのだった。
読んで頂きありがとう御座います。
なんだか胸のあたりがモヤモヤして、時折気持ち悪くなる。
顔も火照ったように熱いし、食事もあまり喉を通らない。
ぼーっとして頭も働かないので熱を計ってみたら37.8℃だった。
なんだこれ。
恋かもしれない……。




