【035】それはそれ
「欲しいけど、とてもじゃないけど手が出ないわね」
エディナが名残惜しそうにカードから離れる。俺はというと、とっくの昔にピンクプリンには興味が無くなり、ガラスケースを取り巻く人々を遠目に眺めていた。
【SSR】か、いらんな。
あんなものに大金を出すぐらいなら、ツクヨミに腹一杯ポーセージを食べさせた方が良い。
もりもり食べる姿は、それはもう可愛いのだ。目の保養になるのだ。
「ごめんね。ちょっと見入っちゃってた」
「ツクヨミの方がレアリティ高いよ」
「しっ! こんなところで、そんなこと言っちゃダメよ。誰が聞いているかわからないんだから」
確かにその通りだ。
でも気になるんだよね。ツクヨミには、驚きはしたものの、そこまで食いついてなかったし。
「ツクヨミちゃんは話も出来るから、召喚モンスターって感じがしなくて」
なるほどね。確かに道具として扱うならピンクプリンとかの方が使いやすいかも。ツクヨミの場合ご機嫌を取らないと言うこと聞かなそうだし。
「召喚モンスターをものとして考えちゃダメよ。言葉は喋らなくても、それぞれがちゃんと意思を持ってるんだから」
ふむふむ。
いや待て! 俺は喋ってないのに何で会話が出来てるんだよ! 読まれてる? 俺の心。
「ブルは顔に出やすいから、なんとなくわかるのよ」
ほらまた! 俺ってばそんなに顔で会話してる? 顔がうるさいって言われそうだから気を付けなくては……。
「とにかくカードを見に行きましょう」
そう言ってエディナは俺の手を引いた。
エディナの柔らかい手が俺の手を包み込む。
あー、もう一生手洗わねえ。
……洗うけども!
そうして引かれてやって来たのは、召喚カードコーナーであった。
額縁のようなケースに入れられて飾られるカードたち。カウンターの前のショーケースの中には、一際高価そうなカードが並んでいる。
俺たちが召喚コーナーへ一歩足を踏み入れようとすると、ツクヨミが俺の袖を引いた。
どうしたのだろうと思いツクヨミを見ると、ツクヨミは眠たげな瞳を向けて不満そうな顔をしていた。
「どうしたんだ?」
俺が問い掛けると、ツクヨミは簡潔に答える。
「……必要ない」
「え?」
「他のは必要ない。ツクヨミがいる」
な、なんだと! ツクヨミが妬いているだと!
俺がツクヨミ以外の召喚カードを手に入れるのが、気にいらないというわけか! 頭撫でようとすると逃げるツクヨミが? 抱こっさせてくれないあのツクヨミが!?
俺は感動で打ち震えた。
くぅううう! ツクヨミはやっぱり、俺の事が好きだったわけだな! そんな想いを伝えられてしまったなら仕方ない。
浮気はしないよ。これからはツクヨミ一本で行くよ。
「じゃあ、抱っこさせてくれる?」
「……絶対、いや」
「…………」
なんでだよっ!
読んで頂きありがとう御座います。
真面目に書いてる方にコメント貰えて、テンション高い自分。
どうだ!凄いだろ!
いや、寧ろありがとう御座います。調子のってすみません……
さあ、みんなも「マリアンたんと英雄譚」を読んで胸を熱くしよう!
熱くなるかは知らんけど……。




