【032】金貸してくんねぇか
「ポーセージっ、ポーセージっ」
昨日と同じ飲食店にやって来て席に着くと、ツクヨミの可愛らしいポーセージコールが巻き起こった。
うんうん。好きなだけお食べ。何といっても俺は今、お金持ちだからね!
店員さんに取り敢えず大皿でポーセージを三つと、日替わり定食を二つ、オレンジジュースを三つ注文する。
直ぐに運んでくれたオレンジジュースで一先ず乾杯。
くはぁー! キンキンに冷えてやがるぜぇ!
俺の大げさなリアクションと反して、エディナはお行儀よくチビチビとオレンジジュースを口にしていた。
「というかホントに良かったの? 金貨二枚じゃ、割合が少な過ぎない?」
「うーん。別にお金に余裕が無いわけじゃないし、ランクも上げて貰っちゃったし、十分貰ってるかなって」
「でも、エディナが色々教えてくれたわけだし、俺と一緒に頑張ってたじゃん」
「二人で五つでしょ? あのぐらいの情報なら誰にでも出せるわ。それに、ブルはカードを揃えなきゃいけないし、ツクヨミちゃんの食費だって大変でしょ?」
「……まあ、そうだけど」
俺が納得していない表情を浮かべると、エディナは少し考えてから言った。
「うーん。だったら今度、【実装】のコツを教えてよ」
「え? 【実装】ってツクヨミを召喚したやつ? 良いけど、多分出来ない……いや、待てよ。でも……」
「歯切れが悪いわね」
「うーん。俺自身も初めてだったし、レアリティの低い鉄の【白無垢】が手に入ったらエディナに教えられるか試してみるよ」
「うん、それで良いわ」
ふふ、つまりは【実装】のコツを教えるまでは、エディナは俺と一緒にいるわけだね! 【白無垢】なんて一生手に入らなければ良い!
いや、まあ手に入っちゃったら教えるよ。ホントだよ。
「じゃあ、明日はカードを買いに行きましょうか。デッキの方向性を決めて、それに合ったカードを五枚買うの。そうしたら、闘士登録も出来るし」
「助かるよ。正直ルールもわかってないから、エディナがいると心強い」
そんな話をしていると、俺たちの席に近付いてくる人物がいた。
ガッチリとしたガタイの強面の男が三人。
あー、なんか嫌な予感がする。つーか、絶対お約束のあれだよなぁ。
そう思いながらも、俺はツツツと男たちから視線を逸らした。
しかし。
ドンッと音が鳴り、テーブルが揺れる。俺は仕方なくそちらに視線を向けると、案の定男たちがニヤニヤ笑いながらこちらを見ていた。
男たちがテーブルを叩いた所為で、ツクヨミのポーセージが一つポロンッとテーブルから落ち……あ、ツクヨミが空中でフォークを突き立てて口に運んだ。ポーセージは無事だった。凄くね! それ!
「ちょっとなんなんですか、あなたたちは!」
あらー、お約束通りエディナが生真面目に言い返したかぁ。このままエディナに任せておくと、エディナが殴られたりおっぱいを揉まれたりしそうだ。いや、それは無いか。エディナに揉めるほどのおっぱいはなかった。南無三。
因みにツクヨミは男たちには目もくれず、ポーセージを楽しそうにひょいひょいつついて口に運んでいる。
「随分と羽振りがいいみたいじゃねえか。なあ、ちょいとばかし都合してくれねえか?」
「なんで見ず知らずのあなたたちに!」
食ってかかりそうなエディナを手で制して、俺は席を立った。
「お金の文句は俺にいぇええ!」
「「……………………」」
あ、やべ。誰にも通じなかった。ですよねー。
男たちがキョトンとしているので、咳払いを一つ。
「ゴォホォン! お金は全て俺が持っている。金が借りたければ、委員会事務所を通してしっかりと借用書を書いてきたまえ!」
俺がそう言うと男の一人が有無も言わさず胸倉を掴んで来た。
「あ“あ“ん! 何言ってんだテメェ」
いやいや、お前が何言ってんだよ。つか息臭いから離れてください。
「いや、だからね。借用書をね」
バンッと大きな音を立てて、男がテーブルを叩いた。
あ、馬鹿! やめろって!
俺の心配を他所に、テーブルの大皿が床に……落ちない! さっすがツクヨミさあん。
衣を使って上手くキャッチしたんだね。ってダメだよ! 衣使っちゃ!
当然ながら、男たちはその不可思議な様子に気がつく。
「あ? なんだこれ?」
男が恐る恐る、ツクヨミの衣がキャッチした大皿へと手を伸ばした。
その瞬間。
ザクリ。
ツクヨミのフォークが男の手に突き刺さった。
「あぎゃああああ!」
「テメエ何しやがる!」
そう言って、別の男がツクヨミに掴み掛かろうとすると、男は一瞬の間にブワリと空中に浮かび、ぐるりと回って背中から空きテーブルに叩きつけられた。
ガタイの良い男が物凄い勢いで落下したものだから、テーブルが真っ二つに叩き折れる。
もんどりを打つ男を見て、もう一人の男は何が起きたのか理解出来ないのか、わたわたと慌て出した。
そこにツクヨミの衣が細長く伸びて、男の両目をバシッと突く。
「んぎゃああああ!」
悶絶して転げ回った男は、暫く悶えると仲間を連れて帰っていった。
当然「覚えてろよ!」という捨て台詞も忘れない。なかなか律儀なテンプレ野郎どもである。
俺が感心してその様子を見ていると、ふと店内の注目が集まっている事に気が付いた。
やべえ、どうしよう。
俺が困り顔をしている中、ツクヨミは近くにいた店員さんにポーセージの追加注文をしていたのであった。
読んで頂きありがとう御座います。
そろそろカード出さないとタイトル詐欺って言われそうだから、買いに行くことにしました。
そう。
この物語は日々、作者の思い付きと気分でシナリオが進行していく、プロットなし!設定なし!でお送りする新感覚リアルタイム小説なのであった。
当然ながら伏線なんて一切ない。ないったらない!




