【031】紳士にはヒゲがある
委員会の事務所では沈黙が漂っていた。
俺に論破されて口籠るお姉さん。
ツクヨミにプレッシャーをかけられて、やり過ぎたと後悔する俺。
強気な俺の態度に更に困った顔になったエディナ。
誰も何も言えず、俺たちのやり取りは、事務所内で注目を集めていた。
うーむ。どうしよう。引くに引けなくなってしまった。
俺のばかばか。
気不味い空気が流れただけで、なんにもカッコ良くなかったんですけど! 大失敗ナウ!
そんな空気を察してか、事務所の奥で何やらカキカキしていた男が俺たちの所までやって来た。
話の流れは聞いていたのか、お姉さんの肩に手を置いて奥に下げたあとカウンター越しに腰掛ける。
「副所長を務めておりますマルマンです。うちの職員が不躾な物言いをしてしまい申し訳ありませんでした」
「え、あー。俺もちょっと言い過ぎました。すみません」
「いえ、いいのですよ。あらぬ疑いをかけられては、腹を立てるのも仕方ありません。それに……ブル様と仰いましたか? あなたの言っていることは概ね間違っておりませんからね」
柔らかな笑みを浮かべる髭紳士の態度を見て、自分の発言が恥ずかしくなってきた。
くそうっ! 俺もこんな感じでやれば良かった!
「エヴァルディア・ユー・カラトナ・モンテフェギアさんでしたね。あなたは昨日も大量の薬草を採取して来ていますね。ふむ、どうやらこちらの査定に誤りがあったようです。初心者は皆Hランクで登録して頂いているのですが、どうやらあなたの能力はそれ以上に高いようですね。登録方法を見直さなくては」
「いえ、そんなことは……」
「ご謙遜を。登録されている召喚モンスター以外にも、高レアリティな物をお持ちなのでしょう? しかも扱いが上手い。でなければ、二日に渡り規定の何十倍もの量を納品出来る筈もありません」
そう言われて、エディナは苦笑いで応えた。
このヒゲ紳士、柔らかく言っているがなかなかに鋭いぞ! だが、甘い。ヒゲ紳士の言っている高レアリティの召喚モンスターは、俺が所持しているわけで、その召喚モンスターはヒゲ紳士の目の前にいるのだから。
まあ、規定枚数のカードを所持してなくて登録すらできなかった俺が、そんなカードを持ってるとは思わんよね。
「良いでしょう。こちらの品は引き取らせて頂きます。それと、Gランクの昇級手続きをさせて頂きますね」
「え?」
「申し訳ありません。お手持ちのカードを登録して頂ければ、内容によってはもう少しランクを上げられるのですが、現状ですと飛級させるわけにもいかないのですよ」
「いえ、そうではなくて。私はまだ二回しか依頼を受けてませんよ? 普通は十回の依頼をこなして審査にかけられるのでは?」
「構いません。このランク帯でしたら、私の裁量でどうとでもなります。それよりも、才能ある者を燻らせておく方が勿体ない」
「あ、ありがとうございます」
エディナが小さくなって答えると、ヒゲ紳士は和かに笑ってみせた。
「ブル様も申し訳ありませんでした。少し色をつけさせて頂きますので、先程のやり取りは水に流して頂けないでしょうか」
ヒゲ紳士が丸く収めてくれたお陰で俺たちは、無事ガラットを換金することが出来たのだった。
チーン。
しめて【578900】イェン。
まだ、巨大なガラットの塊は売れてないが、転生して三日目にしてお金持ちである!
読んで頂きありがとう御座います。
読み返してみたら何もボケていないことに気が付いた。コメディにあるまじきことである。
というわけでボケます。
「お金持ち」とかけまして、「ホッカイロ」と解きます。
そのこころは?
「どちらも、懐があたたかい」
…………うるせぇっ!




