【026】高級品には維持費がかかるそうです
「お疲れ様でした。こちらが今回の報酬になります」
委員会の事務所で今回の依頼を完了させた俺たちに、受け付けのお姉さんは和かに言った。
そして、カウンターの上に今回の報酬が置かれる。
金貨四枚に銀貨が六枚である。しめて【46000】イェン。エディナと半分で割ると【23000】イェンの儲けだ。
働いた時間も四時間程だったし、時給換算すると約【6000】イェンと随分と高級取りな金額ではある。ツクヨミが頑張ったお陰で、通常よりも早く、そして大量に収穫できたのが大きいみたいだ。
うむうむ。これなら、なんとか日々を送っていけそうだ。
「随分と量が多かったですね。森の眷属、エルフがいると集め易いのかしら?」
「え? ええ、まあそんなところです」
エディナがなんだか言葉を濁している。そんでもって、そそくさと事務所を後にしようと、俺の袖を引っ張った。
はいはい、わかったよマイハニー。ここには長居したくないんだね。
俺はエディナに手を引かれ、やれやれといった表情で後を付いて行った。
みんなよく俺の姿を見とけよ! 三百六十度どっから見ても彼氏っぽいだろっ!
見せつけるようにして、俺は事務所を後にするのだった。
そんなこんなで、俺たちはカフェで軽食をとりつつ今後について話し合っていた。
「ちょっと想像以上だったわ」
ミルクティーをすすったあと、エディナは頭振って言った。
俺はポテトフライをハムハムと口に放っているツクヨミに夢中だったが、エディナの声を聞くとキリリ表情を引き締める。
「なにがだい?」
ニヒルにきめてそう言った筈だったが、エディナは顔を赤らめるどころか呆れ顔である。
「ブルは気楽ね。まあ、記憶がないからかな」
「な、なにがだい?」
「ツクヨミちゃんの性能がヤバすぎるって言ってるの。あんまり頼り切りになると直ぐに目をつけられるかも……」
「家の人に?」
「違うわよ。カードを狙う輩によ! 私みたいなルーキーや、ルーキーですらないブルがとんでもカードを持ってるなんて知れたらどうなると思うの? 無理矢理奪おうとする輩がわんさか湧いてくるわよ」
「それは嫌だけど、チマチマやっててもカードを買うお金が貯まらないし、仕方ないんじゃない?」
「なんであんたはそんなに落ち着いてるのよ」
「エディナが考え過ぎなんだと思うけど?」
俺がそう言うと、エディナは難しい顔をしてそうなのかなぁと唸ってみせた。
「取り敢えず、今日の清算をしておきましょう」
そう言って、エディナは金貨を一枚だけ取ると、残りを全て俺に渡して来た。
「え? 違うでしょ。半分だから金貨二枚と銀貨三枚だよ?」
「わかってるわよ。でもこれは、ツクヨミちゃんが稼いだようなものだし、金貨一枚でも余分に貰ってるわ」
うーん。これはアレかな。プライド的な? それともキッチリさん? そんなの気にしなくてもいいのに。俺なんかなんにも役に立ってないんだから。
けれど、拒否したところでエディナは受け取らなそうだし、俺は素直に受け取ることにした。
「じゃあ、今夜は俺がエディナにご馳走するよ」
「う、うん。ありがと」
はにかんだ笑顔はとっても可愛かった。
そして夜。
チーン。
「お会計が【31200】イェンになります!」
だから食い過ぎだっつーの!
今日稼いだ金も宿代入れたら赤字になったわ!
キッとツクヨミを見ると、鼻を鳴らして満足そうにしているから困ってしまう。
くっ! 可愛くて怒れねえ!
……だが、わかった。俺は決めたぞ! ツクヨミに自分の食べる分は自分で稼いで貰おう。そうしよう! というかそうしないと破産する。
「……これは、四の五の言わずに稼がないとダメそうね」
ツクヨミの食いっぷりを見て、エディナはそう言った。
さすが俺の未来の嫁! 話がわかる。
俺たちの考えなんてわかっていないのか、ツクヨミは小さく首を傾げるのだった。
読んで頂きありがとう御座います。
やばい。この作品は広告用に書いていることを忘れて、あとがきにくだらないことを書き続けていたことに今気が付いた。
というわけで、「マリアンたんと英雄譚」を是非是非読んでみてください!
つまらなかったらコメント欄に『オタンコナス』って書いても良いから!
この作品も別に誹謗中傷なんでもござれなんで、自由にオタンコナスしてください!
指標になるので大歓迎です。面白かったら『(・ω・)bグッ』これ頂戴!頂戴!