【022】いつもの展開
チーン!
「【14600】イェンになります」
会計の時に金額を聞いて、俺の顔が引きつった。
単価の安い店に来たはずなのに、何故こんな金額になっているか? ……いや、まあ。考えるまでもなく決まってるけどね。
そうだよ! 食ったからだよ。あのチビっこが!
一皿【800】イェンする大皿を、合計で十五皿もペロッと平らげやがった。
まだまだ、いけるぜって顔をしてたが、さすがの俺もストップをかけざるをえなかった。
悪いな、ツクヨミ。幾らでも食えって言ってやれなくて……。
ちなみに、会計時に鳴ったチーンという音は、実際には鳴っていない。俺の心の中での効果音である。
うん。凄くどうでもいい。
俺は泣く泣く会計を済ませて、直ぐに店を後にするのだった。
しかし、やばい。相当にやばい。
何がやばいかっていうと、単純な話、金がないのだ。
宿代が二人分で【7000】イェン。服代で【4000】イェン。街へ入るのにこれも二人分で【1000】イェン。今の食事代で【14600】イェン。もともとの手持ちが【53100】イェンだから差し引くと残金なんと【26500】イェンだ。
僅か一日で手持ちが半分になってしまった。
うおおお! 計画性のなさは、前世譲りだったああ!
宵越しの金は持たねえじゃないけど、貯金とか出来ない子だった気がする! いや、間違いなくそうだ。
なんとか稼ぐ手段を探さないとな。
そんなことを考え、宿の一階にあるこじんまりとした酒場で一杯やってると、エディナがやって来て話し掛けて来た。
「お酒を飲んでるの?」
「いや、これはホットミルクだけど」
「あ、じゃあ私もそれで」
寡黙なマスターに注文して、エディナは俺の隣に腰掛ける。
今日出会ったばかりだけど、既に結構距離感が近くなっている気がする。うむうむ。この調子でいけば、エディナが俺にほの字になるのも時間の問題だろう。
出来る! 間違いなく結婚出来る!
そう思っていると、エディナは差し出されたホットミルクに口を付けて息を吐いたあとに言った。
「ブルはいつこの街を発つの?」
え? いつって? そりゃ、エディナが街を出ようと思った時だけど……ん? あれ?
「パンナコッタに行くんでしょ?」
「何処そこ? というかなんでそんなことになってるの?」
「え? だって入学許可証があったじゃない。見てないの? そこに行けば少しは自分のこともわかるでしょ?」
あー、そういうことか。エディナは俺が記憶を取り戻そうとするって考えているわけか。
それで、俺とは別れる前提で話をしているのか。
それはダメだ! 絶対に! せっかく知り合いになったこのつるぺたエルフを口説き落とすまで、離れるわけにはいかないのだよ!
「正直、記憶とか興味ないんだよね。ただ、まだ常識があまりわかってないから、暫くはエディナと一緒にいたいんだけど?」
「え? 私と?」
そう言うとエディナは何やら考え込む。
真剣に考え込む姿は、どこか神秘的で美しい。
ま、ま、マママーベラス!
ぐおおおっ! やっぱエルフって可愛えええ! 攻撃力はツクヨミにも匹敵するね! 何という戦闘力だ! こんな可愛い姿を見せられたら、俺のハートは簡単にキャッチアンドリリースだぜ!
いや、ダメ! リリースはしちゃダメ!
「ブルがそうしたいなら良いけど、あんまり私に関わらない方が良いかもよ?」
「え? 何で? 実はエディナはエルフの里のお姫様で、家を飛び出して来て王様とかに追われてるってこともないでしょう」
俺がそう言うと、エディナは目を見開いて驚きの表情を浮かべた。
え? 嘘でしょ?
「何でわかったの?」
当たりなのかよ! なんつーベタな展開だ。ベタ過ぎて逆にびっくりだよ!
俺の内心とは違ってエディナは真剣な表情を向けていた。
真っ直ぐな瞳。その瞳を見つめ返した俺は――――だらしなく頰を緩めた。
ち、違うんだ! ふざけてるわけじゃないんだ! 真面目な表情があんまりにも可愛いからさ! 仕方ないんだ!
必死に頰を引き締めようと頑張る俺を見て、エディナの目はジト目になっていた。
読んで頂きありがとう御座います。
リアルな美人てあんまりいないよなあ。と思っていたけど、海外にはいるのね。化物級の可愛さをもつ子たちが……




