【021】手玉に取られたい!
血塗れの服を着替えようと思い、服屋さんで安くて丈夫そうなズボンとシャツや上着を二着購入した。
洗えばなんとかなりそうだったが、破れた胸元とかをチクチク裁縫するなんてできないし、服屋さんに処分をお願いしたら、なんと買い取ってくれた!
もともと着ていた服は結構いい生地を使っていたらしく、仕立て直せば使えるみたいだ。
確かに今着替えた服よりは肌触りが良かった。
前のブルも意外と役に立つ。
お陰でかかった金額は【4000】イェンで収まった。もっと覚悟してたからこれは有難い。
そして、陽も落ち始めたので、エディナと一緒に宿をとってから食事をすることに。
カードに戻せばツクヨミの分は色々と浮くのだが、戻そうとすると可愛らしくイヤイヤするから困ってしまう。
お陰で、宿代も二人分取られた。
けれども、後悔はしていない。だって、当然相部屋だしね! 合法的に! ツクヨミの所有者は俺だし! やっほい!
よし、今夜はツクヨミを抱っこしながら眠ろう。
ぐふふ。やべ、寝れるかなこれ!
わっくわくの気持ちを押さえて、軽やかなステップで俺たちは街の飲食店へと向かった。
そこで。
俺のフォークから、ソーセージっぽい何かがポロンと落ちた。
呆気にとられる俺とエディナを気にする素振りも見せず、ツクヨミは機械的にテーブルにあるものを口に入れていく。
しかも、凄い速度で!
テーブルの上に積まれている皿は既に五皿。ちょっと食べ過ぎなんじゃないですかね。
俺はそんなツクヨミを尻目に、皿に落ちたソーセージっぽい何かをフォークで刺して口へ運ぶ。
パリッと皮が破れたあとに、中の柔らかい肉からジュワッと肉汁が口の中へと広がった。
これはっ! シャウエッセン!
知らんけど!
取り敢えず美味い! 思わずおはだけしてしまいそうな味に、俺は大満足である。
しかし、この美味い食事をツクヨミはちゃんと味わっているのだろうか?
出された料理を眠たげな瞳でみつめながら、フォークでヒョイヒョイっとつついて、パクパク口の中へと放り込んでいく。
「なあ、エディナ。召喚モンスターってこんなに食べるのか?」
「え? うーん、どうだろう。大型のタイプだったら食べると思うけど……ツクヨミちゃんの体型だと食べ過ぎな気もするし。うーんでもレアリティがなぁ」
どうやらよくわらないらしい。
まあ、お伽話になってるレジェンドカードのことなんて、誰も知るわけがないか。
先程エディナから聞いた話だが、召喚モンスターを出したままだと、モンスターは徐々に体力を消費していくらしい。その減った体力を回復させる為に必要なのが食事というわけだ。
カードに戻しておけば何も問題ないのだが、日常的に召喚モンスターは使用される為、召喚したままにして食事を与える者も多いのだとか。
というのも、カードには一日に使用できる回数に制限があるらしい。召喚カードは各カードで三回まで。召喚モンスターが倒されてしまうと三日間再召喚は行えないのだそうだ。
エディナの召喚カードが現在使用出来ないのも、この制限の為だ。
つまるところ、俺はツクヨミを召喚しっぱなしにする必要はまるでないわけで、大飯を食わせる必要もまるでないのである。
俺は懐に手を入れ、ツクヨミのカードに触れる。
すると。
食事に夢中だったツクヨミが、シュッと俺にフォークを突きつけて来た。
あのね、ツクヨミさん。俺は君のご主人様なんだよ。フォークを突き付けるのはどうなのかな?
俺の顔が引きつっているのを見ると、ツクヨミは顎に手を当ててなにやら思案したようだった。
そして、フォークを持っていない左手を俺に差し出して来た。
ん? なにこれ? どういうこと?
「握ってていい」
俺は有無も言わせぬスピードでツクヨミの手を握りしめた。
ぷにぷにした柔らかい手触りに、感動を隠しきれません! 俺が夢中になってツクヨミの手をスリスリしていると、ツクヨミは何事もなかったかのように食事を続けた。
はぁ〜、幸せじゃあ。
……って待てぇい! なんか俺、調教されてないか!?
読んで頂きありがとう御座います。
説明回乙~。説明にもなってなくて乙~。
しかもカードバトルしてないって? はは!何を言っているかわかりませんね。