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フリードリッヒ王国 第1話 黒竜討伐隊

 とある魔法のある世界に、いくつかの小国が集まっている大きな島がありました。そこに住み着いていた黒い竜は、島の中央の山脈から近隣の村々を襲い『山の主』と恐れられていました。


 最近被害にあったばかりの国の王、高まる討伐嘆願に業を煮やして国中におふれを出します。



 〈黒竜を退治する者を求める。若年でもかまわぬ、能力のある者を推挙せよ〉



 ☆☆☆



 国の国境防衛に当たっている辺境伯の騎士は、地域の要請により村を荒らす魔獣や害獣駆除にあたる遊撃隊を持っています。

 ある村の要請で、大型の人食い熊退治を行った時。野営に来る子供が目にとまりました。熱心に討伐談を聞き、自分もやってみたいと熱心に話しかけてきます。

 「坊主、俺たちとくるかい?」

 半分冗談でした。

 「うん。一緒に行きたい」

 すぐに家に帰って親を説得した子供は、親を連れて戻ってきました。

 「おいおい、本当に来るつもりなのか?」

 「だって、そう言ったじゃない」

 「あのー、できれば連れていっていただけませんか。この子の兄弟が・・」

 親の身なりから容易に推察できた。子だくさんで生活が大変なのだろう。

 「この子が騎士になりたいと言ってききません。ぜひ連れていってください」


 なんども頼まれ、あまつさえ自分から言い出した手前 断ることもできずにそのまま従士見習いとして、騎士団に入る事になりました。



 ☆☆☆



 十分な医療のない時代、教会の奉仕活動として地域医療を行っていた。

 見習いから開けた者を、巡回として村々を訪れて治療を行っていく。使用する魔法は、初期の治癒魔法の為、治療には限度があるのだが腰痛だったり単純骨折の治療など重宝されていた。もっとも、お布施を出さなければ治療を受けることができない為、村でも裕福な者しか利用できないでいた。


 とある村にて。

 初めて巡回に出た新人神官と修道女に付き添っていたシスターは、みすぼらしい少女から何やらオーラが漂っているのを感じた。

 村人に聞くと、最近亡くなった母親の子供で他に身寄りがないので、村で食事だけ与えているという。

 「この子を教会にあずけることは、出来ますか?」

 村のお荷物となっていた少女、この申し出にだれも異議を言う村人はいなかった。



 ☆☆☆



 国によって多少違うが、同じ職業やスキルを持った集団がある。自分達の権益を守るために作られたのが【○○ギルド】と呼ばれている。


 その幾つかが国王のおふれに興味を持った。

 これに応じて誰かの弟子を出してやれば、王宮とのつながりも出来るのではないか?

 早速動いたのが「魔法ギルド」と「錬金ギルド」。双方、ギルドの組合員に通知を出したのだが、内容は全く違っていた。


 優秀な弟子を竜討伐に出すように・・と言われても、むざむざ死に行く弟子を出さないだろうと考えた魔法ギルドは、「優秀だが扱いに困っている弟子はいないかね?」と、組合員に通知をだした。


 一方錬金ギルド、全組合員に竜討伐と一切知らせないで「ギルドより重要なお知らせ。各ギルド加入の皆様におかれましては、日々研究・魔道具の作成と研鑽のことと思います。しかし、近年の状況を鑑みますと、組合員の皆様としては資金・素材などで苦労しているのかと思われます。そこで、当ギルドとして多少でも研究のお役に立てるよう資金・素材を提供することとしました。ぜひ、お困りの際には、ギルドまで相談においでください」


 どこにも返済不要とは書いていない、知ってか知らずか、かなりの組合員がギルドに貸しを作ってしまった。

 そんな一人の組合員、作成中の魔道具は見事に失敗、それだけではなく工房も魔道具発火により全焼消失と踏んだり蹴ったり、失敗により返済どころか生活にも困り果てていた・・・



 ☆☆☆


 

 当然【冒険者ギルド】にも王宮より何年も前から討伐メンバーを出すようにと何度も依頼が来ていた。依頼の掲示板に都度貼りだすが、誰ひとりとして名乗り出ていない。王宮からの呼び出しは・・毎度、いつになったら討伐メンバーをよこすのかとの催促だけ。


 「はあ、困った。誰も竜討伐に行こうとしない。どうしたらいいのか」

 マスターの執務室で、独り言をグチグチいっても気が晴れないので、職員室のマスター席で悶々と独り言を言っていた。いくら気の毒でも、毎度部屋で愚痴られても職員にとっては迷惑以外の何でもない。


 とそこに・・今月から入った新人職員がマスター前に立って言う。

 「そんなにお困りなら、考えを変えてはいかがですか?」

 「考えを変える?」

 「マスターは、城から来た依頼を書き写して掲示しているのですよね」

 「ああ、そうだが?(何を言っているのだ?わかりきった事を)」

 「もうこの依頼は、ここに来ている冒険者はみんな知っているので、何度貼られても見向きもしないですよね」

 「ああ。(だから困っているのだろうが)」

 「では、引退した冒険者はどうでしょうか?」

 「はあ?何を言っている。そんな老いぼれが竜討伐などできるはずがないだろう」

 「引退した冒険者じゃなくて、その子や弟子?(冒険者になるのかな?)は、まだギルドに登録していないのではないのですか。依頼にも成人前でも訓練すると書いてありましたし」

 「子や弟子・・ふむ、そういえば、心当たりがないわけではない」



 ☆☆☆



  さらに3ヶ月が過ぎた某日。


 王宮謁見の間、玉座に座る国王と王妃、隣に宰相。

 一段高くなっている王座の下に側室三名(第一王子、第三王子、第四王子の母)が控えている。

 謁見の間の左右に、教会より枢機卿、主だった貴族か名代、反対側に高位の武官と文官さらに、騎士団長・宮廷魔法団長・治療を行う宮廷神官長・薬や魔道具を管理する錬金術師の術師団長。今回は、冒険者ギルド長・魔法ギルド長・錬金ギルド長の三人が末席に立っていた。



 国王が見据えているのは。


 「ちちう・・国王陛下、これはどういう事ですか?この者たちで竜に立ち向かえというのですか?」

 「まあ少し落ち着いたらどうだ。そうだな、まだ自己紹介もまだなのだろう?今簡単にやってもらおうか」


 「・・・(一体父上は、何を考えているのだ?)」

 若干の間をおいて。

 「わたしは、フリードリッヒ第三王子、アミッド・フォン・フリードリッヒ。この竜討伐隊の指揮をとる。」


 アミッドは、王妃の子ではない。メイド見習いとして来ていた子爵の四女との間にできた王子なのだが王位継承権はもっている。では、兄達はというと、側室から生まれた第一王子・王妃の第一子で第二王子、だが正妃の子となっているので王太子でもある。表面上王太子が次期国王なのだが、有力貴族が多く支持する長男(貴族派)と嫡男(国王派)で次期国王を狙い水面下でうごめている状態でさらに第三王子(勢力争いに出遅れた地方貴族の支持を集めている)まで、王位継承にかかわっては面倒だと宰相や文官が、竜の被害を訴える民の声に応えるとして、担ぎ上げた事によってできた討伐隊であった。


 なお、第四王子も側室との間に生まれているが、まだ生まれたばかりなので今回の騒動にかかわっていない。それ以外にも2名の王女もいるのだが、こちらは王位継承に興味が無いようなので、政略結婚により継承に関わることはない。


 もっとも第三王子は、今年成人したばかりなのだが。宰相は、これを待っていた節があるようだ。


 王子の後方に膝を折り(かしず)いている老(ここでは成人となっている意味)若男女。

 「辺境騎士団従士見習い、13になります」

 国王の前で名前を言えるのは、謁見の間に参列できる者(ギルド長は今回だけなので含まれていない)と許可を受けているかその場で許可された者だけなので、名乗る事を許されない。

 「シスター見習い、10になりました」

 「魔法使い見習い、14になります」

 「錬金術師、22となりました」

 「猟師見習い、13です」


 彼らの挨拶をうけて宰相が、話を続ける。

「以上が今回の竜討伐メンバーとなります」

 第三王子が何か言おうと口を開こうとするのを、左手を上げ制し、さらに話を続ける。


 「王子のご懸念は、もっともです。まだ成年ともなっていない子供だけで、何ができるのか。と思われるでしょうが、ただ策も無く集まってもらったのではありません」


 王子の後ろの一団を一瞥し、さらに続ける。

 「この討伐メンバーでは、ゴブリン相手でも苦戦するのは見てもお分かりの通りです」

 貴族のあいだからクスクスと笑いが漏れている。


 「そこで、王子の補佐として王都騎士団第二隊、副隊長をつけます。5年間の補佐とし、討伐隊には討伐に必要な知識・技術を習得してもらいます」

 ほうと関心した声が聞こえる。


 「教会では、専任の神官がつき、シスターとして討伐に必要な能力を十分に引き上げてもらえるとの事です。これも期間は5年、シスターが成人になるまで続けられます」

 枢機卿の頭が下がると、国王が手を上げ苦労を掛けると答える。


 「シスター以外の討伐隊メンバーは、王都騎士団にて修練する事になります。

 ただ、王都騎士団は、王城周辺の治安維持が任務の為、武器や防具の扱いなど基礎鍛錬はできますが、討伐に必要な知識も技術も持ち合わせていません。そこで本日お出での冒険者ギルド・魔法ギルドからは、それをサポートする要員を出してもらえる事になっています。


 さらに、王宮にも錬金を扱う部署はありますが、これも騎士団の仕様に即しているため討伐に必要なものばかりではありません。

 そこで、錬金ギルドより討伐に必要なアーチファクトの提出、素材の提出がされます」

 おぉ・・と小さな声だがどよめきが起きる。ただ、ひそひそとその資金は、王宮から出るのだろうと話されていた。あまり高額になると、貴族達からの臨時徴収となる為、警戒心を抱かせるのだった。


 「討伐に向けての大まかな予定ですが。今後5年、王都騎士団と教会にて彼らに指導をしていきます。

 討伐に必要な知識技術が備わったと判断された後、国内の各地を巡り、ギルドの依頼を受ける形で、実績を積み連携強化と鍛練をしてもらう事となります。

 その後、友好国をめぐり黒龍情報の収集を行います。路銀確保の為、ギルド依頼を受けながらとなりますでしょうがこれも鍛練となるでしょう。これには、数年かかるかと思います。

 なお、都度の連絡報告は、王家の方で手配します。


 その後、山脈に向かい竜の生態、現地調査など必要な事を調べ装備や補助人員の確保などをやってもらいます。

 討伐に向かう前、王子には帰還してもらい、最後の報告と討伐方法について検討する事になります。

 以上が今回の討伐計画でありますが、アミッド王子、ご懸念があればこの場にてお願いいたします」

 「・・いや、それなら問題ないだろう」

 「さようでございますか。では、皆様からなにかございますでしょうか?」


 この後、幾人からの貴族から質問があったが、特に問題になるようなこともなくお開きとなった。

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