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FILE7 村の歴史

 学園の朝。ふぶきの語る声が聞こえていた。

 いつの物語だろう。一冊の古びた本。中には何処か懐かしい物語が書かれていた。


「昔、小さな小さな男の子がいました。

 年の割には成長が遅く、お母さんたちは施設に預けようとしていました。

 そんな、男の子が五歳の秋、神様が

『彼が小等部三年の秋姿を消す。死姫は小等部五年の秋死ぬだろう。』

と言いました。

 神様が言ったことは当たりました。

 男の子は姿を消し、死姫も何度もの世界を死の世界にしました。

 が、神様は目を丸くしました。

 何故か、死姫が今も生きているからです。

 そして、神様はせめて男の子の記憶を全員から消そうと試みました。

 男の子の記憶は皆の中から消えてしまいました。

 でも、死姫と時神と巫女の記憶には少し残りました。」


 ぺらりぺらりと捲られるページを読み続ける。古く(もろ)いその本には古字で書かれていた。


「でも、男の子は、皆の元へ行きたいと言いました。

 神様も最初は拒みましたが、男の子の強い気持ちに負け、外へ出してやりました。

 ただし、『感神(かんしん)』という身分は変えない約束で。

……………………と、書いてあるのです」


 ふぶきは本をぱたんと閉じる。

 足を組み顎を持って愛歌は「うーん」と呟く。


「難しいわね。村の歴史は」


「そうなのですか?」


「え、俺もそうは思わないけど」


 ふぶきと飛夜理の台詞には!?と目を丸した。

 なんだかアンタたちとは生きてる世界が違う気がするわ……と愛歌は心の中で嘆いていた。


「意外と愛歌、頭悪いのですね」


「うるさいわね。とりえず貴女自身………時神としての考えを言いなさい。」


「…………この村は前に舞菜が言ってたように5人の神から成り立ちます。

 でもこの前の事件……忍事件は、私の別名を使い殺人を起こしました。死がわかる、つまり祟は姫にも知れるとも知らず。ですが、他の死は決まっているものではありません。神が定めたのは『感神のきずな』と『死姫の愛歌』だけです。

 ただし、昔の事件が終ったことで全てが神の中で『リセット』になったのです。」


「そうだね、ふぶきちゃん。あってるよ」


 割り込んでくる声に反応してふぶきはとっさに後ろを向く。

 きずなはやぁ、とドア際で手を振っていた。


「あってるって……きずな…」


「合ってるんだよ。ふぶきちゃんの言い分は合ってる。

 ただ、僕が思うのはね、神は大人たちが都合のいいように造り上げたものだって今まで、今も思ってるよ。」


「きずな…………」


「僕だって普通の子供なんだから」


 きずなは笑顔でそう言った。でも、どことなく、寂しそうだった。

 教室にいるきずなはとても楽しそうには見えていた。ふぶきだけはその先の感情も見えていた。


「とりあえず、行こう。今日は…………………」


 きずなが何か言おうとすると冷たい風がざぁっとふく。

 そして、またきずなは口を開いた。


「合同体育祭だよ!」

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