FILE38 遠い親戚
さて、そんなわけで三人は、希が経営する小さなカフェに来ていた。
中にお客さんもそこそこ入っていたらしく、希も楽しそうに客と話をしている。
「いらっしゃいませ~♡って、あら♡」
「こんにちは…………。居たんですね、希さん」
嫌そうな飛夜理に希はニコニコと笑って「そうよ♡」と答えた。
何はともあれ、3人は席に案内された。
「悠志はいつものよね♡飛夜理たちはどうする?♡」
「私、ココアでいいわ。」
「じゃあ、俺も………それでいいです。」
二人は明らかに適当ではあった。
だが、希は快く笑っては~い、と厨房へと歩き出した。
「いらっしゃ~い。」
希と入れ違いに厨房の方から聞きなれた声がした。
「瑠衣…………。あんた、なにしてるの?」
「にひひ、アルバイトだよ~。」
愛歌は、「何故に」と言いたげな顔をした。聞かずとも、瑠衣は勝手に話し出した。
「あたしさ、希姐さんと遠い親戚なのよ~」
「!?」
「母方のじいちゃんのじいちゃんのそのまたじいちゃんの姉だか妹だかの娘さんらしいんだ~」
「確かにちょっと遠いわね………。」
現家だけはコロコロと街も雰囲気も世代も変わる。外の集落に行くことも出てくる。だから、現家の人間はそれがあり得てしまう。
「にしても愛歌さぁん。君こそなにを?」
「いろいろあるのよ。」
愛歌は明らかに話したくなさそうだった。瑠衣は「ふぅん」と言ってニヤリと笑った。
すると、表情が変わらない希が後ろからにゅっと現れた。
「あら、瑠衣♡どうしたの?♡」
「姐さん、愛歌たちが珍しくここに来た理由を聞いてたんだよ~☆」
「まぁ♡」
この二人が遠い親戚と聞いたが、なんだかすっかり納得してしまった。
空下村に来るのは、大抵が誰かの血筋であったりする。直結でなくとも、母方であったり、父方であったりするのは、その家の事情だ。ただ、瑠衣と瑠亜の場合は、【若尾】という苗字を見たことがないので、まったく心当たりのない者だった。
それがまさか、希の親戚、血筋であったことに衝撃を受けた。
「姉貴~。姐御~。いるか~」
「あら♡瑠亜~♡いらっしゃい♡」
「いないかと思ってたぜ……。メールしたの、知らないだろ?」
瑠亜が突然、店に現れた。全く、と、呆れた表情を浮かべながら。
すると、愛歌はふと、「ってことは瑠亜もか………」とぼやいた。
「ん?何がだ?」
「いえ。なんでも」
それを聞いた飛夜理は首をかしげていた。全く持って読めない奴である。
「瑠亜~、もうちょい可愛いゴムないわけ~?♡」
希が瑠亜にそう言う。瑠亜は当然にあるわけないだろう、と反論した。それを聞いていた悠志がはっと、何を思い立ったのか、シュシュを取り出した。
「悠志、待って、あんたなんでそれ持ってるの」
愛歌が鋭いツッコミを入れた。
「いやぁ……瑠亜に似合うかなって………」
「そうか、悠志の家は雑貨屋か………じゃなくてだな!!?」
騒がしい………なんて思いながら、愛歌はお冷の水をすする。
しばらくすると、いつの間にか厨房に戻っていた希が、いつの間にか帰ってきた。
「ふふふ~♡希さん特製みっかんパフェ~♡」
異様にテンションが高い。希は楽しそうにこちらにやってきた。
甘そうな白いクリームに鮮やかなオレンジがよく映える。そして、クリームとアイスの上には猫の絵(にゃんの助のつもりだろうか)のビスケットが乗っていた。
毎度愛読ありがとうございます。
これが2015年最後の更新ですねぇ………。一年が短かったです。
五年目の節目に当たり、たくさんの人の支えの大切さを知る一年でした。
空下は盆と正月がいっぺんに来たような世界で明るい世界観に頑張って目指します。あ、ただ、来年は、来年こそは、色々書きたい過去編を書きます。
それでも盆と正月はいっぺんに来ます。また年明けに活動報告書きます………。
さらば、2015年。こんにちは2016年。
皆さん、良いお年をお迎え下さい。そして、良い年になりますように。




