FILE27 全てわかってる
希の誕生日なんて何年振りに祝うんだろう、と愛歌は希の居る方をぼーっと見据えた。
「…………おめでとう。希。」
その愛歌の声は小さ過ぎて聞こえたかすらわからなかった。
「愛歌♡どうかしたの?♡変な顔ねぇ♡」
「失礼な………。黙って待っててよ………。」
そう、今はもあらがサプライズ………の用意をしているので愛歌と希はそれを待っている状態である。愛歌は、サプライズは希には効かないのではないか、と思っていたが、何処までできるのやらと楽しそうに見ていた。
「愛歌だから、言うけど、私全てわかってるから♡」
「うん。だろうね………。」
「ただ、私、皆がこうして用意してくれるのが嬉しいの。………あの子達は、妹みたいな存在だから♡」
思いがけない希の言葉に愛歌は目を丸くした。それから小さく笑ってそうか、とだけ答えた。
「もう、素っ気ないわね♡」
「希姐ー!愛歌ー!出来たぞ!」
もあが呼びに来たので二人がついて行こうとしたとき、希が「さっきのことは内緒ね♡」と小声で言った。
「内緒か………。私、口軽いのよ。」
「嘘よ♡口が軽いなんてう・そ♡」
あ、そうだった。こいつに嘘は通じないんだ。と愛歌が悟ると、でも、喋ってやると心に密かに決めていた。
そして、またもう一度もあに呼ばれたので、愛歌たちは教室に入って行く。
入った途端に、クラッカーのぱん!という音と火薬の臭いが鼻に付いた。
「希さん誕生日おめでとうございます!!!」
希はその声を聞いて一瞬目を見開いたが、またいつもの顔になり「ありがとう。」と笑っていた。愛歌からみると、いつもの希よりずっと笑っているように見えた。
「って♡飛夜理と悠志可愛いじゃないの♡」
いつもの希だ、とその途端皆はそう思った。飛夜理も悠志も仕方ないよなという顔をして大人しくフリフリとした可愛らしいメイド服を身にまとっていた。
「希姐さん、喜んでるね。」
「そうだな。」
そんな話をこそこそ真吾ともあが話していると、「まぁ、私はもあと真吾がどうにかこうにか運命を受け入れたらもっと嬉しいのに♡」と希の声が聞こえた。
「理事長!!この二人止めて!!」
「めんどうじゃの。」
「理事長ォォォォ」
バタバタと用意していたせいか猫のようにはねた黒髪の創の髪が二人を止める為にまだバサバサになっていった。
「飛夜理、悠志、ありがとうね♡」
「希さん………」
「礼を言うなんて珍しい」
「失礼ね!♡こちょこちょ攻撃〜♡」
小柄な悠志にはあっさり攻撃された。が流石に希と頭半分くらい違う飛夜理は希もどうにもできなかったらしい。
賑やかな誕生日プレゼントね、と笑って希は呟いた。
「そういや、菜城さん達、なんで住み着けるんですか。」
飛夜理が私の疑問を先に聞いていた。
「あ?………わしら、夏休み」
「「あー………。」」
嫌な表情が顔にでてたのか、「嫌そうな顔しないでよー」なんとたぴ先生に言われた。
「嫌じゃないけど、嫌じゃないけど………。その、なんか、不思議で………。」
そうか?と二人は不思議な顔をしている。
「みんな、みんな、息抜きの一つも必要なのよ」
珍しくまともなことを言った菜城愛さん。飛夜理も私も、顔を見合わせた。
同感だ、と私が言おうとした時、「正確には飛夜理と悠志を愛でに来たんだけどね。」と言うので持っていた鞄をつい投げつけた。
「へぶしっ」
「あ、愛歌!?」
いってぇなぁと言いながら鼻をさする菜城愛さん。それを見て、たぴ先生は「自業自得やな」と笑ってみていた。
「…………何をしに来たんだ、この人たち………」
「さぁ?」
飛夜理と私はそんな自問自答をしばらく続けることになりそうだ。




