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あれは、いつの日だったのだろうか。
私が高校3年生の先輩、藍浦さんと初めて出会った日。顔も名前も知らない先輩が何気ない顔をしながら「来て。」とそんな一言を言い、私の手を引っ張って屋上まで連れられた日。
私は突然のことで困惑しつつもついて行ってしまった。
屋上に着くと藍浦さんが「やっぱり…。」と小さな声で呟いて、私のほうを向き直る。
藍浦さんが私のほうをまじまじと見るので、私は目を逸らし少し気まずそうにしながら、
「す、すいません。私に何か用があるのでしょうか?」
と、私のほうから切り出した。
すると藍浦さんは、何の前置きもなくこう言ったのだ。
「私と、付き合ってくれない?」
私はそんな突拍子もない言葉に思考がしばらく停止する。私が返す言葉を考えていると、
「やっぱり、いいや。さっきのことは忘れてくれない?」
藍浦さんがそう言って屋上から出ようとする。
私は何か言おうとしたが、「え、その、あの。」と言葉が詰まったようなぎこちない返ししかできなかった。
次の日になってクラスの友達に昨日のことを聞いたところ、藍浦さんは学校で一二を争う美女と言われているらしい。
どうやら友達が私が知らなかったことに驚くほどの人のようだ。
確かに容姿は良かった。
ただ、何かを抱えていそうな雰囲気も同時に感じ取れるような人だった。
そんな雰囲気を感じたからか、私はその藍浦さんのことが気になりだしたのだ。
今日も私は藍浦さんのいるクラスを覗いては昼食を誘ってみたり、話しかけてみたりしているが、前の時とは打って変わってそっけなくなってしまった。何を言っても、
「そう。」「あ、そうですか。」
私がこんなに藍浦さんに執着しているのは、自分と同じような人なのかもしれないと思ったからなのだろう。
「今日も断られちゃった〜。つれないよね〜。」
「それは、アンタが話しかけ過ぎなんじゃないの?しかも、アンタが藍浦さんに惚れるって、どうかしてんじゃないの?」
「別に惚れてるわけじゃないよ。ただなんか惹かれただけだよ。」
「それを惚れてるっていうんだよ!」
そんないつも通りの会話をして、昼休みが終わる。
午後の授業を受けた後、私は一直線に藍浦さんの靴箱に手紙をおいた。
内容は、「屋上に来てください」というだけのものにした。
私が屋上に来てしばらく待っていると、屋上の扉がゆっくりと開く。
藍浦さんだ。
しかし、藍浦さんは私を見た瞬間、屋上から出ようとした。
「ちょっと待ってください!」
私は焦り気味で藍浦さんを呼びとめる。
藍浦さんは少し間を空けて、
「迷惑なんです。話しかけられるの。あの時のことなら、私は何も言ってません。」
と苦し気味で言う。
「屋上に来てもらったのは、一言だけ伝えたかったからです!」
そう、私が言いたいのはあの時の返事ではない。
あの時初めて感じた違和感、いや私と同じ匂いがしたから。
私はそう言って一拍空けて、
「死ぬの、付き合ってくれませんか?」
と、言った。
藍浦さんは、ただその言葉を聞いてしばらくした後、何か決心した目をしてこう言う。
「わかりました。いいですよ。」
と。
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