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見えない名簿

作者:朝霧颯
最新エピソード掲載日:2026/08/05
地方都市・川ノ瀬市の市役所で、労働相談を担当する三浦梨沙。

賃金未払い、長時間労働、職場での嫌がらせ。
次々と持ち込まれる相談に向き合いながらも、調査権限を持たない梨沙にできるのは、別の機関を案内することだけだった。

そんなある日、相談窓口に差出人不明の音声データが届く。

「助けて。名簿から消される」

声の主は、食品加工工場で働いていた外国人技能実習生、チャン・ドゥック・アン。
しかしアンは、その音声を残した直後、勤務先の寮から姿を消していた。

会社は「自分の意思で逃げた」と説明し、警察も事件性を認めない。

だが、アンの同僚グエン・ミンは、彼が無断で失踪するはずがないと訴える。

梨沙と地方紙記者・樋口颯太が調べ始めると、勤務表から消された残業時間、毎月変わる給与支払会社、正体不明の送迎ルート、帰国したはずなのに別の工場で働く人々など、不自然な事実が次々と浮かび上がる。

一方、SNSでは「外国人による集団逃亡」「治安悪化」といった偽情報が急速に拡散され、街には排外的な空気が広がっていく。

市役所には抗議が殺到し、ミンの寮には石が投げ込まれ、梨沙の家族までもが分断されていく。

やがて梨沙たちは、複数の企業と架空会社をつなぎ、労働者を名簿上から消したまま別の現場へ移送する、巨大な偽装雇用ネットワークの存在に近づいていく。

企業、行政、報道、SNS。

街を支える仕組みのすべてが、見えない労働によってつながっていた。

失踪したアンは、どこにいるのか。
誰が人々の名前を消しているのか。
そして、正義を公表したあと、街で働く人々の生活を誰が守るのか。

一人の失踪事件から、社会の奥に隠された労働の闇を追う、社会派サスペンス×ヒューマンドラマ。
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