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■ Ep.101 第57.9話:幕間【学園会議】~賢すぎる次女の憂鬱~

【第57.9話(Ep.101):まえがき】

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!


学園祭の喧騒、そして黒の使徒との死闘を乗り越え、物語はいよいよ大きな節目を迎えます。今回の第57.9話をもちまして、【第5章:学園祭・聖教会編】が堂々の完結となります!


前回、聖教会や影の公爵による不穏な動きが描かれましたが、コタロウの周囲で最も「実力的」かつ「直情的」に動いているのは、やはりこの方――パトロン・クラウディア様でした。


今回は、彼女がコタロウとの「安眠ライフ(?)」を守るため、そして彼を独占するために仕掛ける、あまりにも用意周到な裏工作が描かれます。エリートコースである占星政経学部を捨て、わざわざ「ゴミ捨て場」と揶揄される精霊学部へ転部してまで狙う、彼女の真意とは?


嵐の前の静けさ……ならぬ、**「さらなる嵐の準備」**が整う完結回をお楽しみください!

【Ep.101 第57.9話:本文】

1. 生徒会室の密談


放課後の王立精霊学園。

茜色の夕日が差し込む生徒会室は、静謐な空気に包まれていた。

最高級の茶葉の香りが漂う中、マホガニーの執務机を挟んで向き合っているのは、この学園の生徒を統べる二人の令嬢だ。


一人は、優雅に紅茶を啜る生徒会長――ローゼンバーグ公爵家の長女、セシリア。

そしてもう一人は、副会長であり、先の学園祭で数々の騒動(と伝説)を巻き起こした次女、クラウディアだ。


「……それで? 修学旅行の班分けは、貴女の『希望通り』になったのですね?」


姉のセシリアが、呆れたように書類に目を落とす。

そこには、2年生の修学旅行の班分けリストがあった。


**【第1班(特別警戒班)】**

* 班長:クラウディア・フォン・ローゼンバーグ

* 班員:神木コタロウ

* 班員:リリス・フレアガード

* 班員:篠宮アヤネ

* 班員:モモ


「ええ、当然ですわ。 職権乱用? いいえ、これは『危機管理』です」


クラウディアは眼鏡の位置を直しながら、涼しい顔で答えた。


「コタロウ様は今や、聖教会からも、裏社会からも注目される『特異点』です。 一般生徒と混ぜておけば、どんなトラブルに巻き込まれるか分かりませんもの。 私が責任を持って、24時間体制で監視デートします」


「……括弧の中身が漏れているわよ、クラウディア。 それにしても貴女、あれほど優秀な成績を収めていた**『占星政経学部』**を捨てて、わざわざあのFランクのゴミ捨て場と揶揄される**『精霊学部』**へ転部するなんて……。学部長が泡を吹いて倒れたと聞いているわ」


「当然ですわ。コタロウ様と正式にパトロン契約を結んだ以上、公私共に彼を支えるには同じ空気を吸い、同じ課題をこなすのが最短ルートですもの。占星術で経済の動向を読むよりも、彼のペン回しを隣で眺めている方が、わたくしにとってはよほど未来予知に長けた有意義な時間ですわ」


セシリアは溜息をつき、承認印を押した。

これで、コタロウの逃げ場は公式になくなった。


---


2. 予言と、身内の陰謀


「ところで、お姉様。 今回の行き先である**『浮遊島アトランティア』**について、気になる記述を見つけましたの」


クラウディアは手元のマナタブレットを操作し、一枚の古い石板の拓本コピーを空中に投影した。

それは、公爵家の書庫の奥深くに眠っていた、古代の予言書の一部だ。


『星巡る時、黒き蛇が空を食らう。 光の御子と、影の王が交わる時、封印されし災厄が目覚めん』


「……不吉な文言ね。 『光の御子』は、聖女アヤネさんのことかしら?」


「十中八九、そうですわ。 そして『影の王』……。以前なら魔王のことだと思われていましたが、今の状況を鑑みるに、これはコタロウ様のことではないかと」


そして、クラウディアはタブレットの画面を切り替えた。

そこに映し出されたのは、第57.5話でコタロウの元に届いた「黒い封筒」の画像と、そこに押された紋章――**『蛇の知恵オピュクス』**だ。


「この紋章……見覚えがありますわ。 ルミナス公爵家の影、**叔父様(ヴァルド公爵)**が飼っている、裏の実行部隊です」


セシリアの表情が曇る。

「……ヴァルド叔父様が? あの方は、王国の影の宰相。……まさか、コタロウ君を狙っているの?」


「ええ。叔父様は以前から、コタロウ様を危険視……いえ、『利用価値のある駒』として目をつけていました。 『黒き蛇』の予言通り、叔父様はこの修学旅行で『蛇の知恵』を動かし、何か大きな『計画』を実行するつもりでしょう」


クラウディアの声は冷徹だった。

彼女は知っている。叔父ヴァルドが、国の実権を握るためなら、姪の恋人(候補)だろうが平気で使い潰す冷酷な人物であることを。


---


3. 吊り橋効果と、叔父へのしっぺ返し


「あらあら。だとしたら、修学旅行は中止にするべきじゃない? 叔父様相手じゃ、分が悪いわよ」


「いいえ。むしろ好機です。あの方には、わたくしが『気まぐれな恋に現を抜かしている無能な姪』に見えるよう、既に学園内の情報操作ダミーデータは完璧に済ませてありますわ。生徒会の情報網を裏から操作すれば、叔父様の飼っている『ネズミ』たちに、わたくしの転部の真意やコタロウ様の真の実力が届くことはありません」


クラウディアは扇子をパチンと鳴らし、不敵に微笑んだ。


「叔父様は、わたくしが自らの言いなりになって動くと思っているのでしょう。 ……甘く見られたものですわ。 叔父様の計画シナリオすら利用して、わたくしはコタロウ様を手に入れます」


彼女はマナタブレットで別のウィンドウを開いた。

そこには、**【修学旅行・恋愛成就計画書 Ver.5.0】**というタイトルが踊っている。


* Phase 1: 叔父の手駒オピュクスの襲撃を利用し、吊り橋効果を誘発する。

* Phase 2: 古代遺跡の「閉じ込められイベント」で、密室での親密度アップ。

* Phase 3: 叔父の魔の手からコタロウ様を救い出し、「頼れるパートナー」としての地位を確立。

* Phase 4: 叔父の野望を粉砕した後、帰りの飛行船のデッキでプロポーズ(させる)。


「敵が身内だろうと関係ありません。 コタロウ様を『道具』として扱おうとする叔父様には、手痛いしっぺ返しを食らわせて差し上げます。 ……コタロウ様の隣は、このクラウディアの指定席ですもの!」


「……貴女、本当にブレないわね。 叔父様も、姪に寝首をかかれるとは思っていないでしょうね」


セシリアは苦笑し、紅茶を飲み干した。

優秀すぎる妹が、恋に狂って暴走機関車と化している。

彼女の完璧な計画デートプランには、すでに身内の陰謀すら織り込み済みだった。


---


4. 嵐の予感


窓の外、夕闇が完全に世界を覆い尽くそうとしていた。

遠くの空に、修学旅行で使う予定の巨大な魔導飛行船が、停泊しているのが見える。


「待っていてくださいませ、コタロウ様。 そして、覚悟していてくださいませ、叔父様。 空の上は、誰にも邪魔されない私達だけの楽園(戦場)……。 私の愛と知略で、全てを支配してみせますわ」


クラウディアは窓ガラスに映る自分の顔に、うっとりと、しかし猛々しく微笑みかけた。

その背後には、契約したばかりの女神ヘカテーの幻影が、楽しげに揺らめいていた。


地上ではクラウディアが叔父を出し抜く算段を整え。

天上では精霊王がフォークを構え。

正式に精霊学部の生徒となったクラウディアがコタロウの真横を固め。

そして闇の中では、叔父ヴァルドが「蛇」を解き放つ。


それぞれの思惑を乗せて、運命の修学旅行が始まろうとしていた。


(第57.9話 完)

【第5章:学園祭・聖教会編完】

【第57.9話(Ep.101):あとがき】

お読みいただきありがとうございました!

これにて、【第5章:学園祭・聖教会編】完結です!


「愛と知略で、全てを支配してみせますわ」……クラウディア様、もはやヒロインというよりは、コタロウを巡る「最終ボス」の一角に片足を突っ込んでいる気がします。

彼女がエリートコースを捨ててまで精霊学部に転部した執念、そして叔父であるヴァルド公爵との対立の背景には、この聖王国ルミナスの歪んだ**「血統の構造」**が深く関わっています。


ここで、読者の皆様にルミナス王家と、クラウディアの家系であるローゼンバーグ家のあらましを整理・補足させていただきます。


■ 設定補足:ルミナス王家と「名を奪われた」ローゼンバーグ家の構造

聖王国ルミナスの王家は、国家というシステムの「存続」と「リスクヘッジ」を最適化するため、血統を以下の三つの役割に分断しています。


1. 長男:レジナルド・ルーク・ルミナス(聖王国第16代国王)

王家本家の資産である「正統性」「土地」「軍権」を100%継承する**「独占者」**です。しかし、構造経済学的に見れば、独占は「統治能力の停滞」を招きます。競争相手がいない環境で育った彼は、人格の腐敗が進み、凋落しつつある王国の主因となっています。


2. 次男:レオポルド・フォン・ローゼンバーグ(クラウディアの父)

別姓の分家であるローゼンバーグ家の当主です。王家は将来的な「お家騒動(競合コスト)」を抑制するため、彼を**「臣籍降下しんせきこうか」させ、あえて王家の苗字を外しました。

彼は有力貴族として外部組織に王家の影響力を浸透させる「外交的楔くさび」として機能しています。しかし、この「ブランドのパージ(切り離し)」は、次女クラウディアに「なぜ我が家だけが名を奪われたのか」という強い認知的な疎外感**を与えました。彼女にとってコタロウへの過剰な執着は、奪われた王家という価値の代わりとなる「絶対的な所有物」を求める代償行為でもあります。


3. 末っ子:ヴァルド・フォン・ルミナス(王国の影の宰相)

兄に万が一(病死や不妊)があった際、即座に血統を補填できるよう、あえて苗字を保持させたまま待機させる**「予備軍スペア」**です。

経済的には「維持費」のかかる存在ですが、王家存続の保険として配置されています。しかし、「兄に何かあれば自分が王になる」というスペアとしての重圧と、無能な長男(国王)への危機感が、彼を冷酷な支配者へと変貌させ、次章にて大きな事件を引き起こすこととなります。


■ 今回の注目ポイント

クラウディアの転部: 経済学的合理性よりも、自らの疎外感を埋める「唯一の資産コタロウ」の隣を確保することを優先。


徹底した情報操作: 叔父ヴァルドを欺くため、自分を「恋に狂った無能な姪」に見せかける高度な情報戦。コタロウを守る盾としての彼女の優秀さが光りました。


いよいよ次章、逃げ場のない空の上で、この「血のスペクトル」が生み出した歪みが、アヤネ(贄)とコタロウ(器)を飲み込もうと動き出します。


【次回予告】

第6章:『修学旅行と古代遺跡編』開幕!

第58話(Ep.102):『雲の上の修学旅行! 飛行船は恋と陰謀の戦場』


舞台は地上を離れ、天空へ。

豪華飛行船の中、コタロウを待ち受けるのは、極悪不味いドリンク「マナビタンA」と、風の精霊王シルフによる手荒な歓迎シェイク

そして、逃げ場のない空の上で、ついに叔父ヴァルドの手先である「蛇」がその牙を剥きます。


次章も、より一層「不届き」な展開でお送りします。ご期待ください!


【作者からのお願い】

第5章完結までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマークや、下の評価欄から**【★★★★★】**で応援いただけると、執筆の大きな励みになります。


皆様の応援が、クラウディア様の「計画書」の解像度と、コタロウが次章で発揮する「サボり」のクリエイティビティに直結します!

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