26 新術
六月十四日・土曜日。
空き部屋の掃除をして、天気も良かったので布団やら何やらを干していると、隣のソフィ宅から爆発音が聞こえた。
「なんだなんだ! 大丈夫ですか〜!?」
「ハハハ! ハハハ!」
ソフィは高笑いをしながら黒煙の向こうから現れる。
「見てくださいよ、オオタキさん!」
日本語だ。
この数日のうちに、すっかり日本語をマスターしている。
すげー、と思った。
「それ、なんです?」
「じゃじゃーん。私が勤めている会社? のようなところで、話題になっている、光を増幅させる装置です。」
ソフィはまるで折りたたみナイフのようなそれを掲げる。一部分がガラスの筒になっており、そこに光る何かが収まっている形らしい。
そして、その光を浴びるのが本能的に嫌だった。
「大丈夫ですか? ……これはですね、実はイワテの高校生が作ったものなんです。その人はとても頭がいい」
「はい、けど。あの爆発はそれで?」
「はい。試しに作って……試運転をしてみたんですけど、『普通の光』じゃどうやら爆弾にしかなりませんね!」
「あらら。まあ、一朝一夕じゃいきませんよねっ!」
「ですね! あっ、いります? 中の光とかも……あっ、ほら、消えた。リンゴの皮むきとかに使えますよ」
「いいですね〜! あっ、リンゴといえば! 昨日買ったんですよ、こっちで一緒に食べませんかっ?」
「いいですね〜! そっちいきますね!」
折りたたみナイフのようなものを受け取り、小さくジャンプして塀を乗り越えてきたソフィを受け止め、縁側で守道のオートバイクを眺めながら、「免許とかほしいですか」「金かかるしなあ」と話し合っていた二人を呼んだ。
岩手のスイカはこの時期でも美味いが、八月ごろに産直で買うようなのは、大当たりが多い。
そういうことを話していると、「助けてくれ」と声がある。
「ごーめーん。俺ちょっと出てくるね。ほんとうにごめんね」
「いいよいいよ」
「怪我しないでね」
「いってらっしゃい」
「いやもう、ほんとうにありがと〜」
オートバイクに跨り、声の方に向かっていく。
途中でセレネに変形させて、さらにスピードを上げる。
そして、森の中で小学生三人を追いかける三メートル級の四つ目の兎を見つけると、バイクでその兎にタックルをかました。
「ぎ、い……!? じゃ、し……!!」
「君たちは逃げなさい!!」
子どもたちが逃げると、オートバイクから降りて守道は変身態になり、自殺波動の拳を叩きつける。
すると、兎は二体に分離し、片方が死ぬと、もう片方が強烈なキックを叩きつけてきた。
守道変身態は大きく吹き飛んだ。
勘弁してほしいな、と思いながら起き上がると頭の中に「生得怪異を召喚しよう」というような声が響いた。
人は怪異を持って生まれてくる。
まだ赤子ですらない魂の状態、その頃に数多いる怪異のうちの一体と契約を交わすのだ。
それが生得怪異だが、たいていの霊術師はこの生得怪異を武器にして戦う。
生得怪異の召喚方法というのは、手で「狐」をつくる一般的なものから、「蛙」をつくる少々玄人向けのものまである。
守道変身態は呼吸を整えてから、手遊びの要領で外向きの蛙を作ると、「来い」と囁く。
これを、「召喚霊術」という。




