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ドロットマン  作者: 蟹谷梅児
EPISODE 4
13/32

13 悲哀

 〈こおりやま〉に戻ると、小夜がいた。


「あれっ、お客さんまだいたんですねっ。お酒でお悩みですか?」

「あなたを待ってた、って言ったらどうする?」

「えっ? 照れちゃうなあ。ホント?」

「酒で悩んでたんだ」

「ですよね! 俺のアドバイス役に立つかな。ぜーんぶ! おいしいですよ! 試飲させてもらったことあるんですけど、これなんて結構すっきりと通っていくような辛口のやつで、日本酒なんですけど洋食なんかにも合うんです。お魚料理? とかです! よね! オヤジさん」

「元気だなあ、お前」

「俺、それだけが取り柄なんで」


 ぶいぶい、といつもの蟹のようなジェスチャー。


「君を見たら、なんだか安心してきたな。また来るよ。後日」

「はい、またあとで! まだお悩みのようでしたら一緒に悩みましょうね!」

「はは」


 小夜は守道の肩をぽんぽんと叩いて帰っていってしまった。

 小夜の乗る車が去っていくのを見送って、三郎が「お前モテるなあ」と言った。


「えっ、俺ですか? モテませんよ」

「嘘つけぇ。どうせ、高校生の時とかモテモテだったんだろ」

「いやあ〜〜。それないですね。あっ、でもなんか三年生の時に、バスケ部にいた後輩から聞いたんですけど、なんかちょっと自分の世界に入り込みすぎてる感じの子がいると、『大滝枠』って言われてたらしいです」

「そういう扱いなの? 可哀想……」


 明子も彼と同じ高校に通っているのだが、「尾田(おだ)空明(くうめい)」という同級生が大滝枠扱いされているらしい。


 妹として複雑な気持ちなのだと言う。


「でも俺ってあんまりマイペースとかじゃないんで、そこら辺はちょっとムッとしますよね。という感じなんで、俺モテたとかはないですよ。彼女も彼氏もひとりもいませんでしたし」

「わかったわかった」

「いませんでした」

「悲しいなあ」


 悲しいなあ。

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