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夏の午後〜海の残り・様々な存在と思い

1人で出来ることは思っているよりも少ない。

だから、人ばひとりではない。

夏の陽射し当てられて、1人ではないことが暑く、浮き上がる。

※この回はちょっとひと息です。夏休み編、もう少し続きます。

「やばいな。まちを、どうやら本気で怒らせたかも。」

 オレたちの車を見送りながら、いち兄がそう言ったらしい。

「マジか。え、それって、相当ヤバいんじゃね?」

 たく兄が聞いても、いち兄は黙っていたというから、相当深刻に感じていたんだと思う。

 オレの中で、まち姉といち兄がケンカとか、気まずくなってるとか、まったく覚えがなかった。

 オレより7歳年上の2人は、物心ついた時にはもう大人で。

 まち姉が早生まれで歳は一つ下だけど、同級生で。

 そりゃものすごく仲良しではないけど、お互いをちゃんと認め合って、リスペクトしている関係だと思っていた。

 でも、オレが小学生になったばかりの頃に一度、オレのことで、まち姉がいち兄にキレたことがあったそうで、なんと、その時には半年近く、オレはいち兄とたく兄に近づくことも出来なかったそうだ。

「今回はそんなことないと思うんだけどな。

 まち姉ももう大人なワケだし。ただ、アニキはものすごく、凹んでる。」

 次の日、電話をかけてきたたく兄がそう言った。

「でもまぁ、しばらくはちょっとおとなしくしてろ、っていうか、ウチには来るなよ、みー助。」

「わかった。なんか、ごめんね。いち兄にも、そう言っといてくれる?」

「ああ、伝えておくけど、みー助が謝ることじゃないし。お前は悪くないんだからな。そこはわかっておけよ。」

 なんていうか、みんな優しすぎる。

 今回のことも、それ以外の色んなゴタゴタも、全部、オレがいて、起きていることなのに、誰もが口を揃えて、オレは悪くないと言ってくれる。

「もうちょっと、しっかりしなくちゃな。」

 電話を切って、自分に向かって言った。

 昨日の輝の言葉で、自分じゃどう足掻いても、分からなかったことがわかった。

 原因や理由はわからないけど、やっぱりオレは、色んなことを忘れてるらしいこと。

 でも、それがわかったことで、気持ちがかなり楽になった。

 自分でもよく分からないことが突然、頭に浮かんできて、口に出してしまうことも、間違いじゃなくて、無くした記憶の中からくるものだとわかったから。

 輝と希良はこのことをわかっていたんだ。だから、今も全部受け止めてくれるんだと思うと、感謝しかなかった。

 でも、それとは別に考えることがあって。

「みー助は、あの2人のどっちが好きなの?」

 ちょっと前にたく兄に聞かれたことが、何故か昨日の夜、頭の中に蘇ってきて、それからずっと気になってる。

 友だちとしてじゃないって言ってたし、オレたちの距離が普通より近い、とも言ってた。

 確かにそうだと思う。

 いくら仲が良くて、一緒に布団を並べたとしても、あんな風に抱きしめたりしないと思うし、ましてやキスなんて、男同士でしないよな。

 それに、2人ともフザケてる様子はないし。

「きらきらの『姫ポジ』」

 K塾に行った時、村上さんにそんなことをれて、気になったオレは後で調べてみたのだけど。

「グループの中でメンバーに溺愛されたり、優遇されたりする存在。女子扱いされるわけではない。」ってあって、分かるような、わからないような?だった。

 溺愛とか、優遇?かどうかは分からないけど、大事にされてると思う。昨日だって、2人であんな息のあった行動でオレを郡司たちから遠ざけたのも、オレを守ろうとしてのことだったわけで。

「ダメだ。ちょっとストップ。」

 頭の中で考えがループし始めたから、声に出してそう言い、一度考えるのをやめた。

「ちょっと、図書館、行ってくる。」

 玄関でそう叫んで、家を出ようしたオレに、リビングから出てきた母親が声をかけた。

「みー、昨日、まちと何かあった?」

「え?いや、別に…何?」

 ちゃんと話した方がいいかな、と思いつつ、誤魔化すようにして、心の中で母親に謝って、そのまま家をでた。

 そうして、暑い中、図書館までの道をぶらぶら、歩いていたときだった。

「みずき!」

 図書館まであと少しのところで、声をかけられた。

 輝だった。え、まさかこの暑い中、待ってた?

「良かった。家まで行くの、ちょっと考えちゃって。来るかなと思って待ってた。」

 オレが聞くより先に、輝がそう言って、顔を見ると、真っ赤だった。

「な、何やってんだよ。真っ赤じゃん。ちょっとそこ、入ろ。」

 輝の手を引っ張って、図書館のロビーに入ると、隅の方の椅子がラッキーにも2つ空いていた。

 輝を座らせて、自分の荷物も置いて、自販機で冷たい紅茶と、コーラがなかったから、適当な炭酸飲料を買って戻ると、輝がハンディファンを出して涼んでいた。

「かがや、ほら、これ。コーラ、なかった。」

「あ、ありがと。」

 受け取ったペットボトルの蓋を開けて、輝がゴクゴクと炭酸飲料を飲む。

 輝のその、蓋を開ける時のキレイな指先、飲み物を飲む時に動く汗をかいた喉仏を見ていて、オレはなんだか、ドキドキしてしまって。

「バカなの?かがや。あんなとこで待ってたら、倒れるだろ。この暑さで。」

 照れ隠しでそんな悪態をついてみたけど、輝は何故かちょっと嬉しそうで。

「うん、バカだな、オレ。」

「ホントだよ。オレが来なかったら、どうするつもりだったんだよ。」

「でも、来たじゃん、みずき。」

 いや、だからさ…と言いかけて、思わず目を逸らした。

 輝があまりにも熱い目で、オレを見ていたから。

「かがやが、こんなバカなことするって思わなかった。てか、オレさっきから、バカって言い過ぎだな、ごめん。かがやみたいなハイスペックイケメンに、こんなこと言うの、オレくらいだな。」

「ハイスペックイケメンなんかじゃないよ。」

 輝の声のトーンが下がって、顔も下を向いた。

「オレは…みずきのことになると、いっつもバカみたいなこと考えるし、バカなことするし、昨日だって、あんな…。信じられないくらい、狂暴になることだってあるんだよ。」

「狂暴って。何かしたの?昨日?」

 オレの問いに、何か考えてるのか、しばらく答えなかった。

「きらが止めてなかったら、郡司のこと、ボコってたと思う。実際、殴りかけてた。」

 え、そんなことが?オレはこれ以上ないくらいに、目を見開いて、俯いた輝を覗き込んだ。

「あー、でも。思い出した。そうだったな。」

 そう、希良はあんな可愛い顔してるけど、一人っ子でちょっとわがままなところもあって、意外に短気だった。

 一方で、クールな雰囲気で端正な顔をした輝は、オレと同じ3人兄弟の末っ子で、いつも冷静というか、おっとりしていて、あまり怒らない。

 でも、いざ、何かあったときは、輝の方が徹底的にキレる。それはもう、手に負えないくらいに。

「かがやが怒ると怖いっての、思い出したわ。」

 笑うところじゃないんだけど、なんか笑えてきて。つい、ケラケラと笑ってしまった。

「笑うところじゃないよ。」

「いや、悪い。オレもそう思ったんだけど。なんか、すごいなぁって思って。かがやといると、どんどん思い出すからさ。」

 輝がやっと顔をあげた。

「そう、なの?それ、イヤじゃない?」

 オレは笑って首をふる。

「イヤじゃないどころか、スッキリして、ありがたいよ。まぁ、たまにね、体が付いてこない事、あるけど。」

 その言葉に輝が突然、オレの肩を掴んで、向き合った。

「今は?今は大丈夫?」

「うん、大丈夫。この前はさ、心配かけてごめんな。」

「あれは、オレが悪かったんだし。今、良いなら、それで良い。」

 体の向きを変えて座り直すと、ペットボトルからまた、ゴクゴクと炭酸飲料を飲んだ。

 そして、オレはまた、その様子を何故か、ドキドキしながら見ていた。

「そう言えば、なんか用があったんじゃないの?オレを待ってたのって?」

 そうだった。暑い中待っていたのには、何かあったんじゃないのか。

「あー、うん。そうなんだけど。」

 輝は何か言いにくそうだった。

「昨日、帰り際、あんなことになって、ちゃんと話せなかったから。ちょっと、会いたかったっていうか…。」

「え、まさか、そんなことで?あの暑い中、立ってたの?やっぱ、バカだろ、かがや。」

「なんだよ、それ。いいじゃん、会いたかったんだから。」

「いや、だったら、呼び出すか、ウチまで来ればいいじゃん。」

「そうは行かないだろ、昨日のまち姉の様子じゃ。」

「別に、かがややきらに何か思ってるわけじゃないんだよ。まち姉は。あ、でもそれ、オレもさっき知って…そか、そりゃ、ウチに来るの、考えちゃうな。」

「やっとわかったか。みずきのバーカ。」

「なんだよ、それ。かがやに言われると、シャレにならない。傷つく〜。」

「え、あ、ごめん。冗談。」

「こっちも、冗談。ごめんな。」

 オレが舌を出して笑うと、焦って謝ってきた輝が、ホッとした顔をした。

「良かった、嫌われたかと思った…。」

「え?なんで?こんなんで嫌いになるわけないじゃん。」

「そう…だよな、うん。変なこと言って、ごめん。」

 そう言えば…前にオレが気持ち悪くなって、トイレに駆け込んだ時も、輝はそんなこと言ってた。

 輝は、オレが簡単に輝を嫌いになると、思ってる?

 それはもしかして、オレが輝のことを忘れたから?

「かがや。」

「ん、何?」

 オレが輝や希良を忘れたのは、何があったからなのか。

 聞こうと思って、声をかけたものの、輝の顔を見たら、怖くなった。

 聞いたら教えてくれるかもしれない。でも、まだ、オレにそれを聞く覚悟も勇気もなかった。

「みずき?どうした?具合、悪い?」

「ううん、大丈夫。あのさ、昨日、かがや、オレのこと好きって言ったの、あれって…友だちとして、好きってことだよね?」

 自分こそ、何を急に、そんなこと。言っておきながら、オレも戸惑って、輝から、目を逸らした。

 輝はしばらく、何も言わなくて。

「そう、だな。うん。」

 やっと出てきた言葉は何も感情がこもってない、棒読みのセリフみたいだった。

「そか、そうだよな。うん。オレはさ、なんかちょっと、違う意味で言った気がしてて。」

「え?」

「あ、気にしないで。自分でもよくわかってないから。ごめん。」

 そう言ったオレは、輝の顔を見ることが出来なかった。

 一瞬、輝が何か言いそうな気配がした。でも、その何かは炭酸飲料と一緒に、飲み込まれてしまったみたいだ。

「そう言えば、みずき、図書館に来たんだよな?何かあったんじゃないの?」

 やっと話題を見つけた輝が、ぎこちない笑顔で、こっちを見た。

「そうだった。自分でもすっかり忘れてた。」

「なんだよ、それ。」

 ようやく、2人の間に自然に笑う空気が生まれた。

「いや、別に何もなくて。ウチにいると、煮詰まっちゃいそうだったからさ。それで出てきたんだ。」

 忘れてたことも、その理由も、なんか恥ずかしくて、苦笑いした。

「勉強はもう、たくさんしたし。かがや、時間あったら、アイス食いに行かない?きらも呼び出す?」

 立ち上がって、振り向きながら輝を見ると、なんか難しい顔していた。

「かがや?」

「あ、うん。大丈夫。アイス食いにいこ。でも、きらは呼ばなくていい。」

「え?」

「あいつの家、遠いし、暑い中出てくるの、大変だろ?」

 よくわからないけど、その言葉には、有無を言わせない何かがあって。オレは「そうだな。」と返すことしか出来なかった。

 昨日は希良より、輝のことが放っておけなかった。

 でも、希良のことを置いてきたことも、すごく気になっていた。だからホントは希良にも会いたかったんだけど。

初めはそんな予定なかったのですが、家族が結構出て来てます。高校生、しかも設定が地方都市なので、どうしてもねー。移動とか、必要で。

でも、家族仲が良い男子って、可愛いし、好きです。

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