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学園長はプレイヤーでした。

34話


宿に帰ってからリーナが手当てしてくれた。


「ミナトごめんね。私がすぐに動けたら良かったんだけど。あれを見た瞬間思い出してしまって動けなかったの。」


「大丈夫だよ。それよりリーナがまた眠れなくなることのほうが心配だよ。」


「それは大丈夫だと思う。ミナトが彼女を守ってくれたから。かっこよかった。」


「それならいいんだ。」


「またミナトの周りに女子が増えそうだわ。」


「それは心配しすぎだよ。」


「ミナトはその辺は鈍感ね。」


そんなことはないと思うんだけどな。


まあ手当も終わったし晩飯を用意しようかな。


厨房に行って、米を炊く。


その間に生姜をすりおろして、砂糖、醬油、酒、みりんと混ぜ合わせて薄切りにしたオーク肉をつけておく。


米が炊き上がったらつけておいた肉を焼いていく。


それをご飯に盛りつけて、最後にタレを温めて軽くかけて出来上がりだ。


今日は生姜焼き丼にしてみました。


料理長がすぐにとんでくる。


「おれにも食わせて。」


なんかグスタフみたいになってきたな。


仕方ないからどんぶりを一つ置いていく。


味噌がまだ手に入らないから代わりにわかめスープだ。


さてみんなのところに戻ろう。


テーブルに並べてお茶を用意してたらみんなが来たので食事にする。


「今日もミナトの飯は旨いなあ。」


ってリオンが喜んでいた。


片付けてお茶をすすっていたら、見たことある人が来た。


学園長のメリッサさんだった。


すまんと言って引っ張って行かれた先は宿のオーナー室だった。


「率直に聞こう。お前はプレイヤーだろ。」


「違いますよ。」


「違わないだろー。どう見てもあれは日本の料理じゃないか。」


眼が怖いですよメリッサさん。


「違いますよ。召喚されたものですよ。」


「なんでもいいよ。日本人なんだろ。」


「そうですよ。ていうかそういうメリッサさんこそプレイヤーですよね。」


「そうだよ。私は40年前に目が覚めたらこの世界にいた。そして30年前にここの学園長になった。」


「でも何でプレイヤーって思ったんですか。」


「部下から報告があった。客から旨そうなものを食ってる一団がいるんだが、どうしたら我々も食べられるのかという質問が殺到していると。それで見に行ったら丼を食べてるじゃあないか。そんなものはこの世界にはないんだ。」


だんだんメリッサさんが必死の形相になってくる。


「わたしがどれだけ求めたかわかるか。しかしなかった。自分でも作れなかった。絶望したよ。そして学園長になって金はあるのに美味いものはないんだ。そして閃いたイベントを開催したらそのうちにやってくるかもしれないと。そうしたら今日見つけてしまった。お願いだ美味いものを食わせてくれよ。」


肩をつかまれて前後に揺さぶられる。


「わかった、わかりましたからやめて。プレイヤーはただでさえ強いから揺さぶりがダメージに。」


「すまんつい自分が抑えられなかった。この部屋は防音だから安心しろ。」


何の心配してんのかわからないが必死なのは伝わった。


だから生姜焼き丼をそっと出した。


渡したらすごい勢いで食べだしてそして泣き出した、せっかくの美人が台無しだった。


「・・・・・・らだ。」


「なんか言いました。」


よく聞こえなかった。


「いくらだと言っている。お前はいくら出せば私の者になるかと聞いているんだ。」


「いやいや無理ですよ。俺にはまだやりたいことがありますからね。」


「そこをなんとか。やっと、やっと会えたんだ。料理を再現できるやつと。」


「・・・・・・そういわれても。俺の所属はエルウッドですから。」


「くそうエルフィナか。うらやましいいいいいいい。だがあいつは恩人だから手が出せん。」


この人飯のために何する気なの。


「とりあえずイベントにはラーメンが出ますからそれで我慢してください。」


「それは本当か。ラーメンだとなんて甘美な響きに聞こえるんだ。だがそれだけでは我慢できん。」


「わかりました。じゃあレシピを売りましょう。それでどうでしょう。」


「わかった。それで手を打とう。宿での売り上げと契約金をはらおう。」


「じゃあ明日料理長に教えときますよ。」


「よろしく。あと明日からのお前たちの飯に混ぜてもらうぞ。」


「いいんじゃないですかね。」


「あとついでにこれをやろう。」


そういって投げられたのは金のバッジだった。


「これは?」


「そいつがあるとこの都市の中はどこでも出入りできる。」


「どうもありがとうございます。」


「あ~それでだが今すぐ食えるものは他にはないか?」


とりあえず持っていたシチューとパンを渡した。


次の日朝の席に本当に来た。


とりあえずみんなには自由行動にしてもらって料理長に生姜焼き丼とふかふかパンを叩き込んだ。


オークは手に入らないだろうとボア肉でやってみたが生姜焼きなら問題なく食べられた。


おやつの前くらいには解放されたので市場を見ていると


「あっあんたは前にエルウッドでタコを買ってくれた兄ちゃんじゃないか。なんか若くなったな。」


「あ~その節はどうも今日はここで商売ですか。」


「一か所でやるのも厳しいからな。よかったら見ていってくれよ。」


そういうので見せてもらうと味噌があった。


「これは味噌ですよね。」


「兄ちゃん物知りだな。これはアヅチ帝国産の味噌だ。」


味噌を見つけた、これを買って分析すれば自作できるようになる。


そうしたらまたレシピが増える。


他には鰹もあるじゃないか。


「おっちゃん。米、醬油、昆布、味噌、カツオ、タコ全部もらうよ。」


「いいのかい。まいどあり。」


お金を払って、ついでに定期的にエルウッドに卸に来てくれるよう交渉しておく。


今はお金もあるし全然買える。


しかもイベントリーなら腐る心配もないし。


後はどこかで冷凍庫を作ってくれないかな。


ルンルン気分で宿に帰ったら、メリッサさんが待ち受けていた。


「これが契約書と契約金だ。」


見てみると契約金とは別に売上の15パーセントをくれるようだ。


契約書にサインして口座を教えておいた。


夜はせっかく購入したのでタコのアヒージョとカリッと焼いたパンを出してみた。


メリッサさんはお代わりをしまくったのでタコが一気に減ってしまったのだった。


その後、カティアだけ呼んで洗い物を手伝ってもらい少し外へ行く。


広場で後ろから抱きしめる。


「カティアは大丈夫かい。」


「昨日の件ですか。ありがとうございます。少し萎縮してしまいましたが大丈夫ですよ。」


「心配になってね。カティアはリーナに気を遣って我慢してないかなって。」


「ミナト様が守ってくれるって信じてますから。」


「それなら信頼にこたえないとな。」


「頼りにしてます。」


そのまましばらく一緒に時間を過ごしてから宿に戻った。


次の日の朝から追加料金でふかふかパンが食べられるサービスが宿で始まって注文が殺到しているみたいだ。


今日は学園で明日の発表会の抽選があるようだ。


明日は参加者全員の料理の審査が行われ、上位3つの品が学園で場所を用意されて残りの期間売り出せるらしい。


なので抽選のためにリオンと学園にやってきた。


歩いているとやたら視線を感じる気がする。


やはりリオンと歩いているからだろうか。


抽選の会場に向かっていると双子ちゃんが、アンジェリカさんとともにやってきた。


「兄様。お久しぶりですわ。」


「にい、おひさ。」


「おお、かわいい妹じゃないか。元気にしていたか?」


そういってリオンはリリスとリリイの頭をなでている。


「ミナト様、一昨日はありがとうございました。」


そうお礼を言ってくるアンジェリカさんの顔は少し腫れていた。


「大したことはしてないよ。それよりも大丈夫ですか?」


「はい。お気遣いありがとうございます。いつものことですので。」


そういう彼女の表情には陰りが見える。


あの王子はいつも彼女を殴ったり、蹴ったりしているんだろうか。


いつの時代も上の人間が横柄だと立場の低い側は苦労することになる。


彼女の場合は婚約者という立場だから余計に大変なんだろう。


エルウッド王国がそうじゃなくてよかった。


って考えてるうちにリオンと双子ちゃんが何か話していたようだ。


「兄様何とかならないかな。」


「ではお前たちと彼女で明日からのミナトの手伝いをしたらいい。学園長から生徒から手伝いを募ってもいいといわれてるからね。」


「でもエルウッドの名物で勝てるの?」


「それは余裕だろう。食べたらわかるさ。」


話しながら抽選会に参加した。


リオンが引いたのはDブロックと書かれた球だった。


まあどこのブロックであっても圧勝は間違いないと思うが。


その後はリオンと双子ちゃんとアンジェリカさんを連れて学園の食堂に行ってみた。


そこでみんなでローランディア王国の名物ブルのステーキを食べたが、塩コショウが効いていたが肉は硬くて顎が疲れてしまった。


でも3人をみると美味しそうにしているのでここでは美味しいのだろう。


リオンも微妙な顔をしている。


「あれ兄様はこれが好物じゃありませんでしたっけ?」


「ああ昔は好きだったんだが、前ほど美味いと感じないな。」


「兄様の好物が変わるなんてそんなに今のエルウッドの名物は美味しいんですか?」


「そうだなあれを食べたら全てが物足りなくなるだろう。」


「それはそうよ。私がずっと求めてきたものなんだから。」


突然会話にメリッサさんが入ってきた。


「学園長!」


「そんなに驚かなくてもいいと思うんだけど。」


「だって学園長は普段ここには来ないじゃないですか。」


「まあ、仕事であまり学園にいないからね。」


「今日はどうしたんですか?」


「ここにミナト君がいると聞いてお昼を作ってもらおうと思って。」


「えっ義兄様にですか。」


「そうよ。ねえミナト君、そこの厨房使っていいから何か作って。」


「・・・・・・そんなんでいいんですかメリッサさんは。」


「わたし学園長だし。何をしても許されるのよ。」


「にい。私も食べてみたい。」


「よければわたくしも。」


「はあ。わかりましたよ。じゃあ厨房お借りします。何かリクエストはありますか。」


「そうねぇ。じゃあなにか丼がいいわ。」


丼ねぇ、なにがいいかな。


厨房の中には炊き上がった米はあるようなのでコッコの親子丼にしよう。


一口サイズに切ったコッコに塩コショウをして出汁で煮込む。


そこに切った玉ねぎを投入してしばらく煮込む。十分火が通ったら卵でとじて完成。


ご飯をよそってかけて出来上がりだ。


最後に三つ葉を添えて彩りを。


5人に提供する。


丼なのでスプーンを渡すと一斉に食べ始める。


「おかわりよ、ミナト君。」


メリッサさん食べるの早いよ。


「はいどうぞ。」


「ミナト私もいいだろうか。」


「了解。はい。」


「兄様私も。」「にい。」「わたくしも。」


結局全員ですか。


「いいですよ。ちょっと待ってね。」


3人は少しご飯を減らしてから渡してあげた。


するとメリッサさんからもう一度丼が出された。


ありゃご飯がこれで最後だ。


「これでもう米がないから最後です。」


って言うとリオンが残念そうな顔して丼を眺めていた。


メリッサさんは満足そうに3杯目を搔き込んでいた。


食べ過ぎでないかい君たち。


「食べ過ぎた。」「苦しい。」「食べ過ぎましたわ。」


案の定お腹が苦しいとテーブルに突っ伏す3人。


リオンはまだいけそうだ、メリッサさんは元気に「また夜も頼むわ」って出ていってしまった。


そのまましばらく休憩となってしまった。


さてさて明日がどうなることやら。


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