673話 幽閉
「ふぅ……」
自身の両手を見つめ、ひとまず懸念していた難所を切り抜けたことでほっと息を吐く。
常時【飛行】を使用し、最後の接近時以外は常に上空にいるよう心掛けていたが、湧いた直後だけはその程度しか対策の施しようがなく、人喰いに堕ちる可能性があるとすれば先ほどのようなタイミングだった。
再び上空に避難し、大きく距離も取れている。
だが、まだ油断は禁物だ。
ここから食人願望とでも言うべき能力の影響が広がっていく可能性もあるため、すぐに行動へ移す。
――【広域探査】――『ウェンディゴ』
――【広域探査】――『ウェンディゴ』
――【広域探査】――『ウェンディゴ』
――【広域探査】――『ウェンディゴ』
「……獲物を探しているのか?」
【広域探査】レベル8の範囲は俺を中心に半径1600m。
その反応が拾えるギリギリの位置から断続的に【広域探査】を使用し続けていると、夜間の猛吹雪でまったくウェンディゴの姿は視認できないものの、反応の位置ズレから狩場を素早く移動しているであろうことが分かってくる。
範囲型の攻撃能力を持つ分、機動性はそこまでだろうと踏んでいたので、ここまで激しく動かれるとは予想外だったが……
それでも捕まえる。
そのつもりでスキルを唱える。
――【結界魔法】――『防壁』――魔力『1000』
――【結界魔法】――『幽閉』――魔力『1000』
物理的な攻撃を防ぐ『防壁』は、人を堕とす要因が飛沫や雪を媒体にするなどの可能性を考え、念のために自分の周囲へ展開。
【結界魔法】Lv8で使用可能になる『幽閉』はウェンディゴの動きを制限するため、【広域探査】の反応を頼りに少し大きいモノをいくつか発動させる。
ちなみに『幽閉』の効果は、結界魔法の中でもかなり特殊だ。
結界外からの干渉に対してはなんら防御効果を生み出さないが、代わりに内側からのあらゆる強度を劇的に高めてくれるため、一時の間は結界内部の存在を閉じ込めることが可能になる。
ウェンディゴの反応を断続的に捉え――
――【結界魔法】――『幽閉』――魔力『1000』
――【結界魔法】――『幽閉』――魔力『1000』
「止まった……」
結界に接触して動きを止めた瞬間、より範囲を狭めて追加の結界を生成。
この流れを数度繰り返し、ウェンディゴの反応にほぼほぼ動きがなくなってきたところで、これ以上は泳がすつもりのない、本命の結界をお見舞いする。
――【結界魔法】――『幽閉』――魔力『5000』
元Sランクハンターだというジェネマスのカークスさんも、魔力を5000込めた幽閉は抜け出すまでに数分掛かっていたからな。
まあ半減したとはいえ表面上の知力が10000近くある俺が撃っているから余計にだと思うが、ウェンディゴはステータス数値が跳ね上がるボスと違って希少種という一般枠の魔物だ。
結界などものの数秒で破壊していく暗霧のような存在とは確実に違う。
だったらこれで終いだ。
――【多重発動】――【雷魔法】――『雷槍』
より威力を高め、かつ素早く着弾するように。
【多重発動】させた9本の雷槍を、同時に【広域探査】の反応が示す地点へと叩き込むべく準備に取り掛かる。
いくら魔力を最大まで籠めようと、ここまで距離が離れていては減衰してそう威力に期待ももてなくなるが、こっちは【魔法射程増加】がカンストだ。
手元に生み出した魔法の有効射程を伸ばすという意味合いももちろんあるが――
「これなら、逃げられないだろ」
手元ではなく、遠く離れたウェンディゴの上空に全ての雷槍を起発させると、暗闇の中を奔る巨大な光が耳をつんざく雷鳴と共に猛吹雪を貫き、地面に激しく突き刺さる。
さあ、来い!
期待通りの結果を……!
願いながら瞳を閉じ、視界の下部を流れるログに意識を向けていると――
『【狂爪】Lv1を取得しました』
『【雪嵐】Lv1を取得しました』
『【雪嵐】Lv2を取得しました』
『【雪嵐】Lv3を取得しました』
『【雪嵐】Lv4を取得しました』
『【伝染】Lv1を取得しました』
見覚えのないのスキルが3種も流れてきたことで、俺は押し寄せる様々な感情に耐えきれず雄たけびをあげた。
短いので今週は日曜日も更新します。











