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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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嘘は誰の為に 12

 装束宗のサトはガーランド達と共に第一島からの脱出を試みようとしており、第二島への架け橋まであと五キロの所まで来ていた。

 要人を守りながらの移動に正直時間を掛け過ぎてしまった所までは予測通り、烈火の英雄の足止め役に多くの人員を割いてしまったのは予定外だった。

 烈火の英雄の戦闘は第一島全体に火災を発生させ、その火災は予想以上に被害を出している。

 それ以外にも分派の主力があちらこちらに散っており、総理のいる国会ビルは完全に制圧されてしまった。


 あと少しでたどり着けるのに、橋を分断している白い結界をどうにかしなければならないが、本流との連絡をしていたサトにはあらかじめ外で作業が行われている胸を各首脳陣などに伝えていた。


 心の中で何度も「あと少し」と言い聞かせながら確実に、安全を確かめながら確実に第二島への架け橋へと進んで行く。

 主力は完全に中心から外側へと進行しており、こうしている間にも後方から近づいてきているのが真実。


 烈火の英雄が確実に後ろから近づいているのだと思うと早くこの場から去りたいが、移動手段が無いこの現状において歩いて逃げるしかない。

 首脳陣の殆どは疲れ切っており、唯一疲れていないのはアメリカ合衆国大統領ぐらいだった。


「さて……サト君とやら。私には先ほどから烈火の英雄という人物を見ないのだが?」


 サトとガーランドは急いで後方を確認してみるが、確かに後方には既に烈火の英雄の姿は無い。

 先ほどまでは確かに後方で戦っている姿を見ていたし、残っている戦力を考えても正直抑えられたとは到底思えない。


「何か策があるのかもしれません。正直早めに橋を渡りたい」

「しかし、あの白い結界が残っている以上追い詰められる状況に行くのはお勧めできないぞ。サトとやら。何せ一緒にいるメンツの殆どはまともに戦えないぞ」


 大統領の一言は非常に正しいとガーランド黙って頷いて見せる。

 実際一緒に逃げている人間の殆どは一般的な民間人ばかり、戦闘できるメンツも殆どは足止めの為に殿をかってでた。


「これ以上戦力を減らしたくはない。いつになったらあの結界が解けるのやら」


 ガーランドがどこか不満げにしていると、結界が上から少しずつ塵のように消えていき橋の向こう側が見えてくる。

 民間人の何人かが元気よく走り出し、橋を渡ろうとするのだがそれをサトとガーランドが引き留めようとした瞬間。

 ガーランドの背筋に嫌な汗が、全員の全身に熱風のような不思議な感覚を得た。


「行くな!」


 時は既に遅い。

 橋を渡り始めていた三十人ほどの集団が炎の竜巻に巻き込まれていくのが遠くからでも見えた。

 ガーランドが舌打ちをしながら駆け出していき、サトも負けないように走り出す。

 丁度橋のど真ん中で立ち尽くし、進路の妨害をするように烈火の英雄事ギルフォードが現れた。


「ここから先は行かせない。お前達を逃がすなというのがフォードからのオーダーだからな」

「大統領たちは後ろに下がっていてください。サトとやら。戦えるか?」

「勿論です。しかし気を付けてください。あの男かつて分派の主力隊五十人をあいてにして互角に戦った人間です」


 ガーランドとてその程度は出来そうな気がするが、しかし炎を操るというのは確かに厄介だというのが率直な感想である。

 空気を攻撃手段とする『風』、水を攻撃手段とする『水』などとは違い『火』や『雷』というのは魔導機の特性上非常に難しい。

 なので対処法も非常に難しくなる。

 出来ないわけではないが、ガーランドからすれば「こういう相手はアベルの方が得意なんだが」とか思ってしまう。


「後ろからも追いつきつつあるようだね。ガーランド君にサト君。おおよそだが多分三十分で決着をつけないと我々の負けだね」


 大統領の落ち着いた声色にある意味安心感すら覚えるサトとガーランド。


「随分落ち着いておられるのですね。あなたは我々に襲われるという自覚が無いのですか?」

「う~ん。何だろうね。私はね………彼が来てくれそうな気がするんだよ。ソラ・ウルベクト君ならね」

「ありえないと思うがな。戦力上あの少年はこの先の第二島にいるだろう。ならここまで来るのに時間がかかるはずだ」


 そうは思わなかったのはガーランドである。

 この先の担当になっているのはアベルだろうと予想していたし、ソラならここに来るかもしれないという予想をたてている。


 ソラが来るまでの間ここで時間を稼いだ方が良いだろうと思うし、まだ自分にはここでやるべきことがあるはずだとも思うガーランド。


 大剣を真上に構えたまま立ち尽くすガーランド、そのガーランドを見ながら二本の剣を強く握りしめるギルフォード。

 サトも右手に逆さ持ちのまま剣を握りしめる。


(この大男……隙が無い。下手をすると単純な戦闘能力だけなら俺よりよっぽど上……というか三将の中でダントツじゃないのか?)


 ギルフォードの予想は決して間違いではない。

 ガーランドは三将でダントツであり、他の追随を許さないほど強い。

 その強さは単純な体格と重さを利用した戦術、ガイノス流を下地にした独自の剣術の強さでもある。


 無論サトもまあ実力だけで言えば装束宗の中でもトップクラスの実力者、しかしこの場合はこの二人の戦いに真っ向から介入できるほど強いわけでもない。

 あくまでもサトはサポートに専念する。


 初めに動いたのはギルフォード、二本の剣を逆さ持ちに変えて剣をアスファルトに擦り付けて摩擦熱を利用して発火させる。

 そのまま発火させた火を炎に変えていき、そのままそれを斬撃に変えてガーランド後方の民間人を狙う。


(いよいよ民間人にまで被害を出す事に躊躇いを持たなくなったのか。一年前……わたしが止めていれば)


 サトは駆け出しながらもギルフォードの変貌に驚きを隠せずにいた。

 斬撃を逆さ持ちの剣で切り裂きながら一旦防ぎ切り、ガーランドは素早く地面を蹴ってギルフォード目掛けて大剣を振り下ろした。

 アスファルトを蹴って自分の体を一旦後ろに引くギルフォード、そのままガーランド目掛けて剣を振ろうとするのだが、ガーランドはアスファルトを使って剣を反射させて攻撃を仕掛ける。


(そんな攻撃手段があるのか!?魔導機を使ってアスファルトを反射用の素材に変化させたのか!? そんな手段があるのか!?)


 攻撃を仰け反る形で回避し、ギルフォードは再び体を後ろへと跳躍させガーランドは回り込む形で横なぎに大剣を振る。

 しゃがみ込んで攻撃を回避し、ガーランドの顔面目掛けて剣を突き刺そうとするが、ガーランドはその攻撃を首を捻って回避するが、かすかに剣先がガーランドの頬を傷つける。


(フム。単純な剣術というよりは独学で学んだ武術だな。いや、まだ全力ではないというだけだな。というよりは私の攻撃が激しすぎて本気を出せずにいるという事か?)


 ギルフォードは手加減をしている場合ではないと素早く切り替え、剣先に炎を纏わせようするが、それをサトが邪魔する為に剣をギルフォードに向かって投げつける。

 しかし、その剣はギルフォードの目の前で溶けてしまう。


「剣が溶ける!? 今までそんな力を」


 炎の球体を創造しそれをあとは前面に打ち出すだけというタイミング、ガーランドは正直自分が体を張るしかないかと舌打ちをしたその瞬間にギルフォードの体を誰かが吹き飛ばした。


「痛た………ギリギリセーフかな?」


 正確には蹴り飛ばした『ソラ・ウルベクト』がガイノス軍のジャケットを着た状態で立ち上がり、全身の埃などを叩き落とす。


「全く………もっとうまく着地できんのか? アベルはどうした?」

「第二島の担当のはずだけど詳しくは知らないよ。それより早くこの先に移動した方が良い。烈火の英雄は俺が抑えるよ」

「それはいいが。お前鎧はどうした?」

「使えないことも無いらしいんだけど………ちょっと考えていることがあるからさ。ガーランドさん、俺がこの男の足止めをするから後方から近づいてくる主力の足止めを任せてもいい?」


 ガーランドの目をまっすぐ見るソラ、ソラの後ろを多くの民間人が通り過ぎていく。


(少し見ない間に男の顔つきになったな。ウカウカしているとアベル所か私も追い抜きそうだ)


「サトとやら。お前は民間人と要人の警護を頼む。私は来た道を引き返して主力の相手をする。ソラ! そっちは任せるぞ」


 サトは黙って民間人と要人を追いかけていき、ガーランドは来た道を引き返していく。

 立ち上がるギルフォードを睨み返すソラ。


「来いよ! 一人の人間として立ち向かう。ここにいるのは英雄でも学生でもない」

「後悔するなよ!!」


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