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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー《下》
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薬品管理センター攻防戦 12

 真っ白な床は天井の照明を反射しており、九個の柱が大広間を支えている。

 大きな大広間に足を踏み出す俺の体は完全にずぶ濡れ状態、俺の目の前に青髪の男性が大きな鉄のドアの前に立っている。

 いや、守っているといった方が良いだろう。


「このセンターに来る人間でここまでやってくる人間はいない。何故ならこの場所はセンターで一番セキュリティが高い場所……ではなくこの前が一番火災が酷い場所だからだ。それを知っているからこそ尋ねよう。どうしてここだと思った?」

「烈火の英雄がこのセンターを襲撃したのなら、正面玄関辺りで会いそうだったし、それに火災を引き起こすだけが目的なら少々ショボいといってもいい。ならこの火災は目的ではなく方法の一つだっただけじゃないかって」

「なるほど……まさかそこに気が付くとはな」

「だから聞きたい。烈火の英雄は?」

「本作戦には関わっていない。あいつは別の作戦を実行している最中とだけ言っておこう」


 別の作戦。

 その辺が一番気になる所ではあるが、この際気にしないことにした。


「ここで何をしているって聞けば教えてくれる?」

「いいや。ありえないな」


 黒いスーツを着ている黒服の男はポケットの中から鉄板を仕込んでいるグローブを両手に装着する。

 あれでは攻撃を防御することは出来ないだろうし、何より攻撃力では少々心許ない。


「私に武器はいらない。しかし、君も少々気を引き締めた方が良い。私の相手はそんな事では務まらない」


 俺は星屑の鎧を体中に纏わせ、最後にマントが姿を現すと俺の背中からチクチクする感覚を得た。

 本能に従い横に大きく移動すると、先ほどまで俺のいた場所に黒い尖った何かが存在していた。


「影?」

「私の能力。影を使用した能力。言っておくが私は優しくないよ。回れ右をして一生我々に関わらないと誓えば君達に手出しはしない」


 まるで上からの言い方に俺自身はカチンとくる何かを感じた。


「フザケンナ。人を沢山殺しておいて……今更関わるなだと?あんた達が俺達を巻き込んだんだろ!」

「それについては私の所為ではないが……、まあそう言われてしまうと反論の余地はあまりなさそうだ。すまなかったな」


 何なんだ?その上からの言い方は。

 一回一回の言い方が物凄く腹が立ち、その度にストレスが溜まっていく。


「なんでそんな風に他人事みたいに語ることが出来る!? 人が目の前で死んでいて、殺し合っていることにあんたはそんな簡単な感情で済まされるのか!?」

「他人事だよ。他人に感情移入できるほど私は人間が出来ていないのでな」

「人間はそんなに簡単じゃないんだぞ!!」

「人間は簡単だよ。ナイフ一本で死んでしまうし、下手をすれば針が一本あれば殺すことだってできるさ。命とはそんなものだ。命を金で買う事だって出来るし、命を金で買い取らせることだってできる。命を複雑だと考えるのは……愚かな事だ」


 この男は単純に自分がそうしたいからという理由だけで人を殺す事が出来る。

 恐ろしい人間だと思った。

 俺は今まで色々な人間と戦ったし、色々な命と殺し合ってきたつもりだった。

 金の為に、滅ぼす為に、欲望の為に戦っていたが、そのほとんどは戦いうえである程度の誇りやプライドを持っていた者ばかり。

 金の為に戦っていた男だって結局でそのことに誇りを持って戦っていた。


 この男だけは違う。

 誇りも、プライドもこの男には存在しない。

 どこまでも自分勝手。


 この男がもし殺人で捕まったなら、警察の尋問にこの男はきっとこう答えるだろう。


『殺したかったから殺した』


 そう答えるだろう。


「あんたはどうして反政府組織に所属しているんだ?」

「ボウガンと同じ理由だな。そっちの方が面白そうだからだな。別段思想や理想にこだわり何てない。この国の経緯など私にはどうでもいい事だ。ボウガンは金。私はスリルさえ感じられればいい」


 自分勝手な理由だし、最低の理由だ。

 まだ金の為と言われた方が理解できる。


「アンタが最低の人間という事だけはハッキリわかったよ。手加減をしなくてもいいという事もな」

「私からすれば君がどうしてそこまでして怒るのかが分からない。目の前で人が死んだ。身内でもない人間が死んで君はどうしてそこまで感情移入できる?所詮他人だろ?」

「他人だったら人の命を奪ってもいい理由になると?」

「所詮他人だろ?それに感情移入は私には出来ないよ」


 俺の中で何かが切れた。

 この男は死ぬべきだ。

 真でもいい男なんだとそう思った。


 他人に対してここまで他人事を貫き通し、殺す理由だって他人本位の人間はそうそういないだろう。

 殺してみたかった。

 そんな理由で殺された遺族は何一つ浮かばれない。


「もう………いい!あんたは死ぬべきだ!」


 俺は大きく跳躍し飛ぶような速度で一気に距離を詰めていき、ほぼ同時に緑星剣を振り切っていた。

 男の胴体を真っ二つにしたつもりだったが、手ごたえがまるでなく男の体は真っ黒な影に早変わりし同時に横から声が聞こえてくる。


「フム。影踏みは効かないか………だったら少し作戦を変えてみようか」


 俺から一旦距離を取り、俺が再び距離を詰めようと右足に力を籠めると俺の喉元目掛けて男の影がまるで一本の槍のように襲い掛かってくる。

 緑星剣の腹の部分で受け止めつつ、体を一旦横に移動させながら間合いを図る。


 どうやら操作できる影は自分の影、範囲は影の大きさの分だけしか攻撃範囲を拡大できない。

 攻撃距離は近距離、伸ばせて中距離と言った所だろう。

 先ほどから天井の照明の位置を確認しながら戦っているので間違いない。


「攻撃範囲と距離を測られた……か。しかし、君はもう少し気を付けるべきだな」

「ソラ!しゃがめ!」


 シャドウバイヤの言葉のままに俺はしゃがみ込むと、俺の首があった地点に何か鎌のような武器が通り過ぎた。


「柱の影も操れるのか?」

「ソラ、今の場所から移動しろ!柱の影にお前の体が重なっているんだ」


 そうか、他の影に自分の影が重なっている場合、攻撃手段が増えてしまうんだ。

 俺は急いでその場から離れていき、いったん影の無い場所に逃げ出す。


「だけどさっきまでは影なんて無かったぞ!」

「照明の一部が落ちている!奴が意図的に落としているんだろうな。奴にとって有利な状況を意図的に作り出している」


 先ほどから左手をポケットの中に突っ込んだままにしており、モゾモゾと動かしている。

 実際俺の真上にある照明が落ちる。


 また照明のある場所に逃げていくのだが、行く先々に照明が落ちていきその度に敵の攻撃を掻い潜っていく。


「おかしい。どうしていっそのこと照明を全部落とさない?」

「落としたくない理由がある。ここはセキュリティの都合だろうが窓が存在しない。完全に証明を落とせば真っ暗になってしまう。視界を塞いでしまいたくないのだろう。最低限の視界を確保しなくてはいけない」


 攻撃をしようにも相手の姿を視認しなくてはいけないだろう。

 ここで俺が証明を一つ一つ落としてもいいだろうが、正直埒が明かないしその間に敵にとって有利な状況が続くだろう。


「ソラ。鏡を使え。そろそろ修復が終わった頃だろう。あれをまとめて使えば光で攻撃を無力化できるうえに照明を壊すこともできる」


 俺は右手の籠手のをじっと見るめて意識を集中させていると、俺は男の視界を塞ぐために鏡を俺の周囲に展開させて照明の光を俺の元に集中させる。


「太陽の鏡。俺に力を貸してくれ」


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