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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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嵐 2

「そういえばケビンさんは?」

「ケビンさんだったらガイノス帝国軍について行ったけど………?」


 俺が俺達の頭上を通り過ぎていく灰色の飛空艇の側面、ガイノス帝国の国旗である白い四つ足の竜と青が描かれており、その飛空艇が低音を鳴らしながら飛び去っていく。

 街のど真ん中で飛空艇を飛ばすなんて中々ある事じゃない、


 俺は小さな声で「飛空艇」と呟くが、その声を聴いている人物はエアロードぐらいだった。

 飛空艇。

 飛行機とは違い滑走路を必要とせず浮遊することが出来、形に一定性を持たないことから多くの国がその開発に色々な形を持ってきた。

 帝国の飛空艇は全体的に丸みを帯び、縦長に伸びている胴体と丁度真ん中から真直ぐ伸びている主翼と後ろに付いている尾翼が合計で四枚。


 そんな飛空艇が今合計三機が俺達の頭上を通り過ぎた。


「珍しいよな。街中を通り過ぎるって中々ある事じゃない」

「?ああ、飛空艇の事?そうだね。でも、さっき大学が襲撃されたばかりだし、要人輸送っていう事もあるだろうから」

「要人移送……ね。囚人移送の方が正しいんじゃないかって思うほど物々しい雰囲気の飛び方だな。しかし……おかしな襲撃だったな」


 侵入経路は不明、敵勢力の規模も不明。これだけ謎の多い組織も中々無いだろう。


「時期に分かるよ。きっとね」

「そうだな。ガイノス帝国軍が総出で調べているんだから」


 そうだと良いのだが。

 まあ、ここで考えても仕方のない事でもあるし今は自由に過ごす事にするか。


 改めて視線を前に向けなおすのだが、噴水を挟んで向こう側の出店にレクターと奈美が食いついている。

 あの二人が奇妙な物を購入する前に止める必要があるだろうと思い歩き出すが、その前にエアロードが別の出店に興味を抱き始めてしまった為、そちらの阻止を優先する必要が出てきてしまった。


「おい、さっき反省したんじゃないのか?ここで食べたら夕食が食べられなくなるぞ」

「わ、分かっている!分かっているぞ!私は……」


 心の中で物凄い葛藤が起きており、俺はその葛藤に負ける前にレクター達を止める事にした。


 結論から言えば二人を止めて俺達はこの場所を素早く後にした。

 そのまま帰路の道をついて行き、結局辿り着いたのはこの街の繁華街へと辿り着いた。


 華やかな帝都の繁華街とは違い、どこか華やかさが欠ける印象を受けるのはこの街が基本的に漁業で成り立っているのが原因なのだろう。


「なんか……少し寂しいイメージかな?お兄ちゃん。ここってホントに繁華街?」


 奈美の疑問も抱きやすい程人が少ない。


「でも、繁華街っていえばこんなじゃないのか?まあ繁華街って俺は基本行かないけどさ。ジュリ、こんなもんじゃないのか?」

「う~ん。でも、帝都の繁華街はまだ華やかな気がするし、街によっては繁華街はもっと人がいるんじゃない?ほら、娯楽都市は多かったし」


 そう言われそうだったが、あの時は楽しむ前に戦いに巻き込まれしな………。

 そういえばあの時の戦いは奈美達にはまだ話していないのでいずれは話す必要があるのかもしれない。


「でも、あそこはそもそも娯楽都市だからだろ?百貨店とかの前を何度か通ったけど、あそこは昼でも夜でも人が多かったぞ」


 あそこは特別なような気がするし、あそこを比較対象にするのは少し間違っている気がしてならない。

 それに、それを比較対象に入れてもやはり繁華街なんてこんなもののような気がする。


「それってさ。夜の店が無いからじゃない?」


 レクターの一言に俺は周囲を見回すが、そう言われれば輝かしいネオンやバーというような店がまるで存在しない。

 帝都などの繁華街と言えば昼は百貨店などのお店、夜はカジノやバーと言った側面を持ち、昼夜問わず人が集まるイメージ。


「確かに、そっか……何か足りないと思ったんだけど、本来ならこの時間帯は昼から夜に向けてだからもっと人が多いイメージだったけど、この街の人達は港や商店街の方に行くのかもね」

「百貨店みたいなお店をこの街の人達は求めてないって事か………それもそうだよな。港に行けば新鮮な魚類が手に入るし、夜の店もきっと路地裏とかに控えているんだろうな」


 下手をすれば街の法律で規制されている可能性すらある、繁華街と歓楽街を一緒にするのもどうかと思うが、この皇光歴の世界では繁華街と歓楽街は常に一緒になっている。

 それがこの街では分かれているのかもしれない。


 実際裏路地に顔を覗き込むと小さな看板ではあるがバーのマークが見える。


「ネオンが無いのか………、それにどことなく寂しいイメージがある。高い建物も無いし……これならさっきの噴水広場の方が豪華かもしれないな」


 このオーフェンスは海上に作られたというだけあって少々他の地方とは違い観光客の出入りが激しいのかもしれない。

 観光客の前でバーとかの夜の店を前面に出すのはイメージが悪いし、高い建物は街の景観を悪くする。

 そういう街独特の側面がこの街では夜は静かに、昼は港などを中心に人が呼び込める場所と呼び込めない場所が著しくなっている。


「そう考えると少しだけ不憫な気がするな」


 そう言いながら外から店の中を見て回っても、これと言って買いたい物が出てくるわけでも無い。

 しかし、レクターが武器屋の前で一回一回止まるのでその都度時間が掛かって仕方がない。


「そうだ!俺魔導機の店に行きたい。ちょっと相談したいことがあってさ………ダメ?」

「いいけど?そういえばお前先ほどの大学での戦いの時、妙な魔導機を使っていなかったか?」

「使ってないけど?」


 なんだろう?

 満面の笑みで返すから多分嘘を吐いていないと思うけど、何か引っ掛かるんだよなぁ……。


 全員で魔導機のチェーン店の中へと入っていき、レクターは直ぐに店員さんに話し込んでいく。

 ここで俺が話を立ち聞きするのは簡単だし、そうすればレクターが嘘をついているかも暴けるかもしれないが、ここでそれをするのはなんかマナー違反な気がしてならない。


 仕方がないので俺は奈美やジュリと一緒に店の中を見て回る。

 すると奈美が携帯型の魔導機に興味を抱き始めたようで、触っては弄り回している。


「魔導機はこの魔石で出来た部品を組み込むことで完成するの。魔石の種類によって及ぼす効果が変わったりするけど、一般の人は通信手段何かにしか使わないからこだわらないんだ」

「じゃあ………この緑色の魔石の板は?少し曲がっているけど」


 奈美が取り出したのは籠手に装着するタイプの魔石だろう。


「緑は風を現していて、形は籠手なんかの魔導機に組み込む為に曲がっているんだよ。それ以外にも携帯型はこの小さな四角い板。銃はこの長細いタイプとか、色々あるんだけど………奈美ちゃんが使うならこの携帯タイプの魔導機と専用魔石かな。奈美ちゃんはなにか使いたい機能はある?」

「というか女学院生に魔導機って必要か?あそこって別に武術や魔導機の授業があるわけじゃないだろ?」

「だって……!お母さんでも最近買ったのに!私買ってないもん」

「お前……向こうのスマフォだってあまり使いこなせていないだろ?下手をすると通話やメール……カメラぐらいか?」

「あ、侮らないでよ!私だって………私だって…………!うん!」

「言い返す言葉ぐらい選んでから発言したらどうなんだ?まあ、迷子になった時に通話する手段があると楽だが………」


 奈美の場合はその魔導機を忘れてしまいそうになりそうで嫌だけどな。

 まあ、購入するのは俺としては別に構わない。


「好きなデザインを持ってこい。買ってやるよ。ジュリと一緒に選んできたらどうだ?こう見えても魔導機の扱いやなら同学年でジュリの右に出る人間はいないぞ」

「ほんと!?ジュリお姉ちゃん!一緒に選んで!」

「いいよ。じゃあ、向こうの魔導機のデザインから見ていこうか」


 二人で離れた場所にある携帯型の魔導機を選び始める。

 向こうで言う所のガラケーのようなタイプやスマフォのようなタイプまで色々なタイプを手に取って選び始める。

 俺はそんな二人を後ろから眺める。

 外では少しづつではあるが雨雲のような雲が空を覆おうとしているようにも見えた。

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