魔王と側近
黒野が部屋から出ていった途端、中に居る怪物達が騒ぎ始めた。
「アノオカタガキュウセイシュカ」
「フツウノニンゲンニミエタナ」
「ホントウニダイジョウブナノカ」
「オレタチヨリゼンゼンヨワソウダッタナ」
怪物達が勝手な事を次々に口走っていると、
「静まれーーー!!」
と、レックスが大声で怒鳴った。
一瞬で怪物達は静まり返り、シーンとした空気が漂った。
「先程も言った通り、クロノ殿は召喚の影響で強化されておる。その点は、私が保証する。他に何か言いたい者は居ないか!」
そう言われると、怪物達は黙る他なかった。
「しかし魔王様、もし奴が人間に協力するような事があれば、我ら魔族の最大の脅威となります。その点は、どのようにお考えで?」
そう訪ねてきたのは、執事服を着たフクロウの魔物だった。
身に纏う空気から、相当の実力者だと感じ取れた。
「ペトラニウスよ、側近のお前まで私の言葉を疑うのか!」
レックスが怒り声をあげた。
その殺気に当てられて、下級の魔物は泡を吹いてバタバタと次々に倒れた。
ペトラニウスは、冷や汗をかきながらも何とか意識を保っていた。
「ふん、まあいい。お前の不安も最もだ。」
そう言いレックスは殺気を収めた。
「私の眼の能力を知っているなペトラニウスよ。」
「はい魔王様の邪眼、アニムスオルクスは眼を合わせた相手の心の中を読む事ができます。」
この能力で、レックスは黒野の心の中を覗いていた。
「クロノ殿の心の中は、とても深い闇に覆われていた。その大きさは、私に匹敵する程だ。」
「な、なんと!魔王様クラスの闇ですか?」
レックスが持つ闇は、歴代の魔王の中でも最高位の物であった。
そのレックスと同等の闇を持つ事をペトラニウスは、信じられなかった。
(あり得ません!たかが人間が魔王様と同等の闇を持つなど、あってはなりません!)
もし、それが本当ならば魔王自身が危ないとペトラニウスは考えた。
「しかし、クロノ殿はまだ闇の力に慣れていない。暫くは力の使い方を学んでもらわないとな。」
ペトラニウスの考えも知らず、レックスはそう語った。
「魔王様まだ彼が、救世主となると決まった訳ではありません。もう少し慎重にお考えしては?」
ペトラニウスははっきり言って、黒野の事を良くおもっていなかった。
人間である黒野が救世主など、何の冗談だと最初はおもった。
その上魔王であるレックス様と同等の闇を持つなど、許せなかった。
「心配はいらぬ。クロノ殿は必ず私達に協力する、必ずな。」
レックスは自身と似た闇を持つ黒野に親近感をもったようだ。
しかし、側近のペトラニウスの心に疑念を残す結果となってしまった。




