表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
棒きれと渡り鳥  作者: 水翔
棒きれと渡り鳥
2/10

「そうですか…。でも、あなたはひどくいたんでいるようです。

私などが乗っていては苦しくありませんか」

渡り鳥が心配そうに尋ねると、棒きれは、

「なあに、これくらい何でもありませんよ。

何しろ、以前は森一番の大木だったんですから」

と、誇らしげに答え身上話を始めました。

自慢する通り棒きれは、昔森一番の大木だったのです。

その堂々とした姿は他の木々のあこがれで、そのまわり

にはいつも動物達が集まってきたものでした。

それはとても落ち着いた楽しい日々でした。


ところがある日、人間達が彼を切り倒し町へ持って行くと、船のマストにしたのです。

最初、彼はひどく悲しみましたが、そのうちに、この暮しも悪くないように思いました。

森の動物達の代りに海鳥達が、彼のまわりに集って陽気なおしゃベリを聞かせてくれますし、なんといっても、自由にいろいろな所へ行けるのですから。

彼は七つの海を渡っ今まで見たことのない物をたくさん見ました。


けれど、なんと不幸なのでしょう。 突然おそってきた嵐のために彼の船は沈んでしまったのです。

マストであった彼はものすごい風のために折られ、海に落ちてしまいました。

幸い彼は沈みはしませんでしたが、その代りに一人ぼっちで広い海にとり残されてしまったのでした。

「ああ、もう一度故郷を見たいなあ」

語り終えた後、棒きれは、ふいになつかしさがこみ上げて思わずつぶやきました。


「私が旅の途中でなければ、あなたをそこへ連れていってあげられるのですか」

渡り鳥が残念そうに言うと、棒きれは微笑んで、

「ありがとう。その気持だけで十分です」

「けれど、私はあなたに命を助けられたのです。何か恩返しをしなければ」

「いいんです。それよりせっかく助けたのですから、無事に目的地へ着いてもらわなければ、さあ、そろそろ行かないと仲間を見失いますよ」

見ると、もはや群れは空のかなたに、黒い点となっていました。

渡り鳥は、しばらくためらっていましたが、

やがて大きく羽ばたいて飛び立ちました。

そして、なごり惜しげに一度三度棒されの上を飛び回ると、

仲間のあとを追って行きました。

そうして、棒きれはまた一人ぼちになりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ