一
大木だった棒きれと渡り鳥のふれあいの物語です
静かにうねる波間に、一本の棒きれが浮かんでいました。
もう、長い間浮かんでいたらしく、芯まで海水がしみ込んで、ぼろぼろになっていました。
(ああ、このまま朽ち果てるのか)
棒きれは、空を見ながら悲しく考えました。
空は青く澄んで、渡り鳥たちが群れをなして飛んで行きます。
それは、いかにもかろやかな感じで、棒きれはとてもうらやましく思いました。
ところが、急にその中の一羽が群れを離れて降りて来るではありませんか。
何事かと見ると、どうやらその鳥は、ひどく疲れていてもう飛ぶことができないようでした。
落ちまいと一生懸命に羽をはばたかせているのですが、それは弱々しいものでした。
「早く私の上にお乗りなさい」
そのままでは海に落ちてしまうと思った棒きれは、いそいで声をかけました。
すると、渡り鳥は気付いたのか棒きれの方へやってきました。
そして、その上に乗ると、疲れたように羽をたたみました
「とてもお疲れのようですね」
「ええ、これは私の初めての旅なのです。
それでなれない事が多くて、すっかりまいってしまったのです」
「それはたいへんでしたね。しばらく休んでいくといいですよ」
「ありがとう。棒きれさん」
渡り鳥は安心したように、ほっとため息をつきました。
「いいえ、お礼には及びません。
私は長い間一人ぼっちだったので、話し相手ができて喜んでいるのです」




