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アルコール依存症から脱出する方法  作者: いしかわ もずく
7/10

アルコール依存症者を助けてくれる人

便利屋を使って伊奈町にある埼玉県立精神医療センターに向かった事がのちに断酒に繋がります。


連続飲酒で自宅に閉じこもり、飲んでは吐く。この繰り返しの日々が続いていました。今が朝なのか?夕方なのかもわからない。歯も磨かない、顔も洗わない。風呂にも入りません。


でもです。確固たるアルコール依存症者はアルコールだけは買いに出かけるのです。風体がどう見られたってかまいはしません。他者の目なんてどうでもいいのです。酒の入った瓶が空になる前に買い求めなければならないのです。


 自宅からわずか200〜300メートルしか離れていないコンビニエンスストアに行ってきました。購入したのはポケットサイズのブラックニッカ2〜3本と発泡酒(ビールもどき)も2〜3本だったと思います。


 コンビニまで行く事は出来たのですが、帰り道で脚が攣ってしまい、前に進めません。アルコール以外、何も食べていなかったので栄養失調になっていたのです。


 この時、現場にいた見知らぬ人が救急車を呼んでしまいました。向かった先は病院ではなく自宅前で降ろされました。タクシー替わりそのものですね。(反省、って言っても私が呼んだのではありませんが・・・)


 自宅の郵便受けに1枚の小さい紙切れが入っていました。似顔絵付きで『引越しのさかい』電話番号も印刷されていました。私はこの紙切れをなぜか保管していたのです。何かの時に役立つかもしれないという思いが心の奥底にあったのだと思います。


 飲んでは吐く、吐いては飲むを繰り返していると喉に激痛が走るようになりました。胃液が喉を切り裂き出血し始めたのです。


 ー 飲酒をとめないと栄養失調でノタレ死ぬな ー


 飲酒をとめて2〜3日もすると食欲が湧いてくる事はたび重なる入院経験で知っていました。


 意を決して『埼玉県立精神医療センター』に電話をし、外来予約をおこないました。担当医の外来診察日は木曜日です。この時、私の身体は自力では電車に乗る事は出来ませんでしたし、自宅の最寄り駅まで到達できる体力もありませんでした。もちろん自家用車を自分で運転する事はできません。アルコールが切れていないのですから飲酒運転もしくは酒気帯び運転になります。


 タクシーを迎車して伊奈町まで行くには運賃がかかり過ぎるし、運転手にアルコール依存症者だとバレて金銭を割増されるかもしれないと思いました。


 ここまでのあらすじでお分かりになるでしょう。


 私は『便利屋さんのさかい』さんに電話をしました。


 さかいさんは見た目は70歳代だと思われます。現役を引退して、自身の器用さと人に対する思いやりから便利屋さんを一人で始めたそうです。


 私はさかいさんに事情を嘘なく話しました。彼は快く応じてくださり木曜日の7:00過ぎに私の自宅前まで来てくださいました。


 道中は一時間半くらいだったと思います。世間ばなしや、アルコール専門病院の内情などを話したと思います。


あと10分程度で埼玉県立精神医療センターに到着するタイミングでさかいさんは私に対する話を始めたのです。


「あなたは、酒を絶って完全復帰できる人だと思います。私はそう信じています。3ヶ月の入院生活が終わって自宅に帰る時にもう一度、私に電話をしてきてください、私は酒を絶ったあなたを見てみたい」


 そう仰られました。飲んだくれの私の身から何を見付け出したのでしょうか。


 退院時に私はさかいさんに電話連絡をしていません。ただし別件でその後、お会いすることになります。


 「そうでしょう、あなたは酒で人生を終わらせる人には思えなかった」だそうです。


 アルコール依存症者は孤立していきます。自分自身ではどうにもならない極限状態まで落ちていきます。そんなあなたを助けてくれる人に偶然出会えますように・・・



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