3話
《 こ、こんばんは!! 》
『!?』
驚いて周りを見渡すも視界に入るのは鳥居と一面の草むら、自分の愛車だけだった。
心なしか、丸いヘッドライトが動いた気がする。
《 あ、あの、驚かないで、ください... 》
ヘッドライトがついた。
『うぉ!?え、ひょっとかしてお前が...?』
普段落ち着いている僕でもさすがに驚いた。
《 そう、なんです..。あの、わたしはこの神社に住んでる精霊、なんですけど、
イツさんが...その、このお馬さんが死んじゃって悲しそうにしてたから.... 》
どうやらこの妖精さんは、僕のバイクを直してくれて、宿ったらしい。
ってなんで僕の名前知ってるんだろうか。後で聞こう。
『へぇ...成程..ってすごいよ!相棒が喋るなんて思ってもみなかった!最高だよ...!』
自分の相棒と、ちょっと違うとはいえ会話ができるなんて最高じゃないか。
《 えへへ...良かったです...。 》
相棒もうれしいらしい。ヘッドライトの光がふわふわと動く。
『そういえば僕の名前』
《 あ、あの!お願いがあるんです、けど...名前も付けて欲しいかなって.. 》
思い出したかのように名前を付けて欲しい!と言われた。
僕の名前はなんで...。
《 名前を付けて貰えれば、イツさんと、絆が結べるので...いろいろできるんです。
言霊が使えたり、強くなったり...あとあと!このお馬さんもずっと走れるんです! 》
『うーん...
言霊?強くなる?
...強くなる、のは別にどっちでもいいんだけどずっと走れるってつまり、燃料いらないってこと?』
《 そうなんです!イツさんから、霊力を少しもらえるだけでずっと走れますよ! 》
走れれば名前を付けて貰えると思ったのだろうか、かなりグイグイ来る。
というか、物凄く魅力的な提案過ぎてすぐにでも名前を付けたい。
だけど、その前にいくつか聞いておかないと...
『とりあえず質問させて?まず、どうして僕の名前を知ってるの?』
《 それは... 》
長い話だった。だが、忘れることはできなかった。
彼らはいつから存在していたかは分からないが、気が付いたら意思が生まれていた。
それからずっと神社に住んでいたが、毎日のように訪ねてきてくれるのは以外には僕、大宮一だけだった。
精霊は見える人、見えない人がおり生まれたときに分かれるそうだ。
無論、見える人は万に一つの確立らしいが。神主のおじさんは見えなかったようだ。
ここには精霊は全部で7体いると言う。
予定ではその7体が時の経過によって進化し神主に姿を現し、神社に結界を張り、神主を守護者として
この神社で穏やかに時を過ごすつもりだったらしい。
だが、神主が死んでしまい、荒れ果ててしまうかと思われた神社だが、僕が通って掃除をすることで最低限は維持できていた。
しかし、その僕すら死んでしまう処だった為、神社を護るために慌てて声をかけ絆を繋ごうとしたらしい。
本当は弱い結界だけでも張ってから僕を招待する予定だったそうで、結界さえ張ってあれば神社の劣化はかなり抑えられると。
どんな結界を張るにも絆を結ぶにも最初は少し多い霊力が必要で、今結界を張ってしまうと彼らはしばらく絆が結べないらしい。
だから、このタイミングで声をかけたそうだ。彼ら全員が持つ霊力をかなり使い、僕を瀕死から救い、愛車を復活させてくれた。
絆を結べば、意思の力...霊力を少し渡すだけで精霊は生きていけるし結界も張れるらしい。
人間は意思の力が強いが、その力を完全に引き出す絆を結ぶには単純に精霊が見えるだけでは駄目で会話ができなくてはいけない。
その条件に当てはまる人間は万に一つの中の、本当に極少数しかいない偶然生まれる人だそうだ。
どうやら僕はその一人だったらしい。
これで僕が断ってしまえば、神社は廃れ、精霊たちは住むことができなくなってしまうだろう。
だが、断る気なんて毛頭なかった。何せ助けてくれたんだから。愛車も戻してくれた。
今までとちょっと変わった日常になるくらいどうってことはないじゃないか。
『わかった。君達と絆を結ぼう』
《 ...え? 》
『断るなんてことはしないさ。君たちが僕を救ってくれた。そんな君たちが困っているなら僕は助けないわけにはいかない』
《 あ、ありがとう、ございます! 》
《《 ありがとー!(~!) 》》
今まで隠れていたのか、ほかの精霊達も出てきて僕の周りを飛び回る。
僕も君たちに感謝しているんだ。ありがとう。
そう心の中で呟き、行動を始めた。
『じゃあ、とりあえず神社まで行こうか』
こんなところで大事な名づけなんてできない。
折角なら神社へいこう。
《《 はーい! 》》
『そういえば...バイクはどうやって持っていこう...』
《 イツさんが乗っていなくても、走れるので大丈夫です 》
とのことだ。
幸いにも階段は短くスロープもついている。
そこさえ登れば後は緩やかな坂だから大丈夫かな。
『さて...と。始めようか。』




