1話
気が向いたら書きます。よろしくお願いします。
※この物語は現実の人物、国、事件等あらゆるものすべてに関係しておりません。
*プロローグ
――その一言で、世界が変わる。
発する音に力を宿し、紡ぐ言葉が意志を顕す。
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数年前、それは唐突に発見された。
特殊な発声法を用いて言葉を発すると、様々な事象を発生させられる...という事実である。
一言で簡単に説明してしまえば、”魔法”のような力だ。
この声は現在”EVoice”と呼称され、あらゆる機関で研究が進められており、
その発声法により紡ぎ出される声質は日常的に出す声と比較すると大きく異なることが発表された。
EVoiceを発生させられる人物はVoizerと呼ばれ、能力を発現させた者は
太平洋の中央部付近に建造された国際Voizer育成機関に保護される。
EVoiceの特徴は、一般的な会話などでは出すことのできない特殊な声質とある現象を伴うことだ。
音声合成ソフトなどによって似た音を出すことはできるが、それは何の効果も発揮しない。
実際に聞くと声を二重に重ねたような音だが、その深みや広がり方は一度聞けば違いが分かるだろう。
また、数キロメートル離れていてもEVoiveが届いたという実験結果も存在する。
EVoiveの特徴的な現象の一つとして、発光現象がある。
EVoiveが発動した時、その当人の周囲に淡く輝く謎の粒子が発生し、能力発動の間浮遊する。
その粒子は発したEVoiceに応じて形を変えVoizerの意志に従う。
ある程度分類された能力として、攻勢系統、守勢系統、鼓舞系統が存在する。
さらに細かく分類されているが、ここでは割愛する。
このEVoiceが初めて発見されたのは―――――
バサッと手に持っていた雑誌を置く。
「E...Voice...かぁー...。使えたら、面白そうだよねぇ。」
僕は掛け軸を見ながらぼけっと呟いた。
半年程前から、Voizerによる悪質な犯行が目立ち始め、
世間のVoizerへの当たりは強くなった。
それこそ、”Voizerを捕えろ!”なんてデモが起きるぐらいには。
僕はVoizer、夢があっていいと思うんだけどなぁ...。
外はこの地方にしては珍しく雪が降っている。
こんな時は、やっぱり炬燵で熱いお茶を飲むに限るよね。
「ズズズ.........あぁ、おいしい。」
1人で一軒家に住み、和室で炬燵に入り、掛け軸を眺めながらお茶を飲む大学生なんて
僕くらいしかきっといないだろう。
おまけに半纏なんか、羽織ってる。
偶々祖父の持っていた、住まない家に一人でのんびり住んでいるだけなんだけどね。
両親は僕が中学生になった頃にどこかへ行ってしまった。
「ぐ....うー.....」
体を伸ばしながら部屋をぐるっと見渡すと、いつもの光景。
自分の書いた習字が幾つか貼り付けてあり、自分で生けた花が掛け軸の傍に置いてある。
あ、茶香炉の火種が無くなった。蝋が無くなったのかな...取り換えよう。
「...あれ?蝋燭切れちゃったのか...しまったな...」
これじゃのんびりできない。
「買いに行くか。」
今は夜の9時半。
大体の店が閉まってるけど、いつも行く雑貨店はまだギリギリやっている。
「鍵は鍵は....っと」
厚手のジャケットを羽織り、家の鍵とヘルメットをひっつかみガレージへ行く。
ガレージのシャッターが空くまでに、ヘルメットを被ってバンダナを付け、準備万端。
ガレージが空くとそこには相棒、半年前に購入したばかりのバイクがポツンとおいてある。
「ごめんな、最近あんま乗ってやれなくて」
タンクをポン、と軽く叩き言葉をかけてやる。
全ての物には魂があり、感情がある。それが僕の考えであり、穏やかに生きるための知恵だ。
優しい人でいたいからね。
例え、自分が割を食ったとしても。
キーを入れ、冷えているのにボタン一個で掛かるエンジンにちょっと微笑みながら
家を出発する。
ヘルメットにゴーグル、バンダナを付け厚手のジャケットを羽織る姿は先程までの恰好からは想像できない。
カコンッと小気味良い音を立ててギアがローに入る。
積もってないけど雪も降ってるし、安全運転でいこう。
―――――フォォォオオオオン...
―――僕の記憶は、そこで途絶えた。
気が乗ればいいんだけどなぁ...




