表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/16

タイトル未定2026/05/20 06:53

 大学の教室で、流花と渚はお互い携帯でバイト募集のサイトを眺めていた。

「休みが、自由に選べる所が良いよね」

 携帯をスクロールしながら言う渚に、流花の隣に座って黙ったまま携帯を眺めていた田中が言った。

「ここは、どう?」

 田中は自分の携帯を、流花と渚の目の前に差し出した。

 ファミレスの洗い場の仕事で、時間や曜日は自由に決めることができ、友達同士の募集もオッケーだった。

 渚が、喜びの声を上げた。

「良いじゃん!流花ちゃんどう?」

「いい条件が、揃っているね。私も、ここで良いよ」

「じゃあ、ここに決めるよ」

 田中が代表者となって、ファミレスにメールを送った。

 必要事項を載せたメールを田中が送った後、それまでトイレに行って居なかった佐野が戻って来た。

「バイト決まったか?」

 佐野は、渚の隣に座りながら言った。

 メールを送信した、田中が答えた。

「今店に、メールを送った」

「そうか!どんなバイト」

「ファミレスの洗い場」

「田中に、ぴったりな仕事じゃん」

「佐野は、工事現場の仕事だったよな」

「おう。工事と言っても、病院を建てる工事現場の仕事だ。仕事をしながら建築現場が見れるから、一石二鳥だよ」

「佐野らしいな」

 佐野と田中の会話に、流花と渚は笑った。


 午前の診療時間が終え、患者たちも居なくなり、診療所は静まり返っていた。

 マスターの診察室で仕事をする園田亜美そのだあみと、院長の診察室で仕事をする久保由美くぼゆみは診察室の奥にある窓際で、午前中に使った器具の消毒をしていた。

 小声で、亜美が由美に言った。

「先生、いつもより機嫌が良いの」

「そうなの?よく、わかるね」

「すぐ、顔に出るからわかるわよ」

「単純!」

 亜美と由美は、くすくす笑った。

 笑い終わった後、由美が言った。

「何か、良いことがあったのかなぁ」

「彼女と、うまくいっているんじゃないの?」

「そうかも……って、やだぁ。ねぇ、先生に彼女って、いるかなぁ。やっぱ、いるよね」

「いるんじゃないの?逆に、いない方がおかしいよ。先生の指輪。あれ、彼女とお揃いのペアリングだったりして」

「だよね」

 由美は、少し落ち込みながら作業を続けた。

 不意に由美は顔を上げ、好奇心旺盛な声を上げた。

「ねぇ、先生の彼女ってどんな人かなぁ」

「ん〜紫野師長と仲が良いから、師長みたいな、ハッキリ物申す姉御肌タイプの年上女性の彼女と見た!」

 亜美が想像をした、マスターの彼女を聞いた由美は、少し考えてから言った。

「私は、甘えん坊でわがままで、目が離せない年下彼女!」

「それ、由美ちゃんまんまじゃん」

「私、わがままじゃないよ。ひど〜い!」

 亜美が笑うと、つられて由美も笑った。

 その時、当のマスターが診察室に入ってきて机の椅子に腰掛け、机の上のパソコンに向き合っていた。

 その姿を見た由美が、マスターに近づいた。

「先生……」

 由美の声に、マスターは顔を上げた。

「先生の指輪、素敵ですね」

 仕事上は別として、緑以外の看護師に、話しかけられたマスターは戸惑っていた。

 そんなマスターをよそに、由美は聞いてきた。

「もしかして、彼女とお揃いのペアリングですか?」

 マスターは何も言わず、パソコンを立ち上げた。

 その行為に、由美は亜美の方を見て亜美と「やっぱりね」と言いたげに、視線を交わした。

「先生の彼女って、どんな方ですか?」

「もう、昼休憩ですよ。休憩を取ってください」

 マスターの言葉に、亜美と由美は返事をして、マスターの診察室から出ていった。

 マスターの診察室を出て行った亜美は、興奮するように由美に言った。

「由美ちゃん、露骨ぅ~」

「だって、知りたいじゃん!先生の彼女。どんな彼女かなぁ」

「やっぱ、しっかり者の年上彼女でしょ」

「え〜っ、甘えん坊の年下彼女だよ。初めて、先生に話かけちゃった!」

 亜美と由美は静かに、女子トークをしながら、待合室の前を通り過ぎて休憩室に向かった。

 待合室では、緑がロールカーテンを下げて亜美と由美の会話を盗み聞きをして、小さく笑っていた。


 その頃大学のキャンパスで、お昼を過ごしていた流花と渚がテーブル席に腰掛けていた。

 テーブルの上には、まだ手を付けていないお弁当が乗っていた。

 流花の言葉に、渚は驚きの声を上げた。

「マスターとやっと、デートするんだ!良かったね」

「デートだなんて……」

「何でもいいよ。ねぇ、デートの時、私が選んだ服着るんでしょ」

「ん……そのつもり……」

 煮え切らない流花に、渚は念を押しように言った。

「本当に、着ていくんだよ!」

「うん。そのつもりでいるよ」

「当日は、何処に行くの?」

「それが、まだ決まらなくて」

「もし、よかったら、この店に行ってほしいんだけど」

 言いながら、渚は携帯を流花に見せた。

「凄く気になった店なんだけど、まだ行ったことがなくて。行く場所が決まっていないならどうかなって、思って。もし行ったら、どんなお店だったか教えて。もちろん、無理して行かなくても良いからね」

 流花は携帯の画面に、釘付けになっていた。

「待たせて、悪かった!」

 佐野の声に、渚は顔を上げた。

「もう、遅いよ」

 佐野は渚の隣に座り、田中は携帯を渚に返していた、流花の隣に座った。

「佐野、売店に行くならもっと早く行けよ。凄い混んでて、もみくちゃにされたよ」

「つきあわされた田中君、災難だったね」

 渚が笑うと、佐野が涼しい顔で言った。

「まぁ、まぁ。無事にたどり着けたんだし。良いじゃないですか。食べようぜ」

 楽しく言い合う渚達を、流花は静かに見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ