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転生したスワンプマンは過去の栄光に思いを馳せるか?  作者: 紫 和春


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第28話 突撃

 翌日。二人はいつものように学校へと登校する。

 教室に到着すると、長屋はすぐに1年の教室へと赴いた。


「高崎さん? 今日はまだ見てないですね」

「そうですか……」


 本日も欠席しているようだ。理由のほとんどは長屋と黒須の関係性だろう。あのようなことを言ってしまった手前、顔を合わせづらいのは心情として理解できる。


(だからって、その心情の捨てる先を相手に依存するなって話なんだけど)


 心の中で愚痴をこぼす長屋。とにかく今は動き続けるほかない。

 その日の放課後に、長屋と黒須は自分たちの担任に接触する。


「え? 高崎さんのお(うち)が知りたい?」

「はい。今日学校に来てないらしいんです」


 田口先生は文芸部の顧問。その人脈を最大限に利用する。


「なるほど、確かに心配ね。でも一個人の生徒の個人情報は簡単に渡せないわ」

「先生は心配になりませんか? もしかしたら家に一人きりの高崎さんが、誰にも知られることなく息を引き取っていた、とか?」

「ちょっと、長屋さん……。そういう不吉なことを言うのは止めてください」

「でも先生だって考えるでしょう? 今は平穏そのものだけど、そんな日々もいつか打ち砕かれるんだって」

「ちょ、ちょっと……」

「高崎さんだって同じだと思います。自分は大丈夫って思ってるけど、その大丈夫が命取りになる、と……」

「……長屋さん」


 田口先生は額に手を当てて、困惑した表情をする。そして少し考えた後、一つ溜息を吐いた。


「……分かりました。ですが、悪用したり他人に話したりしないように。いいですね?」

「ありがとうございます、田口先生」


 こうして長屋と黒須は、高崎の住所を入手し、そのまま下校時に自宅へと突撃するのだった。

 しかしこの自宅がなかなか厄介で、学校の最寄り駅から電車に乗って数駅した所から、さらに数十分歩いたところに住んでいることが分かった。

 だがここで止まるような長屋ではなかった。駄賃はあとで馬渕に請求するとして、ありったけの現金を使って移動手段を確保する。

 こうして電車、タクシーに重課金をしたことで、そこまで疲れることなく高崎の家へと到着した。


「ここが高崎の家……」


 ごく一般的な平屋の家である。小さいながらも庭があり、一見すれば某日曜夕方アニメの家のように見えるだろう。


「よし、行くか」

「うん」


 長屋と黒須はお互いを見て、インターホンを鳴らす。しばらくすると、玄関の扉が開いた。


「はーい」


 玄関の扉から、薄桃色のパジャマを着た高崎マリが出てくる。


「こんにちはー」

「あー新聞間に合ってますのでー……、ってヨウ君!?」


 眠気を含んだだらしなかった顔が、一転して驚きの表情に満ちる。


「ちょ、ちょっと待って……!? なんでうちにいるの!?」

「田口先生から住所を聞き出して、来ちゃいました」


 先日の誘惑なんぞなかったような態度で高崎に接する長屋。一方の黒須は、わだかまりは多少解消しているものの、やはり警戒感が抜けきっていないようだ。


「ぴぃ……! ちょっと待っててくださーい!」


 そういって高崎は玄関を勢いよく閉めて、家の中をドタバタする。

 数分後。再び扉が開くと、そこには部屋着に着替えた高崎がいた。


「そのー……、立ち話もなんだし、うち入る……?」

「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな。失礼しまーす」


 高崎の招き入れで、長屋と黒須は彼女の家に入る。そしてリビングへと案内された。


「お茶とかの用意はないんだけど……」

「お気遣いなくー」


 長屋はなるべくリラックスした様子でリビングのソファに座る。高崎に不信感を与えないようにする配慮だ。その一方で黒須は未だに嫌いな人間にあった犬のような雰囲気を醸し出している。


「それで……、どうしてうちに?」


 高崎が座布団の上に座って、長屋に話を振る。


「昨日今日と学校休んでたけど、その理由がなんなのかなぁって。だいたい予想はついているけど」

「そう……だよね。この間あんな悪女の誘惑みたいなことして、今さら学校で顔合わせるなんてできないなぁ、って思っちゃってさ」

「うん。そのことについては、もう何も言わない。茜だって許してる」

「えっ……?」


 高崎には意外だったようで、黒須のことを見る。その黒須は、長屋にギュッと接近して身を隠そうとしていたが、半分以上見えていた。


「ほら、茜。高崎さんに謝りたいんだろ?」

「……うん」


 長屋に諭されて、黒須はちゃんとソファに座りなおす。


「その……、高崎さん。この間は怒鳴ったりしてごめんなさい。私も必死だったから、少し感情が暴走しちゃって……」

「……いいの?」


 黒須の謝罪に、高崎は一筋の涙を流す。


「うち、ひどい女だよ? 小中でも変な空気にしちゃって、その場の雰囲気を壊して、それで独りぼっちになるような……、人間として未熟なんだよ?」

「それは私も同じだから」

「え……?」

「私も欠点とか、見たくない見せたくない部分とかあるから……。でも陽介君はそれを理解してくれた。私が私でいてもいい理由になってくれた。だから、高崎さんも不完全なままでいいと思う」


 黒須なりの、高崎のフォローを入れる。それを聞き、脳で処理し、理解した高崎は、目から大粒の涙を流す。


「うち……、ヨウ君のそばにいてもいいの……?」

「そうだね。俺がその不完全な部分を補えるようになればいいから」

「ヨウ君……!」


 涙を流す高崎。

 長屋はソファから立ち上がって、そんな彼女のそばで跪いた。


「高崎さん……。いや、マリちゃん。俺の彼女になってくれませんか?」


 そういって長屋は高崎に手を差し伸べる。


「……はい!」


 高崎はその手を嬉しそうに取るのだった。

 こうして長屋は、二人目の彼女を作ったのである。

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