表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
最終章 西洋連合の軍事大国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/86

最終話 世界線

美空みく、起きて。しっかりして……!』


 不安と焦燥の交じったマルファの声が、微かに耳に届く。

 それがきっかけとなって、美空の意識が覚醒する。


「…………っ」


 ゆっくりと目を開き、ぼんやりとした視界を眺めながら脳を再起動させる。


 自分は一体、どうなったのだったか。

 自分は今どのような状況にあるのだろうか。


 やがて思考と視界がはっきりとしてきて、最後の記憶がふと蘇る。


 そうだ、思い出した。私はユナイタルステイツ軍の魔法能力者の少女たちに撃たれて、気を失ったのだ。

 引き金を引く瞬間の、親しみやすい口調とは裏腹な表情一つ変えないオリビアの冷酷さと。敵である美空の幸せを願ったシャーロットの残酷なまでの優しさが、鮮明に思い浮かぶ。


 だが、銃弾が貫通したはずの身体に痛みは感じない。

 誰かが治療をした、もしくは回復魔法をかけたのだろうか。


 首を動かして周囲を確認するが、霧に覆われているのかどこも真っ白でここがどこなのか分からない。ただ、少なくとも病院や施設の中ではなさそうだ。


「えっと、マルファさん。あのあと私はどうなったのですか?」


 身体を起こしつつ、腕時計の中のマルファに問う。

 美空の記憶の無い空白の時間に、何が起きたのか。

 コピーAIである彼女は中央処理系さえ破壊されなければ意識が飛ぶことはない。この間の出来事を全て記憶しているはずだ。


 しかし、マルファはひどく困惑した声音で言った。


『ごめん、私にもよく分からないんだよね……。一瞬だけデータリンクが途切れて、気付いたらここにいたんだよ』

「リンクが途切れた、ですか……」


 つまり、彼女もまた気を失っていたということ。

 これでは手がかりも何も無い。


 もしかして、ここが俗に言う天国というやつなのだろうか。


 いや待て。この景色、見覚えがある。


 美空が思い至ったと同時、背後から少女の声がした。


「残念だったな、漆原うるしばら美空。お前は信じるべき相手を間違えた」


 振り返った先。肩まで伸びた艶やかな銀髪をなびかせ、宝石のような真っ赤な瞳をこちらに向けた少女が不気味に微笑んでいる。見間違えるはずがない、彼女は魔法総神(そうしん)シーシャープだ。


『誰……? っていうか、あの白すぎる肌に、赤すぎる目。それにオーラ。とても人間とは思えないよ』


 神を名乗る謎の少女を前にして、恐怖を感じたらしいマルファ。

 そんな天才科学者のコピーAIに対し、シーシャープは感心したように言う。


「ほう、なかなか鋭いな。お前も連れて来たのはやはり正解だった」


「あの、用件があるなら早く教えてもらえます? あと簡潔に」


 彼女が美空の前に現れる時は決まって、何か告げることがある時だ。

 この神界しんかいとかいう謎の空間にいつまでも留まりたくはない。


 急かされたシーシャープは嘆息し、本題を口にする。要望通り、至極簡潔に。


「漆原美空、お前は死んだ」

「私が、死んだ……!?」

『っ! 嘘でしょ……?』


 あまりに呆気なく言い放たれたその言葉に、美空とマルファは強いショックを受ける。


 だがシーシャープは、それを気にする様子もなく話を続ける。


「安心しろ、本番はここからだ。漆原美空とマルファには、別の世界線で活躍してもらう。これを見ろ」


 悄然としたままの美空の前に、ホログラムのように球体が浮かび上がる。

 これは、地球か。


『私たちの住む星と、直径から自転公転の速度、地形まで全て同じですね……』


 冷静に分析したAIのマルファに、シーシャープはこくりと頷く。


「ああ当然だ。世界線が違うだけで、異世界というわけではないからな」

「世界線……」

「言い換えるなら、誰かが別の選択をした結果生まれた並行世界だ。この世界がお前たちの世界と大きく異なるのは、異形の怪物である魔獣が存在するという点だ。魔獣は我々の使い魔のようなものだが、お前には必要ないだろう。……漆原美空、そしてマルファ。お前たちにはこれから、この世界で魔法神まほうしんとそのサポート役として自由に動いてもらう。もしもその世界で死んでしまったら、それが本当の死だ。くれぐれも注意して行動しろ」


 シーシャープはずっと何を言っているのだろうか。

 理解が及ばないままの美空に、魔法を統べる神がゆっくりと手を伸ばす。


「これからお前は、魔法神クラウドだ。マルファにはそうだな、右席うせきストレージの名を与えよう。この世界のデータはストレージに渡しておく。極めて有益な情報だ。上手く活用し、幸せを掴み取れ。では、クラウドとストレージの新たな旅路の幸運を祈る」


 彼女の手が美空の肩に触れると同時、突如眩しい光に視界を覆われた。




 しばらくして目を開けると、そこは。


「ここが、別の世界線……」

『日本の首都、東京ってところみたいだよ』


 電波塔だろう赤いタワーを間近に望む、近代的な高層ビルの屋上だった。

私の物語は一旦ここまでとなりますが、いかがでしたでしょうか? もし楽しんで頂けたようでしたら、ブクマ登録や評価等してくれたら嬉しいです。そして、皆様がこれからも素敵な作品と出会えるよう願っています。最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました。by漆原美空

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=550432391&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ