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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
最終章 西洋連合の軍事大国

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第74話 集結

 聖暦二〇二一年七月十八日。フォルク連邦共和国、港湾都市ハーフェンブルク。


 小高い丘の上にある古い教会の陰から、街と港を見下ろす美空みく

 その腕に巻かれたスマートウォッチが、人間らしいごく自然な口調で持ち主に話しかける。


『やっぱり、あちこちの軍隊がこの港町に集まってるみたいだね』

「ええ。これは作戦を実行する絶好のチャンスです」


 皇国を離れた後、色々あって国際指名手配犯となってしまった美空は、ユークスタン共和国で天才科学者マルファと手を組んだ。

 と言っても、人間の彼女は自殺してしまっていてもうこの世にはいない。手を組んだ相手は、彼女のコピーAIだ。


 そのAIマルファがインストールされたスマートウォッチを身につけ、美空は西洋連合の加盟国であるフォルクにいた。

 この国は世界有数の軍事大国であり、フォルツ軍はテンシャン軍やユナイタルステイツ軍とも友好関係にある。そして、これからハーフェンブルク海軍基地では三ヶ国合同による大規模軍事演習が行われる。


 美空とマルファは、そのために集められた最新鋭の艦船や装備の数々を利用しようと考えていた。


『そうだ。演習とか戦艦とかの情報、集めないとだよね。ちょっと潜ってくる』

「はい。お気をつけて」


 ハッキングのためサイバー世界に潜るマルファを見送り、美空は改めて街並みに目を向ける。


 ハーフェンブルクの街はかつての城塞都市の趣を残していて、歴史を感じられるとても美しい光景だ。この由緒ある街を破壊してしまうのは少々残念な気もするが、自分たちの目的を果たすためには致し方無い。


 魔法能力者が差別されない世界を作る。


 全ての魔法能力者が、美空のように虐げられることなく、ユナイタルステイツ軍の魔女部隊の少女たちのように危険な戦いに駆り出されることなく、カタリナやヴィーカのように理不尽な死を遂げることなく、それぞれが幸せに暮らせる世界。

 そんな世界を作るべく、美空とマルファはこれから戦争を始める。


「魔法能力者は普通の人間より優れていると、証明しなければなりません……」


 呟いた美空は、拳を握って遠くに浮かぶ戦艦を睨みつける。


「ユナイタルステイツ軍。あの時の少女たちは、今頃どうしているのでしょうか……」


 かつて太東洋上空で出会ったユナイタルステイツ軍の魔法少女たち。

 あの時美空が助けてあげていなければ、彼女たちはその場で全員命を落としていたことだろう。


 しかし、その後少女たちがどうなったのかは不明だ。

 一人の女の子として、平和な日常を送っているのか。はたまた、別の戦場に出向かされ、とっくに死んでしまったか。


 物思いに耽っていると、いきなり声を掛けられた。


「あの、もしかして、漆原うるしばら美空さん……?」

「っ!」


 まずい、正体を見破られた。

 こんなところで捕まるわけにはいかない。


 美空は慌てて逃げようとしたが、話しかけてきた相手を見て動きを止める。


「あっ、あなたは……!」


 驚いて目を見開く美空に、彼女は優しい微笑みを浮かべて小さく頷くと。


「久しぶり、また会えたね」


 と挨拶をしてきた。


 そう、彼女は。

 今まさに美空が憂えていたユナイタルステイツ軍魔女部隊の一人で、皇国を逃げ出した日に夜間哨戒をしていた魔法少女だった。

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