第75話 提案
まさか彼女と、こんなところで再会することになろうとは。
「それで、今日はどうしてこちらに?」
美空が問いかけると、ステイツ軍の魔法少女は港を指差しながら答えた。
「大規模合同軍事演習。私たちも、あれに参加するの」
「そう、なんですか……」
彼女の言葉を聞いて、美空は一瞬視線を逸らしてしまう。
これから自分たちが行う作戦の中枢部に、守りたい存在がいる。
それは計画を実行する上で、大きく影響を与える問題になりかねない。
二人の間に気まずい沈黙が生まれる。
しばらくして、魔法少女が思いついたように両手を合わせて、ある提案を投げかけてきた。
「あの。もしよかったら、私たちの泊まっているホテルに来て。みんなあなたに直接お礼を言いたいと思っていたから」
「私が接触して、問題ないのですか?」
「大丈夫。今日は休息日だから監視や護衛はいないわ」
ユナイタルステイツ軍の魔女部隊との接触の機会。
計画には全く無かった思ってもみない展開ではあるが、これはまたとないチャンスかもしれない。
もしも彼女たちを味方に引き入れることが出来たなら、この計画はより世界にインパクトを与えるものになる。
「……分かりました。それでは、皆さんに会わせて頂けますか?」
「ええ、もちろん」
美空が頷いて応じると、少女はとても嬉しそうに可愛らしい笑みを浮かべた。
ホテルへの移動中。
丘を下る坂を歩きながら、少女が口を開く。
「私はシャーロット。魔女部隊では主に夜間哨戒任務を担当しているの」
そう言えば、まだ彼女の名前を聞いていなかったか。
「確か最後に会った時も、そうでしたよね?」
「あの時は、急に撃墜してと頼んできたから、とても驚いたわ」
「その節は大変失礼いたしました……」
あの時、美空にはユナイタルステイツ軍の基地に特攻して死ねという命令が下されていた。そのため、皇国から逃れるには死んだと見せかける必要があった。
そこでお願いをしたのが、太東洋上で出会ったシャーロットだった。
彼女に機体を撃墜させ、自分は転移魔法で脱出。
今考えると、敵に対して随分と突拍子も無いお願いをしたなと思う。
素直に聞き入れてくれたシャーロットには、本当に感謝しなければならない。
「ううん、謝らなきゃいけないのは、むしろ私。漆原さんは私たちを助けたせいで、国を追われて、指名手配までされてる。こちらこそ、謝っても謝りきれないわ」
「いえ、あれは私が勝手にやったことですから。シャーロットが責任を感じる必要はありませんよ。完全な自業自得です」
それに、国際指名手配をされたのは皇国から逃げたこととは全くの別件だ。
「着いた。ここが私たちの泊まっているホテルよ」
と、そんな話をしているうちに、目的地の前に到着。
「うわっ、すごくお洒落ですね……」
建物を見上げ、思わず呟いてしまった美空。
彼女たちが宿泊中のホテルは、中世の雰囲気を感じさせる歴史ある名門の高級宿だった。




